※リュドヴィックの学園祭
学園祭でのリュドヴィック目線をお届けします♪
今日こそは、クリスティナと話せるのか!?
よろしくお願いします!
今日は学園祭である。
オレにとっても初めての学園祭だ。
学園祭がどんなものか楽しみではあるが、ただ楽しむだけにはいかないのが王族の立場だった。
第一王子であるオレは、分け隔てなく平等に各クラスを見て回らなくてはならないのだ。
クラス屋台であれば少し顔だけ出せばいいが、劇や演奏などを披露するクラスだと時間が決められているため、途中入場して途中退場しながら見て回らなければならない。
しかも、父上たちからお土産を買ってきてほしいと、リストまで渡された。なぜ父上は、これほどに菓子の名前を知っているのだ!?しかも、王宮で出るような菓子ではない。おそらく、庶民向けの菓子なのだろう。さて、どこに売ってるのかわからない。
なかなかにハードなスケジュールだ。
それをダミエレとともに、朝からあっちへ行き、こっちへ行きを繰り返している。
だが、そのようなスケジュールの合間にも、考えてしまうことがある。
それは・・・あの子にオレの作品を見てもらえるだろうか、ということだった。
ーーー夏休み、宿題の木工作品。
最初は無難に本棚にしようかと考えていたが、あの子が好きであろうボリジの花を描くことは決めてあった。
あの青い星形の花が”ボリジ”という名前だとわかったのは、王宮の図書室にある植物図鑑で調べたからである。
王宮の庭師にボリジのことを聞いてみると、ボリジが咲いている庭園に案内してくれた。
夏の時期、通常は咲いていないが、この王宮の庭園には咲いている。
なぜなら、オレの母上は精霊に愛される隣国の出身であるため、精霊の加護があるからだ。その加護のおかげで、この王宮にある花や草木が枯れることはない。1年中、綺麗に咲き誇っているのだ。
王宮内に花を飾りたい放題である。
「季節ごとに花を入れ替えなくてすむのでラクになった」と庭師は苦笑いするが、1つだけ咲き続けないものがある。
それは、ダフネだ。
春になる頃に咲く花だが、そのダフネだけは季節が移り変わる頃には、その役目を終わらせる。
なぜ、ダフネだけが咲き続けないのか、理由は母上にもわからないそうだが、「それなら巣箱をつけて、鳥たちがきてくれたらダフネも喜ぶかもしれない」という安易な発想で、巣箱を作ることにした。
木の色と調和させるため、あえて巣箱には色を塗らずに、巣箱の両側面に描いたボリジにだけ色を加える。ボリジが咲く庭園に座りながら描いた。ボリジを髪に飾った、あの子を思い出しながら・・・。
しかし、オレはあまり絵は得意なほうではないため、「それは・・・もしかしてボリジ、ですか?」と、庭園に遊びにきた花好きの弟リュシルには笑われてしまったが。
『あの子に、気づいてもらえるといいな。あの子が好きな花を、オレも好きになったんだって』
ボリジの花言葉は”勇気”だと、リュシルが教えてくれた。
「勇気」
それは、今のオレに必要なものだった。
まだ、あの子と話せていないけど、それはオレが決めたことだ。自信をもって堂々とあの子と話すために、ロバート公爵領に行ったあの日に決めたのだ。
オレも、国のために、民のために、今のオレにできることをしようと。
ーーーーあれからオレは、王都にある庶民の学校で剣術を教えている。希望する者には、勉強も教えることもある。どちらかというと、剣術がメインということだ。
王子という身分は隠しているから、生徒はオレのことを、どこかの貴族の坊ちゃんと思っていることだろう。
この国は、実力があれば希望の職種につけるが、やはり王立学園と庶民の学校では差が生まれる。
実は才能があっても学べる機会がなければ、その才能に本人が気づかないまま終わってしまう。
オレが剣術を教えるようになってから、その才能を開花した者もいる。その者はオレより年上だが、これまで木刀すら握ったことはなかったという。剣の才能だけでなく、年齢より小柄な体格を活かした俊敏さも目を見張るものがある。その者が望むなら、騎士になることを薦めたい。
まぁ、彼の弱点を1つあげるなら、少し飄々としているところだろうか。けれども、年下の子供の面倒見はいいし、人好きのする性格だし、根は真面目だ。このまま成長していけば、将来は近衛騎士を任せられるのではないか、とも思う。庶民から近衛騎士に選ばれれば、民の夢も広がるというものだ。
ーーーーーなんだか、彼の性格のような騎士志望者が他にもいたような・・・と思いながら中等部の校舎へ向かって歩いていると、
「あっ、王子様」
「シャーマか」
『彼が誰かに似てると思ったら、シャーマと似てるんだ』
シャーマも少し飄々としていて妹を揶揄ったりしているが、本当は妹を大切にしているし、根は真面目だ。
シャーマとクラスメイトであろう数名の男子生徒はオレに一礼する。
「これから俺たちは昼飯にするんですが、殿下もどうです?」
王族のオレに対して砕けた口調ではあるが、オレも気を遣わずに話せるから、そのようなところも実は好ましかったりする。それを言葉にしたら調子にのるから、絶対に言わないが。
オレとダミエレは、午前中は高等部を見て回り、午後は中等部を見て回る予定だ。オレも中等部のクラス屋台で昼食にしようとは思っていたが、あと少し見て回らなければならない。
「まだ見るところがあるから、また今度な」
「あらま、王子様は大変ですね~」
シャーマはケラケラ笑う。
「劇や演奏は時間が決まっているから仕方ない」
「それでしたら、中等部2-Aは絶対に見たほうがいいですよ。午後にやるんで」
「もちろんだ」
「ちゃんと最初から見たほうがいいですからね?では、後ほど」
シャーマと別れて、いくつか見て回ったあと、やっと中等部のクラス屋台へと来ることができた。
『さすがにオナカが空いたな』と思いながら辺りを見ると、驚愕の光景が目に飛び込んできた。
なんと!!
