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天使のほほえみ  作者: L
30/72

期末テスト




「へぇ〜。天使族の力を”天使力”。魔族の力を”魔力”というのね」




 私は今、ミレーネ様から借りた本を読んでいる。


 子供向けの天使族についての物語だ。


 内容としては、魔族が地上にいる人間を魔力で襲ってくるのだが、それを天使族が天使力によって人間を救い、人間の王子様と天使族のお姫様が結ばれるという、よくある物語だ。



 だけど、力のことについて、”天使族の力”、”魔族の力”と表現することはあったけど、”天使力”、”魔力”と、明確に力を表現する言葉があるなんて教わることはなかった。


 こんなに簡単なことでさえも、国民が知らないなんていいのだろうか。


 それとも、天使族や魔族について、王国として知られたくないことでもあるのか・・・。


 前世の王太子妃教育のなかでも、天使族や魔族については、王立学園の授業レベル以上のことは習っていない。



「ゔ〜ん」



 今世で目覚めた自分は、きっと天使力によるものだと思うため、いろいろ知りたいのだが、学園の授業には期待できない。


 私も、王立図書館に行って調べてみようかしら?




 コンコンコンッ。




「は〜い!」


「お嬢様、失礼いたします。お茶の準備が整いました」



 そう考えていたら、メアリーが入ってきて、お茶とお菓子のクッキーを用意してくれる。


 私はクッキーを食べるために、読んでいた本をテーブルの端に置いた。




「懐かしい本ですね」



 そう言ったメアリーが、優しい顔で微笑んでいる。



「これね、ミレーネ様から借りた本なの!ミレーネ様は天使族の物語が好きみたいで。メアリーも読んだことあるの?」


「はい。私も、幼い頃は大天使殿にある本を、よく読ませていただきました」




 『大天使殿・・・』



 !!!!!



