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天使のほほえみ  作者: L
40/72

※グレイソンとアリアナの青春時代4⃣




ーーー高等部へと進級したグレイソンとアリアナ。




 この時には既に、リュベルトは王太子となり、隣国の王女と婚約を結ばれたことが、国民に向けて大々的に発表された。



 新たな校舎でアリアナの環境も大きく変化したのだが、そのうちの一つが、グレイソンとリュベルトの推薦があり、生徒会に属したことだ。


 王族と公爵家の生徒からの推薦があれば、否と唱える者はいないはずだが、1番の難関はグレイソンとリュベルトの強敵であるウェバー先輩だ。彼は、何事に対しても貪欲で、納得がいく理由がなければ是とは言わない。



 しかし、今回の件については違った。


 あまりにも簡単に、アリアナの生徒会入りが承認されたものだから、グレイソンとリュベルトは拍子抜けしたものだ。



 アリアナは、家庭環境はどうであれ侯爵令嬢という家格に問題はないし、学業も勤勉で上位の成績でもあるし、もともと生徒会の人数が不足しているため、それらの理由ですぐに承認されたのだろうと、グレイソンとリュベルトは思っていた。



 しかし、ウェバーの思惑は少し違った。



 もちろん、アリアナの人柄や勤勉さも合格点なのだが、なにより相手によって態度を変えないところが評価されたのだ。


 グレイソンとリュベルトは、生徒会をサボる常連組。さらに、リュベルトは立太子されたことから公務が増え、より生徒会に参加することが難しくなると予想される。



 さて、グレイソンは・・・・・。


 グレイソンとアリアナが互いに抱いている感情が何かなど、2人を見ていれば一目瞭然。気づいていないのは、当人たちだけだろう。


 アリアナは勤勉で真面目なため、生徒会へは積極的に参加するだろうし、アリアナが参加すればグレイソンは必ずくっついてくる、運がよければリュベルトもグレイソンを探して来るかもしれない。



 ウェバーは、それを狙ったのだ。


 それに、何やらグレイソンは、裏でコソコソとアリアナに関することで動いていることにも、ウェバーは気づいていた。




 そんなウェバーの思惑など露ほども知らないアリアナは、生徒会に初めて顔を出し、熱烈な歓迎を受けていた。



「キャ〜!!本当に女の子だわ!生徒会に女子生徒は私だけだったから、本当に嬉しいわ〜!!あのね---ーーで、ーー---なのよ〜!!!」



 アリアナと初対面にも関わらず、テンションが高くマシンガントークを披露しているのは、1歳年上のカイラ先輩という伯爵令嬢だ。カイラ先輩はウェバー先輩の婚約者らしい。


 とても賑やかな初日であったが、生徒会に受け入れられたようで、アリアナは一安心したのである。



 そして何より、アリアナにとって嬉しかったのが、屋上庭園に行けることであった。


 生徒会室のベランダには、屋上へと続く螺旋階段がある。螺旋階段は人が1人通れるくらいの狭くて急な階段ではあるが、その階段を上がると屋上庭園が広がっている。生徒会に属している生徒だけの特権で、生徒会メンバーなら自由に過ごしていいらしい。


 屋上庭園から見渡せる景色は、これほど高い場所に行ったことのないアリアナにとって格別であった。


 屋上庭園にちょくちょく来ようと、密かに決めたアリアナである。






 そして、アリアナの環境が大きく変化したことが、もう一つ。


 学生ワークを始めたことだ。


 それも、ロバート公爵領にある孤児院で。


 きっかけは、もちろんグレイソン・ロバートである。


 ロバート公爵領は、領民の識字率が高く、学校教育に力を入れている。しかし、孤児院の子供たちは働きながら学校に通っているため、なかなか勉強が進まない。そのため、孤児院の子供たちに勉強を教えてほしいと、グレイソンから依頼されたのだ。グレイソンの父であるロバート公爵にも許可をもらっていると言われてしまえば、断る理由はない。


