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天使のほほえみ  作者: L
29/72

”素直”な訓練

ep.27「課外授業」で、”ロラ”の名前が途中から”ロナ”になってしまっていました。

正しくは”ロラ”です。

間違いだらけで、すみません・・・((+_+))

それでも、負けずに書いていきますので、よろしくお願いします!!


 孤児院の庭で行われた、お父様とカーティスによる剣術試合から1週間後の日曜日。



 今日は、公爵邸の隣にある演習場で領民向けの訓練が開始される日である。




 私は、メアリーに朝早く叩き起こしてもらうように頼み込んだ。


 そして、メアリーに容赦なく叩き起こされ、顔を洗い身支度を整える。演習場は砂が舞って汚れやすいからと、いつも孤児院へ着ていく簡素なワンピースにした。




 メアリーを伴い演習場へと向かう。


 早朝の空気は、とても清々しくて、私は思いっきり深呼吸した。



 『孤児院の皆も、ちゃんと起きれたかな?』




 歩きながら、1週間前の夜のことを思い返す。



 お母様は夕食の席にも現れなくて、お父様と夕食を食べたあと、お母様のもとへお見舞いに行った。


 部屋をノックすると、すぐに返事があり、扉をソーっとあけ顔を少しだけ出して、


「お母様?」


 と、室内の様子を伺う。




 お母様はベッドの上で起き上がり、果物を食べていたようだ。


 顔色は少し悪いように見えるが、起き上がって食べれていることに、私は少しホッとした。



「ティナ。お見舞いに来てくれたの?うつるような病気ではないから、入ってきて大丈夫よ」

「うん!」


 お母様のもとへタタタッと駆け寄る。



「お母様、起きていて大丈夫なの?」


 そう問いかけると、お母様はニコッと深い笑みを浮べた。


「大丈夫よ。もう少し安静にしていれば、良くなるわ。ティナ、来てくれてありがとう。ティナの顔を見たら、なんだか元気になってきたわ」

「えへへっ。私もお母様の顔が見てれ嬉しい!でも、ムリだけはしないでね」


 そう言いながら、お母様の背中をさすった。


「はぁ〜。ティナに背中をさすってもらうと、安心するわね。そういえば、今日はグレイソンと訪問してきたんだって?」


「うん!お父様とカーティスが剣術の試合をしてくれて、それはそれは凄かったの!」


「まぁ!どうだったか、聞かせてくれる?」


「でも・・・お母様、体調が優れないのに、ジャマにならない?」


「大丈夫よ。私が、ティナの声を聞きたいの」


「うん!」



 そして私は、ベッドサイドにある椅子に座り、2人の剣術試合がどれほど凄かったのか、身振り手振りしながら説明する。


 お母様は、時折「ふふふっ」と笑いながら、私の話を聞いてくれていた。




「お父様もカーティスも、本当にカッコよかったの!!」


「ふふっ。ティナは初めて、剣術の試合を見れてよかったわね。グレイソンもリュベルト陛下も、学生の時はヤンチャでね。あら?今でもヤンチャかしら?ふふふっ。学園の剣術大会では、2人の決勝を見ようと、女子も男子も全校生徒が集まって、観客席はいつも満席だったわ。観客の熱気も凄くて、目をキラキラさせる女子生徒も多かったけど、女子生徒の黄色い声よりも、拳を突き上げた男子生徒の雄叫びが凄まじかったわ!あの2人は、女子生徒より男子生徒に人気があったのよ」




