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天使のほほえみ  作者: L
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暗闇での目覚め③




 学園の初等部入学式の朝。


「クリスティナお嬢様!なんて可愛いのでしょう!!!」


 メアリーの感嘆の声が室内に響く。


 私は今、学園の制服に着替えさせてもらった。


 濃紺のベルテッドジャンパースカート。淡い黄色のリボンタイシャツ、シャツの袖はギャザースリーブになっていて少しふんわりしている。スカートはミディ丈で、黒いタイツを合わせている。

 

 ベルテッドジャンパースカートは、ウエスト部分がベルトになっているので、中等部や高等部になってもコルセットがいらない仕様となっている。


 リボンタイシャツの色は各学年で決まっていて、新一年生は淡い黄色だ。


 貴族としては少しカジュアルな制服かもしれないが、学園には平民も通うことが念頭にあるため、平民でも気負うことなく着られる制服になっている。


「そう?似合ってるかな?」


 メアリーの態度が嬉しいくせに澄ました感じに言いながら、鏡の前でクルクル回ってみせる。


「えぇ!えぇ!”お似合いです”と一言では言い表せません!まるで、天使様のようです!」


「もう、大袈裟よ」


「そんなことありません!・・・しかしながら・・・お嬢様をずっと見ていたいのは山々なのですが、そろそろ朝食をお召し上がりになりませんと、入学早々に遅刻されてしまいます.....」


「ふふっ、そうね」


 メアリーが、本当に名残惜しそうに言うものだから笑ってしまう。



 『お父様とお母様にも見てもらいたいな』



 そう思いながら、2階の自室から食堂へ向かうために階段を下りて1階へ行くと、執事のセバスチャンと行き交う。


「セバスチャン、おはよう」


「お嬢様、おはようございます。とても、制服が似合っていらっしゃいますね」


 セバスチャンは、目を細めてニコニコと返してくれた。


「へへっ、ありがとう。お父様とお母様は?」


「旦那様と奥様は、先程お仕事へ出掛けられました」


「そっか。今日も早かったのね」


 そう返して、なんとも思っていないように振る舞い食堂へ入る。


 本当は、両親にも制服姿を見てもらいたかった。


 今日から学園に入学するのに、こういう日もいないなんて。


 寂しい思いを我慢して朝食を食べたけど、馬車で学園へ向かうために家を出る時、セバスチャンや使用人の皆が大勢でお見送りしてくれた。


 メアリーは、今日が登校初日だから学園の前まで付いてきてくれるので、いっしょに馬車に乗る。


 私の心は、皆のおかけで少し和らいだ。



 『お父様とお母様には見てもらえなかったけど、リュドヴィック殿下と仲良くなるのは頑張らなきゃ』



 そう気持ちを改めて、馬車の窓から見える青空を眺めた。






「お嬢様、行ってらっしゃいませ」


「うん!行ってきます!」


 学園に到着し、メアリーへ元気に手を振って、ドキドキしながら学園内へと入っていく。

 

