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天使のほほえみ  作者: L
57/72

※3人娘の王都大冒険2⃣

無事にクリスティナへの誕生日プレゼントを見つけた3人娘。

王都の散策は、新しい出会い、新しい発見の連続で・・・!?




 ホットドッグを食べ終わった3人娘は、今度はお肉の串焼きを食べ歩きしながらの散策である。



 ジューシーに焼かれた串焼きから、肉汁がたれて服に付いてしまいそうで付けないところが、さすが侯爵令嬢と伯爵令嬢である。


 今日は”商家の娘風”コーデのため、食べ歩きをしながら一般通りを堂々と散策することができる。


 普段は出来ないことを”出来る”ということが、親に内緒でイタズラをしているようで3人娘は楽しかった。


 従者に扮した護衛も、交代しながらサクっと飲み食いしているようだ。



 散策の目的は、次にクリスティナといっしょに来た時に、クリスティナを案内できるように。



 散策しながら、気になっていたお菓子屋さんやケーキ屋さん、本屋さんや古書店にも寄ってみる。


 3人娘は初めて見るお店ばかりで、ワクワクが止まらなかった。




 だいぶ歩いた頃に、



「今日、、いちばんの、、美味しそうな、、におい」



 モアナが何かに反応した。


「たしかに、いいニオイがするね〜。あっちのほうかな?」

「行ってみようぞい!」



 いいニオイに引き寄せられて向かった先には、一軒のパン屋さんがあった。


 丸太で造られた建物のパン屋さんは、小さいログハウスのようだ。



 モアナが迷わずにパン屋さんの扉をあけると、いいニオイがさらに強くなって出迎えてくれる。



「いらっしゃいませ!!」


 元気な女の子の声だ。


 焼きたてのパンであろうパンの籠を持って、商品棚に並べていた女の子が振り返った。


 女の子の年齢は3人娘と同じくらいだろうか。


「美味しそうな、、におい、、した」

「わぁ!ありがとう!うちのパンは全部おいしいよ!」


 女の子が嬉しそうにニコニコしながら、3人娘に駆け寄ってくる。


「ここの子供ぞいか?」

「うん!あたしアンって言うの!父さんと母さんと兄さんがパンを作ってるんだ!あたしは、まだまだ修行中なんだけどね〜」

「わたしはスカーレットぞいよ!7才ぞい!」

「本当に!?じゃあ、同い年だね〜!」

「そうぞいか!じゃあ、わたしたちは友達ぞいね!」

「うん!ゆっくり見て行ってね!」


 モアナとミレーネもパン屋の娘アンに自己紹介をするが、今日は商家の娘風コーデのため家名は言わなかった。



 アンは平民のため、本来なら貴族である3人娘に対して敬語も敬称もなしで話すことは許されないが、まさか貴族の令嬢だけで平民が営むパン屋さんに来るとは夢にも思わない。


 3人娘の服装やスカーレットの口調から、『お金持ちの平民なのかな〜』くらいにしか、この時のアンは思わなかったのである。



 3人娘も平民と関わることは、ロバート公爵領の孤児院の友達のおかげで慣れっこだし、クリスティナと孤児院の友達の関係性を羨ましく思っていたこともあり、アンに身分など気にせずに敬語なしで話されることも呼び捨てにされることも、新鮮で嬉しかったのだ。




「あっ!このスコーン!」


 トレーとトングを持ってパンを選んでいると、スカーレットが声をあげた。


「この、、スコーン、、前に、、食べて、、すごく、、美味しかった」

「あぁ!あの時のスコーン!美味しかったよね〜」

「食べてくれたことあるの?」

「あるぞい!兄う....じゃないぞい!に、に、兄さんが買ってきてくれたんだぞい!」


 今日は商家の娘風コーデ。


 今日の設定は「町娘」なのだ。


 貴族らしい「兄上」という呼び方を、照れながらも「兄さん」と言いかえるスカーレットである。



 ここが、貴族のあいだでも噂のパン屋さんだったのだ!



