表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使のほほえみ  作者: L
39/72

※グレイソンとアリアナの青春時代3⃣

3⃣は、グレイソンとアリアナの、長~い長~い会話です(-ω-)/


よろしくお願いします!





ーーーリュベルト王子の課題を手伝った次の日。




 グレイソンとアリアナは、今日も木の上でお昼休みだ。


 そして、いつものようにお弁当を交換して食べる。


「昨日は災難だったよな~」

「あははっ、まさか私まで課題を手伝うことになるとは思わなかったけど、楽しかったわ。授業を”サボる”っていう、貴重な経験もできたし」

「怒られなかった?」

「先生に、"リュベルト殿下に捕まった"と伝えたら、"あぁ......それなら仕方ないね"、な〜んて逆に同情してもらえたわ」



 お弁当を食べながら、2人はクスクス笑い合う。


 お弁当を食べ終わると、アリアナは水筒からお茶を注ぐ。


 いつのまにか木製のコップも、1個から”2個”に当たり前のように増えていた。


 お茶を注いだコップをグレイソンに渡して、アリアナもひと口飲む。



 そして、アリアナは深く深呼吸をしてから本題を切り出した。




「昨日の話しの続きなんだけどね、私が貴族ではなくなるっていう......」

「うん」



 グレイソンは、アリアナをジッと見つめて、続きの言葉を待っている。



ーーーーーこういうところが好ましいのだ。


 「話の続きは、また明日ね」と、グレイソンから言ったのに、ムリに聞き出そうとしない。お弁当を食べている時も、いつも通りの他愛ない話をして。いつだって、アリアナのことを待っててくれている。


 なんだか気恥ずかしい。グレイソンの顔を直視できなくて、グレイソンの瞳の色よりも濃い空を見上げながら、続きを話す。



 空は冬に近づくにつれて、濃い青空の色に移り変わっていく。



「私の本当の母は、私が2歳の時に亡くなってるの。母が亡くなってすぐ、父は再婚したわ。再婚した義母は、侯爵家に来た時には既にオナカが大きかった。きっと、前々から父の愛人だったのね。そして、私が3歳の時に弟が生まれた。待望の嫡男だから、私はすぐに用無し扱いされたわ。私は母譲りの髪色だし、瞳の色は祖母譲り。顔立ちも母に似ているらしいわ。義母は正妻だった母を恨んでいたし、よく私にも恨み言を言って。だから、その母に似ている私のことも疎んでいた。祖母のことも、父親と再婚する時に最後まで反対されていたから、好ましく思っていなかった。その祖母と同じ瞳の色をした私から見られるのも、父と義母は嫌だったみたい。弟が生まれてすぐに、私は祖母に引き取られたの・・・というか追い出されたから、祖母が引き取るしかなかったのよね」



 アリアナは、自分の膝の上に置いている手を、無意識にギュっと握っていた。


 その手の上に、グレイソンが片手を重ねてくれる。


 アリアナは、強張っていた体の力が少し軽くなった気がした。



「祖母もね、父が再婚するまではいっしょに住んでいたのよ。でも再婚を反対したせいで、祖母はその時に追い出されたの。フォンターナ侯爵家の当主は父だから、父は強引に再婚した。祖母も、祖母を慕う使用人も追い出して。追い出された祖母は、森の中にある小さな家に住んでいたわ。森の管理人も兼ねて」


「森の管理人?」



 この時、初めてグレイソンが疑問を口にした。



「そう、森の管理人。フォンターナ侯爵領の森は隣国へと続いている。隣国との境界は結界で先へ進むことはできないし、逆に隣国側からもこちらには入れない。だけど、もし結界を破る力をもつ者が現れて、自由に出入りできるようになってしまったら・・・」


「隣国だけではなく、他国の者も簡単に侵入できるようになる」



 グレイソンの言葉に、アリアナは一つ頷く。


 この大陸は、隣国以外の他国のほうが脅威なのだ。コフィア王国と隣国は、リュベルト王子が婚姻を結ぶくらいに友好ではあるが、他では好戦的な国も存在する。



「だから、その結界に異常はないか、森全体に異常はないか、それらを管理することがフォンターナ侯爵家として王家から与えられた仕事でもあるの。それと......もうひとつ。森にある泉」


「泉......もしかして......天使族が愛したという?」


「そう。遠い昔、その泉を天使様が大層お気に召したらしくて。言い伝えでは、天使様も人間もいっしょになって水遊びをしていたらしいわ。そして、泉の水を飲めば病が治る、泉の水を傷にかければ傷が治るとも。だからなのか、泉の水を王家に献上していた時代もあるらしいわよ。泉はね、今でも綺麗に透き通ったエメラルドグリーンの色なの」