 学生ワークをしようと決めていたアリアナにとって、願ったりかなったりだ。


 学生ワークをする場合、学園の生徒として学業は優先されるため、学園が休みの週末だけロバート公爵領の孤児院で働くことになったのである。




 孤児院の子供たちは素直で元気いっぱい。


 勉強を学べることにも喜んでおり、アリアナも年齢が様々な子供たちに楽しく勉強を教えていた。


 そして、孤児院のナターシャ院長に、アリアナもたくさんのことを教わる側でもあった。


 時には子供たちと、庭で追いかけっこをしたり、いっしょに畑仕事をしたり。フォンターナ侯爵領の森で育ったアリアナは、土まみれになることには慣れっこだった。



 時間がある時は、グレイソンも孤児院に来てくれた。


 グレイソンも交えて皆でピクニックがてら、青空の下で勉強したことも楽しい思い出だ。




 アリアナは、楽しみながら生徒会の仕事や子供たちに勉強を教える仕事もして、しかも給金までもらえて、充実した日々を送っていた。




 それは・・・いつも隣に、グレイソンがいてくれることが大きな理由でもあった。


 アリアナは、自分がグレイソンに抱いている感情が何か、本当はわかっていた。


 でも、気づかないフリをした。


 だって、いつかは貴族ではなくなるから。


 今みたいに、いっしょにはいられなくなるから。




 学園を卒業したら、このままロバート公爵領で働かせてもらえないだろうか、とも考えた。


 そうすれば、グレイソンと会えなくても近くにいることはできる。


 しかし、グレイソンは公爵家嫡男。


 いつかは結婚するだろう。


 その時、自分は心から祝福できるだろうか。


 グレイソンの隣に立つ女性のことを、平然と見ることができるだろうか。


 想像するだけで胸が痛いから、やっぱり離れた場所に行こうか。


 アリアナは葛藤する。




 でも。でも。


 今こうして、グレイソンといっしょに過ごす時間は、やっぱり嬉しくて。



 お昼休みの時間だけ共に過ごしていた2人は、今は生徒会がある放課後、そして孤児院で過ごす週末、共に過ごす時間は確実に増えていった・・・・。






 今年の剣術大会の開催が、あと1ヵ月と迫ってきた頃。



 生徒会は、剣術大会の準備に慌ただしくしていた。


 学園で大規模なイベントがある場合、初等部〜高等部の生徒会が合同で準備に取りかかるのだ。



 『だから、グレイソンたちはウェバー先輩に追いかけられていたのね』と、中等部3年生のグレイソンたちを、なぜ高等部のウェバー先輩が追いかけるのかと不思議に思っていたアリアナは、謎が解けて慌ただしくしながらも笑みが溢れてしまう。




 準備を進めていると、グレイソンが話しかけてきた。


「アリアナ、少し休憩しよう」


 その手には、チュロスを2本持っていた。


「皆さんは・・・」


 と言いながら、アリアナは周りを見渡してみると、グレイソンが全員にチュロスを配り終えていたようだ。


 おもしろいことに、生徒会はチュロスを食べながら仕事をすることが伝統になっているらしい。


 他の生徒会メンバーも、すでに休憩モードの雰囲気だ。



「屋上で休憩しない?」

「大賛成よ!」



 グレイソンに誘われて、屋上庭園へと続く螺旋階段を2人で上がる。


 アリアナは、生徒会に入り半年が過ぎたが、この屋上庭園には何度も来た。


 そのほとんどが、グレイソンといっしょであるが。


 屋上庭園に上がると、そこは橙色の夕陽に染まっていた。


「きれい〜!!」


 その景色が美しくて、アリアナは思わず屋上庭園の柵まで走り寄る。


 眼下に広がる王都の街並みも夕陽に染まり、まるで1枚の絵画のように見える。



 グレイソンもアリアナの隣に立ち、夕陽に美しく染まるアリアナの横顔を見つめながら、アリアナを想うことが始まった日を思い返す。






ーーーーーあれは、中等部1年生の頃。



 放課後、グレイソンはウェバーに捕まり、生徒会の仕事を終えて鞄を取りに教室へ戻るため、廊下を歩いている時だった。



「あははははっ!」



 他のクラスの教室から、女子生徒の大きな笑い声が聞こえてきた。


 その教室の前を通ると、どうやら女子生徒数名が残ってお喋りしていたようだ。


 その女子生徒の中で、ひときわ大きな声で楽しそうに笑っている子は、赤茶色の髪にエメラルドグリーンの瞳。




 アリアナ・フォンターナ侯爵令嬢。



 彼女は侯爵令嬢にも関わらず、寮生活をしている風変わりな令嬢。


 だからといって本人に問題があるわけではなく、成績は優秀。


 高位貴族の令嬢のように見栄は張らず、高位派閥にも属していない。


 友達がいないわけではなく、寮生活を共にする子爵・男爵令嬢や商家の女子生徒と仲良くしている。


 グレイソンやリュベルトとは会釈程度の挨拶しか交わさないが、その会釈の角度、目の伏せ方は、清廉された姿で印象に残っていた。



 グレイソンは自分の教室に入り鞄を持つと、すぐ目の前にある階段からは下りずに、アリアナたちがいる教室の前を通るため、遠回りをして別の階段から下りた。



 なんとなく、気になってしまったから。


 楽しそうに大きな声で笑う姿に。


 貴族令嬢が大きな声で笑うことは、「はしたない」と言われるが、なぜかアリアナの姿は下品ではなくて。



 公爵家の馬車に乗り帰宅するグレイソンの耳には、アリアナの笑い声が残っていた・・・。




 

 なかなかアリアナと顔を合わせる機会がないグレイソンだったが、気づけば中等部3年生になっていた。



 お昼休みに学園の食堂やカフェテリアに、アリアナが姿を見せないことに気づいたのも、この頃だった。


 リュベルトが立太子や婚約の準備で学園を休んでいる時に、アリアナを探してみようと思いたつ。



 『中庭にでもいるのだろうか』と考えながら歩みを進めるが、中庭にもアリアナの姿はない。


 多くの生徒が中庭で昼食を食べている横を通り過ぎ、そのまま中庭を過ぎる。




 そして・・・・・生徒の姿がなくなったあたりで、空から降ってきた本がグレイソンの帽子になったのだった。





ーーーーー懐かしい日を思い出していたグレイソンは、いま隣で夕陽に美しく照らされているアリアナを見つめたまま思う。



 『令嬢としての教育は、祖母から教わったと言っていたな。会釈の清廉さからも、アリアナの祖母の教育は素晴らしかったのだな』と、グレイソンは改めて感慨を覚える。



 いつからか、大きな声で笑う姿を見せてくれるようになった。


 いつからか、敬語ではなくなった。


 いつからか、2人っきりの時は”グレイソン”と呼び捨てになった。



 2人の距離が縮まっている気がして、グレイソンは子供のように嬉しい気持ちになる。





 ウェバーが、「いつまで休憩してるんだ!」と飛び込んでくるまで、夕陽に染まる王都の街並みを、2人で眺めていたのだった・・・・・。



『グレイソンとアリアナの青春時代』 次回、完結です!

長くなってしまっていますが、もう少しお付き合いくださいッ(*^^)v

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