 そうだった。


 メアリーは、大天使殿があるアンヘル出身だ。


 それなら、天使族についても詳しいかもしれない。


 どうして、そんな大事なことを忘れてしまっていたのだろうか。




 メアリーに、天使族について尋ねようとした時だった。


「そういえば、お嬢様。たしか、期末テストの課題で刺繍をしなければいけなかったのではないですか?」


「!?」




 それも、そうだった。


 7月の中旬から夏休みに入るのだが、その前に学園全体で期末テストが実施される。


 数学や歴史などの学問は筆記試験だが、刺繍のテストは出された課題の刺繍をして提出するのだ。


 今回は、初等部1年生ということもあり、ハンカチに自分の名前と自分の好きな花1輪という、前世の記憶がある私からすると簡単な課題となっている。



「本に夢中で忘れてた!なんの花にしようかな?」



 一番好きな花はダフネだが、あれは初等部1年生では難しい花だ。


 それを刺繍してしまったら、成績は良くなるかもしれないが目立ってしまうし、大人に手伝ってもらったのではないかと、疑われる可能性もある。



 ここは、星形のボリジが妥当だろうか。


 星形ならば、初等部1年生らしい気もする。



「それでは、刺繍箱を置いておきますね。では一旦、失礼いたします」



 メアリーが刺繍箱をテーブルの上に置いてくれて、部屋を退出した。



 私は、お茶を飲み干してから、刺繍箱からハンカチの生地を取り出して、ボリジの青い花を思い浮かべながら針に青い糸を通す。



 『メアリーに、天使族のこと聞きそびれちゃったな・・・』




 そう思いながら、刺繍してしまったせいだろうか。




 集中していたせいで、どのくらい時間がたったのか分からないが、自室の扉が再びノックされた。



「どうぞ〜!」


 再び、メアリーが入室してきた。



「失礼いたします。お嬢様、そろそろ休憩されてはいかがですか・・・って、えっ!?お嬢様!?その、し、し、刺繍は!?」


 メアリーが、驚いた声をあげる。


「えっ!?そんなに下手かな!?」


 前世では、刺繍は得意だったほうではあるのだが、心配になってしまう。


「ち、違います!逆です!素晴らしすぎるのです!」


「えっ!?」


 私は違った意味で、驚きの声をあげる。



 手元のハンカチを見ると、そこには天から舞い降りてきたような青い天使の羽が、ハンカチいっぱいに刺繍されていた。



 『無意識で・・・やってしまったわ・・・・・』



 これは、どう見ても、初等部1年生の腕ではない。


 私は、言い訳を必死で考えた。


「もう!メアリーったら!私なわけないじゃない!これはね・・・そう!リーゼ先生が刺繍してくれたものだよ!」



 リーゼ先生とは、学園に入学するまで家庭教師をしてくれていた先生だ。


 刺繍やマナーを中心に教えてくれていた。



「まぁ!リーゼ先生のでしたか!それは、大変失礼いたしました。では、お嬢様の課題は・・・」


「ぜんぜん思いつかなくて、先生の刺繍をずっと眺めていたの!」


「そ、そうでしたか・・・」



 『メアリー、嘘ついてごめんね』



 メアリーに嘘をつくのは心苦しいが、まさか本当のことを言うわけにもいかず、心の中で謝罪する。




 そして私は、利き手の右手だと本領発揮してしまうため、左手でボリジの花と自分の名前を刺繍して、課題を完成させたのだった。






ーーーーーそして、期末テストも全て無事に終了し、結果発表の日。




 結果発表は、各学年ごとに廊下に掲示される。


 私は、ミレーネ様、スカーレット様、モアナ様といっしょに、結果を見に行った。




 初等部1年生の1位は、もちろんリュドヴィック殿下だ。


 2位は・・・・・。



 『予想通りの結果ね』



 2位は、ダミエレ・シュルーダ様。


 現宰相の孫でもあり、殿下の側近候補だ。


 前世の私は、両親や殿下に認められたいという願いで勉強を頑張ったおかげで2位になり、ダミエレ様は3位だった。


 ダミエレ様は、幼い頃から殿下といっしょに勉学にも励まれているため、今世で2位になるのは当然の結果だろう。




 そして、今世の私はというと・・・・・7位だ。


 前世の記憶がある私は、ハッキリ言うとズルい。


 普通に解答してしまえば、1位になってしまうだろう。


 そんなことをしてしまったら、殿下より成績がよくて目立ってしまう。


 だからといって、わざと成績を悪く見せすぎても、ロバート公爵の家名に恥をかかせてしまう。



 『点数を高すぎず、低すぎず、調整するのって難しかったわ・・・』



 それでも、7位なら妥当だろうか。


 こんなことを考えてしまう自分は、皆は必死に勉強しているのに、なんだかズルをしているようで申し訳ない思いが募ってくる。




「よ、よかった〜。これで、シャーマ兄上にバカにされないで済むぞい〜」


 いつもの大きくて元気な声ではなく、息を吐くように安堵の声をもらしたのはスカーレット様だ。


 

 なんと!私たち4人は、私が7位、ミレーネ様が8位、モアナ様が9位、スカーレット様が10位の結果である。




「シャーマ様に?」


 私がスカーレット様に問いかけると、弱々しい声でスカーレット様が続ける。


「そうなのだ。兄上は2人とも、いつも学年で10位以内には入っていると、シャーマ兄上がわざわざ教えてきたんだぞい〜。ギリギリだけど、よかった〜」




 スカーレット様には、8才年上のフレイム様、3才年上のシャーマ様という、2人のお兄様がいる。


 前世でのグスタフソン兄弟は、父親でもあるグスタフソン侯爵と同じ第二騎士団に所属し、フレイム様は副団長も務められていた。


 今世では、まだフレイム様とお会いしたことはないが、シャーマ様とは同じ初等部のため食堂でお会いしたことはある。


 だいたいは、スカーレット様を揶揄いに来ているのだが。


 スカーレット様自身は、シャーマ様にバカにされていると思っているみたいだけど、私の目から見れば、シャーマ様は可愛い妹に優しくしたいのに、ついつい揶揄ってしまう・・・という感じに見える。


 そして、スカーレット様もシャーマ様の態度に対して、ついムキになって返してしまう・・・みたいな。


 おそらく、ミレーネ様とモアナ様も同じように見えていることだろう。

 

 ミレーネ様は温かい眼差しで、モアナ様は呆れた眼差しで、2人のやり取りを見守っているから。



 私には兄弟がいないため、兄弟に対して抱く感情を詳しくは知らないが、スカーレット様はお兄様たちに”負けたくない!”という気持ちが強いのかな?



