リュドヴィック殿下の人物像
クリスティナ誕生日の翌日です♪
「えっ!?ミレーネ様、シュルーダ様とお話できたの!?」
学園の食堂で、私は驚きの声をあげた。
昨日、馬車の待機場でみんなと別れたあと、リュドヴィック殿下とダミエレ様が3人のもとへ来たらしい。
私も、その場にいたかったような、いなくてよかったような、複雑な気持ちだ。
今世では、私はまだダミエレ様とは挨拶すら交わしていないため、念のため「シュルーダ様」と家名で言う。
「話したって言っても、ただ挨拶を交わしたくらいだよ.....」
ミレーネ様は恥ずかしいのか、頬を赤くして俯いてしまう。
『なんて可愛らしい姿なのかしら!この姿をダミエレ様にもお見せしたいわ!!』
心の中で、私は叫んでしまう。
ミレーネ様がダミエレ様に対して淡い恋心を抱いているのは一目瞭然。
なんとかしてミレーネ様の応援をしたいとは思うものの、ダミエレ様に近づくということは”リュドヴィック殿下”にも近づくことと同義。
勇気がない私は何もできないでいたが、向こうから声をかけてきてくれたことは幸運である。
「あれ?ということは、リュドヴィック殿下ともお話したの?」
「えっ?うん、でも殿下とも少しだけだよ」
「殿下は面白い方ぞいよ!」
スカーレット様の言葉を受けて、私は首を傾ける。
『はて?面白い?誰が?殿下が?あの殿下が!?』
私が知っている前世の”リュドヴィック・コフィア”という人物は、文武両道、冷静沈着、聡明叡智、さらに眉目秀麗で、何事にも真摯に向き合う方だったが、誰とでも一線を引いて接していたように思える。
一線を越えていたのは、高等部からの編入生であったサキュバーヌ・ベイカー男爵令嬢だけだろう。。。
その殿下が面白い?
「面白くて気さくな方だったぞい!話しやすかったぞいよね!モアナ?ミレーネ様?」
同意を求められたモアナ様とミレーネ様は、
「まぁ、、殿下も、、人の子、、乙女」
「モアナ様!また”乙女”なんて言ったら失礼だよ!あのね、怖い方では全くなくて、とても話しやすそうな方だよ!スカーレット様とは、とても話が弾んでいたようだし......」
モアナ様の発言を、なぜか必死でフォローするミレーネ様。
たしかに殿下も王妃様から生まれた人の子ではあるが・・・・。
気さく?話しやすい?乙女?
新たな単語が増えてしまい、私の頭は大混乱だ。
一体、殿下の身に何が起こっているのだろうか。前世の殿下からは想像がつかない。
思い返せば最近の殿下は、この食堂で私たちが座るテーブルの横を行ったり来たりしている。『お水を取りに戻ろうか迷っているのかしら?』なんて考えていたが、あの殿下が迷う?迷わずに私を断罪した、あの殿下が?
私は、断罪された前世を思い出してしまい身震いしてしまう。
「ダミエレ様も本が好きだから、ミレーネ様と仲良くなれると思うぞい!」
「うん、、ダミエレ様、、いっぱい、、本、、持ってる」
スカーレット様とモアナ様の声のおかげで、私は”今”に引き戻される。
「わたしの知らない本、いつか教えてもらえるといいな」
そう小さな声で言ったミレーネ様が、本当に小動物のように可愛らしい。
『このような愛らしい顔をさせるなんて、ダミエレ様は罪な男ね!』
前世のダミエレ様も博識で、たくさんの本を所有していたようだ。「次代の宰相候補」と言われた所以でもある。
『私も、一歩、踏み出す時なのかしら・・・・』
殿下とは関わらないと決めて、今世を生きてきた。
私が前世とは違う道を歩いているように、殿下も何か違うのかもしれない。
けれど、その”一歩”が多くの”勇気”を必要とするのも、また事実で。
私は、ふと隣の列のテーブルに目を向けた。
そこには、見知った女子生徒が座っていた。
ーーーキャスリン・マケラ侯爵令嬢。
前世では、殿下の婚約者候補に最後まで残っていた令嬢だ。
私が殿下と婚約したあと、殿下に蔑ろにされる度に、罵詈雑言を浴びせてきた人物でもある。
学園入学前に、一度だけお母様といっしょにマケラ侯爵家のお茶会へ行ったことがある。
そのため、顔を合わせれば挨拶はする仲だが、今世ではあまり関わりたくないうちの1人だ。
今世でもキャスリン様は殿下と同じクラスで、よく殿下の後ろを歩いているのを見かけるが、どうやら昼食はいっしょに食べていないらしい。
食堂の席は自由に座れる。前世では私が殿下の隣をキープしていたため、今世でキャスリン様が殿下の隣をキープしていないことが意外だった。
『キャスリン様は、1人で静かに食事をしたい派なのかしら?』
そう思ったが、キャスリン様は友達と話しながら食べている。なんだか、キャスリン様の態度が不貞腐れているようにも見えなくはないが、なぜだろう。
どちらにしても、今世でのキャスリン様の行動からも殿下の婚約者を狙っているのは明らかだ。
キャスリン様が婚約者の座に収まってくれれば、私の心は安泰なのだ。ぜひとも頑張ってほしいと思う。
「そういえば、その髪のリボンは初めて見るぞいね!」
またまたスカーレット様の声で、キャスリン様へ向けてしまっていた意識を、もとへ戻す。
「うん、、実は、、ずっと、、気に、、なってた」
「わたしも!綺麗なレースだなぁって思っていたの」
モアナ様とミレーネ様の言葉に、少し恥ずかしくなる。
「えへへっ、これねお父様とお母様からの誕生日プレゼントなんだ!」
昨日、誕生日立食パーティーの時に、両親から白いレースのリボンを贈ってもらったのだ。
手触りのいい、繊細な模様をしたレースのリボン。
今日の朝、メアリーに髪をハーフアップに結ってもらい、このリボンをつけてもらった。
「とっても繊細なデザインだよね〜」
「さすが、、イケメンと、、女神」
「クリスティナ様に、すっごく似合ってるぞい!」
モアナ様は、おそらく私のお父様とお母様のことを言っているのであろうが、先ほどのリュドヴィック殿下への表現といい、なんとも端的で独特な言い回しだと笑ってしまう。
「ありがとう!私も気に入ってるんだ!」
今年は、友達からの贈り物、両親からの贈り物をいただいた。
きっと、今までのなかで最高の誕生日だったと思う。
私も早くコインケースを使って、誰かへの贈り物を選びたい。
そう考えた時に、明るい金色の髪の男の子を思い浮かべてしまったことは、私だけの秘密である。
★リュドヴィック補足★
前世のリュドヴィックは、王太子としての公務や学園の生徒会など”仕事”に対しては真面目にしていました。それはそれは”超”がつくほど真面目。
しかし、サキュバーヌ関連のこととなると、冷静な判断ができなかったのか、なんなのか・・・(◎_◎;)