「アリアナの瞳といっしょだな」



 グレイソンの言葉に、アリアナはその瞳を大きくパチクリとさせて、



「あははっ!それ祖母もよく言ってたわ。”この瞳は天使様からの贈り物だ”って。だからね、その泉を保護し続けることも王家からの仕事なわけ。だけど、父は当主にも関わらず、森の管理をしなかった。父は、泉のことも結界のことも放置したの」


「それだと王命が・・・・・・」


「だからね、見兼ねた祖母が、侯爵家を追い出されたあとに、森の管理人をしてるの。どんなに天使様に愛された泉だとしても、それは過去の栄光。王家からお声が掛からなくなっても、王家からも国民からも忘れられたとしても......王命が取り下げられたわけじゃない。だから、()()()()()()()()()に、祖父の代まで必死に森を守ってきたの。父は、森に興味もないし放置する。だけど、過去の栄光にだけは必死でしがみつく。自分では何もしない、何もできない、自分だけ贅沢ができればいいと思っている(ひと)



 グレイソンは、アリアナの手に重ねていた自分の片手を、今度はしっかりとアリアナの片手と指を絡ませてつなぐ。アリアナは、それを自然と受け入れた。



「うふふっ。なんだか、森の話が長くなってしまったわね。それで、そういう森の家に私は住んでいたわけ。祖母と、祖母の専属侍女と、その侍女のご主人と私の4人で住んでたの。侍女のご主人が料理人で、そのご主人に私は料理を教わったわ。いつものサンドイッチのソースもよ」


「あの美味すぎるソースか」


「そうそう!小さな家だったけど、とても温かい家だったわ。恨めしい目で見てくる人がいない、とても過ごしやすい快適な日々だった。毎日、領地の同年代の子供たちと森を走り回って探検して、遊んで、木登りもして。みんな、私が実は侯爵令嬢なんて知らなかったんじゃないかな。それに、他の貴族との交流はなかったから、家族以外の貴族と会うのは学園に入学してからだし。一応ね、侯爵令嬢としての知識は祖母が全て教えてくれた。普通の貴族だったら、きちんとした家庭教師をつけるんだろうけど、私は全て祖母から教えてもらったわ。そして、生きるための知識を祖母の侍女と料理人から教わった。炊事、洗濯、掃除、私がどんな境遇になったとしても大丈夫なように」


「それでアリアナは料理もできるし、侍女もついていない寮で生活できるのか」


「正解!6歳までは祖母の家で暮らせるけど、7歳からは王立学園に入学することは必須。祖母の家からは通えないから、王都に住まないといけない。一応、侯爵家の体面として王都にタウンハウスはあるけど、そこには住めないと思ったの」


「どうして?」


「あの父と義母が選んだ使用人は信用できないし、3年後には顔も知らない弟が来ることはわかっていたから。弟が生まれた時に、遠くから姿を一度だけ見れただけで、それ以来は見てないの。近くに寄ることさえ許されなかったのよ。だから弟だって、半分血のつながった姉がいることすら知らないかもしれない。そんな姉と暮らすのなんて弟も嫌だろうし、私と弟が同じ屋根の下に住んでいても、待遇がぜんぜん違うことになるのは簡単に想像できたから。それで、寮に入ることにしたの。仮にも侯爵令嬢が入寮を希望したから、学園の先生たちは驚いていたわ。でも私は、入寮したい理由を包み隠さず話した。そのせいで侯爵家がどう思われようと、どうでもよかったから。さすがに先生たちも同情してくださって、もし部屋数が足りなくなったら空けてもらう、という条件で了承してくれた。もちろん、侯爵家の当主である父の許可は必要だったけど、私がタウンハウスではなく寮に入りたいと言ったら、すぐに許可証を書いてくれたわ。だから、私は弟の顔も知らない。初等部の時に、もしかしたら食堂にいたのかもしれないけど、私には顔も分からない。3歳違いだし中等部も高等部も校舎は別だから、もう学園内で会う機会はないでしょうね」