あの子が座っているではないか。
しかも、隣のテーブルにはシャーマがいる。
オレは思わず近くの花壇に隠れてしまった。
「で、殿下?」
ダミエレもオレについてきて、怪訝そうに聞いてくる。
オレは、花と花との隙間からあの子を見つめる。
「もし......オレが、シャーマの誘いを受けていたら、今頃オレも、あそこに座っていたということか?」
「まぁ、そうなりますね」
「もしかしたら、あの子とも話せていたかもしれない?」
「まぁ、そうだったかもしれません」
「オレは......オレは......なんで断ったんだ~!!」
「まぁ、それは仕方ないですよ。お立場的に、見ないクラスがあってはいけませんから」
ダミエレの言うことは正論だ。
だがしかし、この絶好のチャンスを逃がしてしまったことは悔しい。
オレが悶々としていると、
「殿下、こんなところに隠れていないで、今から行けばいいではありませんか。普段通りにお声をお掛けすれば大丈夫ですよ」
「・・・・・・」
『勇気が・・・出ない。ボリジの花よ!オレに勇気を!!』
やっと一歩を踏み出そうとしたところで、あの子たちが立ち上がった。
シャーマだけではなく、シャーマの兄であるフレイムもいっしょに歩き出したではないか。
オレはただただ、あの子の後ろ姿を眺めていたのである・・・・・。
「殿下、どうなさいますか?」
「・・・食べる」
「どちらになさいますか?」
「あの子が食べていたのは西部地方の食べ物だったよな?」
「それでしたら、フレイム様のクラスのキャペプかと」
ダミエレが案内表を見ながら答える。
「では、そのキャペプとマスカットジュースを買いに行くぞ」
「・・・かしこまりました」
「あと、クレープも」
「・・・はい」
ダミエレが呆れた目で見てくるが、オレは気にしない。あの子と同じものが食べたいし飲みたいのだ!
そしてリュドヴィックが我先にと、クリスティナが座っていた席に着くのを見たダミエレが、さらに呆れてしまったことは言うまでもない・・・・。
食事を素早く済ませたオレは、ダミエレとともに小講堂へと急いだ。
シャーマが言っていた2-Aを観るためである。
小講堂へ入ると、ほぼ席は埋まってはいるが、オレたちは途中退場になるはずだから、気にせずに扉近くに立つ。次のクラスを見て回らなければいけないからだ。
あの子は一番後ろの席に座っていたようだ。ここから、斜め前にあの子がよく見える。
あの子は、こちらには全く気づいていない・・・・。
そして、演奏が開始された。
このクラスのメインは歌唱だ。歌っているのは、マリエ・ウェバー伯爵令嬢。透き通る、よく通った声だ。歌が大好きな母上が、とても喜びそうである。母上はまだ隣国にいた頃は、よく精霊たちと歌っていたそうだ。この国に精霊を連れてくることはできないため、加護だけが母上に残っているのだが。
マリエ嬢の歌声を聴きながら、斜め前に座るあの子を眺める。
『んっ?なんだか、苦しそうな顔をしてないか?』
すると、あの子の大きなエメラルドグリーンの瞳から、ポロポロと涙が流れているではないか。
どこか具合でも悪いのか!?