 『ーーーーーうおぉぉぉぉぉ〜!!!』


 お、雄叫び・・・それを想像するだけで、なんとも迫力ある光景だろうか。




 そう言って笑うお母様の顔も、お父様と同じように懐かしいものを思い出すような、なんていうか母性あふれる優しい顔をしていた。



 やっぱり、カーティスからも聞いていたとおり、お父様と陛下は学生の憧れの的だったのだと、お母様からの話を聞いて改めて思ったのだった。





「お嬢様、こちらが演習場の入口でございます」


 そうこうしているうちに、演習場の建物に到着した。


 メアリーに促され、演習場の中へ足を運ぶ。


 実は、演習場の中へ入るのは前世も含めて初めてのことだ。


 ドキドキしながら、2階に続く階段を上がる。



「こちらから外へ出るようです。2階席で見学されますようにと、旦那様より仰せつかっております」



 そう言ったメアリーが扉をあけてくれて、外へと出る。


 そこは、広いバルコニーのようになっており、眼下に広がる演習場を全体的に見渡せられるようだ。


 おそらく、私兵団の訓練の際は、お父様や指導役の者がここから指示を出したりしているのだろう。


 今日は、領民向けの訓練のため、全員が眼下の演習場にいる。



 ベンチがいくつかあり、一番前のベンチに私が座り、メアリーが後ろに控えた。



 そして、眼下の演習場を観察するように目を向ける。


 訓練を受けるために集まった領民は、10才~15才くらいの少年が多いように見える。数としては10名ほどだろうか。


 この1週間の間に、領地の学校や食堂などに貼り紙を掲示したりして、領民向けの訓練のことを宣伝していた。初日にしては、まずまずの集まりではないだろうか。


 お父様やカーティスなどの教官役は、私兵団の隊服を着た者が5名ほどいるようだ。




「あぁー!疲れたー!」

「もうダメですー!」


 その時、聞き慣れた声がしてきた。


 声がしたほうへ顔を向けると、ザック、ザイ、ダイの剣術大好き3人組が、仰向けになって倒れているではないか。しかも大の字なって、ゼーハーゼーハーしている。




「あはは!君たち、全力疾走してきただろう?ほら、まずは水を飲みなさい」


 お父様が3人に声を掛けて、水筒をわたす。


「あ、ありがとうございます」


 3人とも、起き上がって水筒を受け取り、グビグビ飲んでいる。



「「「あぁ!生き返るー!」」」



「いいかい、君たち。最初から全力疾走で走ったら、体力がもたないのは当たり前だ。体力がもたなければ、訓練することも、ましてや本当の戦闘の時だって使い物にならない。一定のペースで走って、自分の体力を知ることも訓練のひとつだよ。体力は、だんだんと増えていくものだからね。増えてきたら、走るペースも少しずつ速くしていくんだよ」



「オレ、競争だ!って言って、スタートから全力で走っちゃった・・・」

「そしたら、途中から疲れきってしまって・・・」

「僕も、次から気をつけます・・・」


「そうそう。そうやって、知っていけばいいんだよ。さぁ!みんな集まって!訓練について説明するよ!」




 そして、ロバート公爵領私兵団による、領民向けの訓練が初めて開始されたのだった。




 準備運動のあと、訓練用の木刀が準備され、木刀の構え方や基礎体力向上の訓練をしている。



 どうやら、ザックが最年少のようだが、お兄さんたちに負けないほど目を輝かせて訓練に挑んでいる。双子のザイもダイも、初めて木刀を構えられて楽しそうだ。孤児院では、木の枝だったから。




「ふふっ。みんな、本当に素直だよね」


 そんな彼らを見ていると、正直な感想を口にしていた。



「あら、お嬢様!”素直”の意味が、お分かりになられたのですね!」


「あっ......そういえば......そうかも?」



 ハッキリと説明はできないけれど、孤児院の彼らも、訓練を受けにきている他の少年たちも、素直で頑張っているな・・・と、思う。



 自分たちの夢や将来のために、純粋に訓練を受けたいと、素直に訓練を受けたいと思った彼ら。


 「したい!」と、自分の気持ちを正直に表現している彼ら。

 

 だからと言って、誰かに迷惑を掛けているわけでもなくて。


 きっと、早朝の訓練のため、家族の協力はあったかもしれない。


 それでも、それが迷惑だなんて思う家族がいるだろうか。


 孤児院の院長先生や、ここに来ていない子供たちだって、快く送り出したことだろう。


 彼らの頑張りが、努力が、いつか実を結ぶことを願っているはずだ。




 そんな素直な彼らを、私も素直に応援したいと思うし、私にできることがあれば手助けしたいとも思う。


 素直に表現することは、本人のためだけではなく、もしかしたら周囲にもいい影響を与えるのではないだろうか。


 私自身も、気持ちを少しずつだが素直に表現できるようになってきたのではないかと思えるから、両親や学園の友達も前世とは違うのかもしれない。




「ねぇ、メアリー。例えば、自分がここに行きたい!って友達を誘ったとして、ここに行きたいと言うのは”素直”な表現だけど、相手の予定とかを聞かないで勝手に日時とかを決めちゃうのは”我儘”ってことで合ってるかな?」


「そうですね。それは、わかりやすい例えかと思います。自分の気持ちを”素直”に表現することは素晴らしいことですが、相手の気持ちを考えずに行動することは”我儘”になってしまいます。ただ、自分の気持ちを”素直”にと言いましても、相手を傷つけるようなことは”意地悪”になってしまいますから。しかしながら、お嬢様なら”大丈夫”だと私は信じております」



「ありがとう!メアリー!私、我儘で意地悪な人間にはならないように気をつけるね!」


「ふふふ。はい、お嬢様なら大丈夫です」






 今世の課題となっていた”素直”と”我儘”の違い。




 なんとなくだけど、訓練に参加する彼らのおかげで、少しずつ分かってきたような気がしたのだった・・・。




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