「そうだったんだ!食べてくれてたなんて嬉しいな!こっちはね、新商品で”ワッフル”っていうの!」


「「「ワッフル???」」」


 初めて聞く名前に、3人娘は首をコテンとする。


「ちょっと待っててね!」


 そう言ったアンは、ワッフルを1つだけトレーにのせると、それを持って奥へと行ってしまった。


 すぐに戻ってきたアンは、


「食べてみて!」


 そう言いながら、トレーを差し出してくる。トレーには、先ほどのワッフルが6等分に小さく切られていた。


「買っていないのに食べていいぞいか?」

「試食だよ!し・しょ・く!」


 初めての”試食”に戸惑う3人娘。


 だが、ワッフルから漂うバターの誘惑には勝てない。


 3人娘はソーっと試食用のワッフルに手を伸ばして、ソーっと口にする。


 その瞬間。



ザクッ、ザクッ、ザクッ。



「なんぞい!?”ザクザク”って音がするぞい!」

「この、、食感、、この、、味、、すごすぎ」

「なに!?これ!?お、美味しずぎる!」


 3人娘は、まだ初等部1年生のため的確な食レポはできないが、瞳をこれでもかと輝かせ頬を紅潮させた表情だけで、どれほど衝撃的だったのかが丸わかりだ。


「喜んでもらえてよかった〜!これね、あたしと兄さんで考えたの!」

「アンと、、お兄さん、、で?」


 3人娘のなかで一番のお菓子大好きモアナは、羨望の眼差しをアンへと向ける。


「うん!ザクザクしてたら面白いかなって思ったのはあたしだけど、このワッフルを焼く型を作ったのは兄さんなの!あたしの兄さん、型を作るのも天才なんだ〜!」

「アンも、、お兄さんも、、すばら、、しい、、感謝」


 モアナは、もう拝みだしそうな勢いである。


「ワッフルも買って帰ろうっと!」


 ミレーネがトングでワッフルを掴みトレーにのせている。


 それを見たモアナとスカーレットは慌て出す。


「わたしも、、絶対、、買う」

「わたしも買うぞい!家族にお土産だぞい!!」



 そうして、お店に並べられたワッフルとスコーンのほとんどを3人娘がトレーにのせる。


 もちろん、他の種類のパンものっている。


 トレーいっぱいにパンをのせた3人娘を見て、アンが笑う。


「いっぱい選んでくれて、ありがとう!」


 3人娘が会計をしようとカウンターへ行くと、


「お会計お願いしまぁ〜す!」


 アンが店の奥のほうに向かって大きな声を出す。


 すると、奥から15,6才の少年が出てきた。とても優しそうな顔立ちをしている。


「いらっしゃいませ、お会計だね?」


 少年は、3人娘に対してフワっと笑う。


「あたしの兄さんだよ!あたしは、まだ計算できないから兄さんに会計してもらうんだ!」

「ワッフルの、、天才」


 モアナの呟きは少年にも聞こえたようで、


「あははっ!すごい異名がついちゃったな!ワッフルを気に入ってもらえたようで嬉しいよ。それにしても、みんな大量だね」


 大量に買っても屋敷の者にも配れば、あっという間になくなってしまうのだが。さすが侯爵令嬢と伯爵令嬢、一般通りのパン屋さんであれば自分たちのお小遣いで大量に買えてしまうのだ。