 周りは、私と同じ色の制服を着た子ばかりだ。


 チラホラと、違う色のシャツを着ている学生もいるので、おそらく案内役の上級生なのだろう。


 そして、学園の広い広い玄関に着いたけど中へは入らず、私は玄関前に立っていた。


 なぜなら、リュドヴィック殿下に挨拶しようと待ちぶせしているのだ。


 まずは、私の顔と名前を認識してもらわなければ。


 リュドヴィック殿下の顔は分からないが、髪は金色で目は青色のはず。


 それが王族の特徴だからだ。


 そう思っていると、周りがザワつき始めた。


「第一王子だ!!」


 誰かが声を上げると、一斉にそちらへ人が流れる。



 『えっ!?』



 私も人が流れていく方向へ顔を向けると、左前方から3人の子息が歩いてくる。おそらく、真ん中を歩いているのが第一王子だろう。


 だって、私もお父様も髪は金色だけど、それよりももっともっと明るい金色だし、目の色だって雲ひとつない快晴のようなスカイブルーだ。


 髪はクセっ毛なのか、ところどころクルっとしてて、同じ年齢の子供のはずなのにクリっとした大きな目は力強い。


 とにかく、6,7才の子供なのに既に整いすぎた顔は、まさに『これこそが天使様だ!!』と思わずにはいられず、ドキドキと心臓が激しく鳴る。


 第一王子の容姿に驚きすぎて動けなかったが、ハッと我に返り周りを見ると、第一王子のほうへ流れたはずの人たちは、脇に控えて誰も話しかけられずにいるみたいだ。


 貴族社会では、下の家格の者から上の家格の者へ話しかけるのはマナー違反だが、ここは学園なので家格は関係なく平等を謳っている。


 そうでないと、交流関係も学べないし、また差別が起きるからだ。


 友人をつくることも大切だし、人を見て、人と話し、人を見極める力を養うことも大切な教養だ。


 だから、学園では王族でも貴族でも平民でも、好きに話しかけていいのだが、いきなり王族相手に話しかけるのは子供でも躊躇ってしまったのだろう。


 私は、公爵令嬢だ。


 自分より家格が上なのは王族しかいない。


 ならば、ここは私がいこう。


 自分の目標のためにも。


 リュドヴィック殿下が私の目の前(玄関)に来たので、またドキドキしながら何度も練習したカーテシーをする。


「第一王子リュドヴィック殿下にご挨拶申し上げます。ロバート公爵家が長女、クリスティナ・ロバートと申します。本日より、この学園にて同級生となります。今後とも、よろしくお願い申し上げます」


「顔を上げてくれ」


 同年代の子供と同じような声の高さだが、同年代よりもハッキリとした口調。


 だからと言って、冷たい言い方なのではなく、ハッキリしながらも温かみがある声。


 そーーっと顔を上げるとバッチリ目が合う。


「リュドヴィック・コフィアだ。学園では、僕もただの一生徒だから、そんなに畏まらずに気軽に接してほしい。よろしく、クリスティナ嬢」


 私の名前を呼んでいただけて嬉しすぎて、なにも言えずいたら、私たちのやりとりを見ていた周りの新入生たちが一斉にリュドヴィック殿下に挨拶を始めた。


 普通に話しかけて良いのだと安心したのだろう。


 あっという間に、殿下は囲まれてしまったので、それ以上は何も話せず入学初日は終わった。



 次の日から、殿下とは別のクラスだったので、お昼休みや授業の間の休憩時間に、殿下を見つけては話しかけた。


 昼食は学園の食堂で食べるのだが、だいたい殿下は同じ席で食べていたので、私は隣に座れるように頑張った。


 だからなのか、いつのまにか殿下の隣の席が空いていても誰も座ることなく、頑張らなくても食堂での殿下の隣は私の指定席になっていた。


 もちろん、勉強も頑張った。


 家での予習復習は毎日して、学園の成績は学年で2番をキープした。


 1番は殿下である。


 さすが殿下。



 学園の男子生徒の制服は、蛇腹型の制服で色はグレーだ。グレーのなかでもパールホワイトに近いかもしれない。両肩には学年を指す色のラインが入っており、この色は女子生徒のシャツの色と同じだ。


 入学時の殿下は、キラキラと制服を着こなし、大変かわいらしい印象だった。


 年齢とともに、かわいらしさのなかに徐々に凛々しさも加わっていき、中等部に上がると背も伸びてきたせいか制服姿も騎士ようにカッコ良くなった。



 そして、殿下が13才となる誕生日。

 

 殿下は王太子へと立太子され、それと同時に王太子殿下の婚約者に私が選ばれたのだった。







ピカピカの一年生といえば、やっぱり黄色を思い浮かべてしまう私・・・☆

そして、日本の男子学生の制服は、個人的にブレザーより学ラン派です!!!(*^▽^*)


ちなみに、学園の女子生徒の制服ですが、ベルテッドジャンパースカートの丈について。

初等部→ミディ丈

中等部→ミモレ丈

高等部→マキシ丈

年齢を重ねるごとに、淑女は足をさらさないという設定です。



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