オレがあの子に近づこうとした時、ちょうど演奏が終わり、あの子の隣にいたワグナー嬢が心配そうに話しかけている。
それを見たオレは、出しかけていた足を戻した。
あの子は、「感動して泣いた」と言う。
それにしても、とても悲しそうな表情をしているように見えるのは何故だ。
だが、クラスメイトやフレイムたちと話していくうちに、あの子の表情が晴れていくのがわかった。
最後は、心からの微笑みを浮かべて拍手を送っている姿を見て、今度はオレの胸が苦しくなる。
「殿下、そろそろ次へ向かいませんと間に合わなくなります」
「あぁ.....わかっている」
オレは、すぐ近くにある扉から出るまでの間、ずっと振り返りながらあの子を見ていた。
ーーー中等部も無事に全て回り終え、父上たちへのお土産リストも制覇して、オレは初等部に戻ってきた。
初等部の生徒は、すでに帰宅したらしい。
オレとダミエレ以外は誰もおらず、オレはあの子のクラスに来ていた。
あの子の刺繍の作品は、オレンジ色の花が4輪。なんだか、4輪の花が仲良く寄り添っているように見える。
「マリーゴールドですね」
「・・・ダミエレは、花も詳しいんだな」
「詳しいわけではありませんが、母が好きだった花だと聞いたことがありましたので」
「・・・そうか、お母上が。ダミエレも、こういう女の子が好きか?」
「・・・・・はっ?ゴホンッ、失礼しました。一瞬、思考が停止してしまいました。そうですね、マリーゴールドのように鮮やかな女性は素敵だと思いますが、ボク自身としては、こちらのような控えめながらも可愛らしい感じが好ましいですね」
ダミエレが指し示したのは、あの子の隣に飾ってある刺繍だった。3輪の青い小さな花が垂れており鈴のような形をしている。
「なるほど。この花は、なんという名前なんだ?」
「申し訳ありません。ボクもわかりません」
「ダミエレでもわからないことはあるのだな。ワグナー嬢の作品か」
「あとで調べてみます」
オレは自分自身の変化に気づく。
「興味がなかったものに、興味をもつようになるとはな」
オレはボソッと呟いていた。
「はい?何か仰いましたか?」
「いや、なんでもない。あっ、ダミエレ。今度オレに絵の描き方を教えてくれ」
「・・・へ?」
ダミエレは、ポカンと口をあけたまま驚いた顔をしている。
オレから教えを乞うたからだろうが、いつも冷静で無表情に近い幼馴染みの顔が、子供らしく変化したことに可笑しくなってしまう。
「あははっ」
ーーーー小講堂で見た、あの子の涙が思い出される。
苦しみ、悲しみ、それらを受け止めたような微笑み。
昇華したのか、それとも諦めか・・・・。
そのような想いを、オレも知っている。
あの子が何に悩んでいるかはわからないし、比較することも烏滸がましいが、王族としてのオレも似たような経験をしている。
王族として生まれたからには、自由な選択肢はない。
衣食住が約束されて、民より何十倍も贅沢な暮らしをしているかわりに、国を、民を守る重責は計り知れない。
何をしたい、どこへ行きたいという願いですら、オレだけでは決められない。
だから・・・それらができない納得する理由を探すのだ。
ーーーーーオレが、あの子を支えたい。
『あの子の心が穏やかであるように』
帰ったら、マリーゴールドの花言葉を調べてみよう。
リュドヴィック〜!!!
ヘタレだけど、いい奴だ(●´ω`●)
それぞれが、学園祭から帰宅した夜②
~コフィア王家編~
王宮に帰宅したリュドヴィックは、父リュベルトたちと学園祭のお土産として買ったお菓子を食べました(^^)
あまり庶民のお菓子を食べたことのない、母の王妃も弟リュシルも大喜び!もちろん、リュドヴィックも興味津々です♪
お菓子を食べながら父リュベルトは、
「このお菓子はね〜、学生の頃にグレイとアリアナちゃんがーーーーー」
と、お菓子にまつわる様々な思い出を話します。
クリスティナの両親の話を聞きながら、『あれ?そういえば、フレイムはあの子の頭を撫でてたよな?』
と、リュドヴィックは学園祭での出来事を思い出します。
クリスティナの涙で、すっかり忘れていた出来事を思い出してしまったリュドヴィックは、また悶々としてしまいます。
するとリュベルトが、
「その様子だと、まだクリスティナ嬢と話せてなさそうだね〜」
と、リュドヴィックを揶揄います。
「あらあら。早くしないと、他の男の子にとられちゃうわよ〜」
と、母である王妃も揶揄います。
「兄上、ボリジの花を持ち歩けるように準備しましょうか?」
と、弟のリュシルにまで言われてしまいます。
「大きなお世話です〜!!!」
今日も王宮内では、リュドヴィックの叫び声と、その家族の笑い声が響いておりましたとさ♪