「アンも仲良くなったみたいだね」


 3人娘の会計をしながら、兄が妹に話しかける。


「うん!みんな友達になったの!同い年なんだよ!」

「そうなんだ、うちの妹と仲良くしてくれてありがとね」

「友達だぞい!また来るぞい!」

「ワッフルの、、天才の、、妹、、友達」

「また新商品ができたら教えてね!」



 パン屋さんの兄妹に店の外まで見送られて、3人娘は大きく手を振りながらパン屋さんを後にする。



 友達もできたし、美味しいパン屋さんも発見できたし、初めて自分でパンをトングで取って選ぶことも体験した。大満足の3人娘である。




 西の空は少しずつ橙色に染まってきている。


 そろそろ馬車へ戻らなければいけない時間だ。


 本当に、楽しい時間とはあっという間に過ぎていく。



 一般通りから貴族通りに向かって歩いていると、


「あそこの角が王都警備隊の屯所ぞい!」


 一般通りと貴族通りが交わる中心に、第三騎士団である王都警備隊の屯所がある。王都警備隊は学園祭の警備を担っていた隊だ。


 屯所の前に迎えの馬車が待機しているらしい。


 屯所の建物が見えてきて、馬車まであと少しという時。



「これは?」



 ミレーネが、ふいに立ち止まった。


 ミレーネは、屯所の()()()()建物を見上げていた。


 つられて立ち止まったスカーレットとモアナも、建物を見上げる。


 一般通りのお店が建ち並ぶなかに不釣り合いな建造物だった。


 古くて荘厳さを感じさせる建物。


 周囲に並ぶ建物よりも奥まった場所に、その建物はあった。



 スカーレットが「これは何の建物ぞい?」と、視線だけで護衛に尋ねたが、護衛たちも首を横に振る。


 重たそうな両開きの扉は、()()()片側だけ開いていた。


「扉があいているってことは、入ってもいいぞいか?」


 馬車はもう目の前である。


 あと少しくらい寄り道しても許されるだろうと思ったスカーレットが、率先して扉に近づこうとすると、


「お嬢様!いけません!私が先に見てまいります!」


 護衛のうちの1人がスカーレットを制止し、ゆっくりと警戒しながら扉へと近づいていく。


 扉から中の様子を窺うと、護衛は3人娘のほうへ向き直った。



「おそらく、何か祈りを捧げるような場所ですね」

「入ってもいいぞいか?」

「大丈夫かと思います。こういった場所は、自由に祈るようなところですから」



 その護衛が、もう片側の扉もあけてくれたので、3人娘は荘厳な建物の中に足を踏み入れる。


 中へ入るとステンドグラスの窓から夕陽が差し込み、何かの像を神秘的に照らしていた。


 それほど広くはない室内。


 先ほど護衛が説明したように、3人掛けくらいの長椅子が6つあるため、やはり祈りを捧げる場所なのだろう。


 天井には小さい天使の絵がたくさん描かれていた。


 ミレーネが、少しずつ夕陽に照らし出されている像へと、引き寄せられるように近づいていく。


 スカーレットとモアナも、ステンドグラスや天井に描かれた絵画を興味深く眺めながら、ミレーネについていった。



 像の前で立ち止まったミレーネは、背の高い像を見上げる。



「この方は......天使様?」

「天使様って、アーリエル様のことぞいか?」

「大天使と呼ばれるアーリエル様は女性。でも、この像の方は男性なの....」

「天使様に男性もいるぞいか?」


 スカーレットが、大人であり知識もありそうな護衛たちに問いかける。


 3人の護衛は、またしても首を横に振る。


「我々の知識でも、大天使アーリエル様と、この王国の始祖であるリュー陛下の妃であらせられた天使族の姫しか存じ上げません」

「じゃあ、この像は誰ぞい?」

「でも、、天井に、、描かれて、、いる、、天使様は、、女の子も、、男の子も、、いる。男性の、、天使様も、、いるんじゃ、、ない?」

「たしかに!頭いいぞいね!モアナ!」

「きっと、わたしたちが知らないだけで、天使像に選ばれるような男性の天使様もいらっしゃったんだ。これは、また新たな本を探さなくては。ここは、きっと天使殿なんだよ!!」



 天使族大好きなミレーネは大興奮である。


 男性の天使像は目を瞑り、両手を胸におく姿は、本で見たことがあるアーリエル様の姿と同じだ。


 この王国民であれば、誰しも一度は目にしたことがあるだろう。



 3人娘と3人の護衛は、自然な動作で膝を床へとつけて胸の前で手を組み、目を瞑って祈りを捧げる。


 正式な天使像への祈りの捧げ方は知らないが、不思議と祈りを捧げたくなったのだ。


 各々が自己流の祈りを捧げると、目をあけて天使像を見上げる。


 目を瞑ったままの男性の天使像だが、なぜか優しく温かな眼差しで見守ってくれているように錯覚してしまう。




「なんだか頭がスッキリするぞい!今なら問題が解けそうだぞい!!」


 スカーレットは、決して勉強ができないバカではない。一応、学年で10位以内には入っているのだから。


「スカーレット、、うるさい。でも、、たしかに、、オナカ、、すいたかも」


 あれもこれもと、美味しいものを食べ過ぎたモアナは、先ほどまでオナカが苦しかったらしい。


「こんなにステキな天使殿が王都にあるなんて知らなかったな。また来ようっと!」



 ミレーネの言葉で、スカーレットとモアナは顔を見合わせて疑問に思った。


 王都生まれ、王都育ちの自分たちなのに、王都の中心に天使殿があることを知らなかったことを。




 優しい空間から外へ出ると、空の橙色が先ほどよりも濃く広がっていた。




「あれ?」


 ミレーネが眼鏡をとり、目をゴシゴシこする。


「どうしたぞい?」

「だい、、じょうぶ?」

「あっ、ごめんね!大丈夫!なんだか眼鏡の度が急に合わなくなった気がして」


 再び眼鏡をかけたミレーネは、眼鏡を上げたり下げたりしている。



 『なんか視力が上がったような気がするけど、気のせいだよね』



 幼い頃から視力が悪く眼鏡をかけているため、勘違いだと思い直すミレーネ。





 今度こそ、3人娘は馬車へと向かう。



 今日だけで、たくさんの発見があった。


 雑貨屋さん、パン屋さん、etc・・・、そして天使殿。


 多くの気さくな人たち、身分を超えた新しい出会い。




ーーークリスティナ様は、あのプレゼントを喜んでくれるかな。


ーーークリスティナ様を案内したい場所も、たくさん見つけたよ。


ーーークリスティナ様に話したいことも、たくさん増えたぞい。




 たくさんのお土産を抱えて、3人娘は帰路へとつく。




 『3人娘』初めての王都大冒険は、優しい橙色の空に包まれながら幕を閉じたのであった・・・。









噂のスコーンやワッフルのパン屋さんや、前世でメアリーが暮らしていた天使殿が登場してきました!

王都にある天使殿の詳細は、”第8話※メアリー目線(侍女)2⃣”をご覧ください☆彡


3人娘のお話は、メンバーを入れ替えて今後もお届けできればな~(o^^o)

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