 空を見つめていたアリアナは、ふと、隣のグレイソンへ顔を向ける。グレイソンの薄い青色の瞳は、ユラユラと揺れていた。


 アリアナはそのまま少し目線を下げて、また言葉を続ける。



「それにね、私の学園費用も生活費用も、父ではなく祖母が出してくれてるの」



 グレイソンが、微かに息を呑む気配がした。



「だから、もし祖母が亡くなってしまったら、学園を辞めざるを得ない。祖母には、いつまでも元気に長生きしてほしいけど、現実的に祖母も高齢だわ。祖母がいなくなったら、きっと私は父にとって都合がいい相手に嫁がされると思うの。だから、その前に貴族籍から抜けようと思って。それで、平民として生きていく。卒業まで学園にいることができても、卒業したら貴族籍から抜けるつもり。そのためには、お金は少しでも必要だし、高等部になったら”学生ワーク”をしようと考えているの。寮でいっしょの子たちが教えてくれたのよ、高等部になったら学生ワークができるって。リュバン王のおかげで、実力さえあれば女性でも社会に出て働けるようになったでしょ?平民になっても生きていけるように、職を見つけたいのよ」



 時の賢王リュバンにより、コフィア王国は貴族も平民も関係なしに、実力さえあれば騎士や文官、研究者など、職業問わず可能だ。それは、女性でも同じこと。


 そして”学生ワーク”とは、実力ある若者に早い段階から社会経験を積んでもらおうと、王立学園の高等部から働ける制度だ。希望する学生は、学園が発行した紹介状が必要となる。もちろん、賃金も貰える。そのため、寮に入るような子爵・男爵の下位貴族や平民の学生がすることが多い。ただし、本業は”学生”であるため、本業に支障が出ないようにすることが大前提ではあるが。



「ちなみに......来年のデビュタントは?」


「あははっ、今その質問?そうねぇ、来年はデビュタントだけど、私は欠席するつもり。遅かれ早かれ、貴族ではなくなるんだし。祖母は......きっと、出席してほしいと思ってるだろうけど。だけど、デビュタント用の装飾品まで、祖母に準備してもらうのは申し訳ないわ。エスコートしてくれる人だって、父や弟は論外だし、知っての通り私には婚約者もいないでしょ?1人で入場して笑い者になるくらいなら、はじめから出席しないわよ」



 デビュタントの場合、まだ婚約者がいない者も多いため、家族や親戚の男性がエスコートするのが一般的だ。


 アリアナは冗談のように笑いながら話すが、グレイソンは沈痛な面持ちである。



「もう!グレイソン様が、そんなに悲しそうな顔しないでよ!!暗い話ばかりだったけど、父に対して感謝してる部分もあるんだから!」


「どこに?」



 グレイソンが怪訝な顔で尋ねる。



「ゴホンッ。それはね、私が父に一つも似てないこと!父は、この瞳の色じゃないのよ。最初に言った通り、私の瞳の色は祖母譲り、髪色も顔立ちも母譲りだから、い〜っっっさい!父と似てないの!隣にいても、親子ってわからないんじゃないかしら?まぁ......きっと、父は瞳の色をコンプレックスに感じていたと思うけど。昔は、エメラルドグリーンの瞳を持つ者が当主に選ばれていたらしいけど、必ずしもこの瞳の子供が生まれるわけではないし、時代とともにそんな風習もなくなったみたいだけどね。・・・・・話を戻すけど、父と似てなくて本当によかった〜!って、心から思うってこと!もし父と似ていたら、鏡で自分を見るたびに、自分を殴っているわ!!」



 アリアナは、グレイソンとつないでいないほうの手で、フンッと拳をつくってみせる。



「ぶはっ!そしたら俺は、自分で自分を殴るアリアナを、全力で止めるよ!」


「あはっ!期待してる!だからね、グレイソン様!私は学園生活を楽しい思い出にしたい!グレイソン様のおかげで、今まで以上に楽しい思いをさせてもらってるけど、高等部になってもお話してくれる?」


「当たり前だろ!高等部になっても、()()()だって、俺はアリアナの味方だし!!」




 アリアナは、満面の笑みをグレイソンへと向ける。



 グレイソンとアリアナは、お昼休みが終わり校舎に戻るまでの間、ずっと手をつないだままだった・・・・。







★お昼休み終了の鐘が鳴るまでの会話の続き。


「泉の水って、本当に病気にも怪我にも効くの?」

「本当のところは、どうかしらね?私は、病気やケガが治ったのを目の当たりにしたことはないけど、学園に入学するまでは泉の水を毎日飲んでいたわ。祖母の家で使用する水は、全て泉の水だったから。そういえば......考えてみたら、私って風邪すらかかったことないかも!転んでケガしても、かすり傷だったし?」

「それ、最強すぎない......?」


今まで、自分の生活でいっぱいいっぱいだったため、泉の水の効果について深く考えることがなかったアリアナは、学園で皆勤賞なのでした★




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