 私とミレーネ様、続いてモアナ様も励ましの言葉を掛ける。


「スカーレット様、大丈夫!スカーレット様の頑張りは、シャーマ様だってわかってるよ!」


「うん!スカーレット様、苦手な教科も頑張って勉強していたし!」


「シャーマの、、言うこと、、逆に捉えないと、、ダメ」



「う"ぅ〜。みんな〜、ありがとう!よしっ!!兄上たちに、堂々と報告するぞい!!!」



 スカーレット様が、いつもの調子に戻ってきたようだ。

 

 よかった。よかった。



 

 そして、4人で教室へと戻ってきた。



「そういえば!クリスティナ様の刺繍、玄関に展示されるんだっけ!?」


「うん!そうみたい!なんだか恥ずかしいよね・・・」



 そうなのだ。


 全体を評価した成績とは別に、初等部1年生〜6年生の各学年、刺繍だけの成績上位10位以内が、初等部棟の広い広い玄関に展示されるのだ。


 私が左手で刺繍したハンカチが、10位以内に入ってしまったのである。


 1位ではなかっただけ、まだよかった・・・・・。




 ミレーネ様が、小動物のような可愛らしい笑顔で話しかけてくる。


「あの青いお花、星形でカワイイよね!」


「ボリジ、、だっけ?すごく、、上手」


「いいな〜!クリスティナ様!刺繍が上手くてうらましいぞい!」


「スカーレット、、雑だから、、刺繍、、ヘタ」


「うぐっ!モアナはそこそこ上手いから、言い返せないぞい!」


「夏休みの、、宿題でも、、刺繍、、ある」


「うぐぐっ!どうしたものか!あぁ!兄上にバカにされるぞい〜!クリスティナ様!ミレーネ様!助けてほしいぞい〜!!」



「ふふふっ!それなら夏休み中、みんなで集まって宿題の刺繍しない!?」



「いいの!?それは大変助かるぞい!父上に聞いてみる!!」


「わたしも、、行く、、スカーレットだけ、、ズルい」


「ミレーネ様は、いつ領地に帰る予定なの?」


「あっ......わたしは、8月に入ってすぐ帰る予定なの。7月中であれば......わたしも参加したいな」


「それなら、、7月中に、、しよう」


「うん!うん!ミレーネ様もいっしょのほうが楽しいぞい!!」


「みんな......ありがとう......お友達と集まるの初めてだから、とっても嬉しい!」


「私も!初めてだから楽しみ!それじゃ、7月中に集まろう!私も、お父様とお母様に聞いてみるね!」




 こうして私たち4人は、夏休みの宿題でもある刺繍をいっしょにする約束をした。



 どんな刺繍にするか、それぞれが考えてくることにして、夏休みへと突入したのだった・・・。






ーーーーー初めて夏休み中に、友達と集まれることになり、心躍らせるクリスティナ。


 すっかり、自分の利き手ではない左手で刺繍していたことを、忘れていたのである・・・・・。






お友達4人で集まれることになって、よかったですね!(^^)!

クリスティナの邸宅は王都の隣、スカーレットとモアナも王都に邸宅があるので、ミレーネの領地だけが王都より遠いところにあります。

ミレーネは、学園に通学するため父親といっしょに王都にあるタウンハウスに住んでいますが、長期休暇のときは母親や妹が待つ北の領地に帰る予定です。


それでも!「4人いっしょのほうが楽しい!」と、みんなに言ってもらえて、ミレーネは嬉しさのあまり涙目になりながら喜んだそうです(#^^#)

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