初めての孤児院③
孤児院から公爵邸へと帰る馬車の中。
私は、つい先ほどの帰り際での出来事を思い返していた。
私たちが孤児院から帰る時、子供たちと院長先生が外まで見送りに出てきてくれた。
「おじょーたま、またきてくれりゅ?」
そう声を掛けてきてくれたのは、追いかけっこの時にいっしょに手を繋いだ年少組のチロとミルルだ。
「また、すぐに来るからね!また、いっしょに遊んでね!」
私は、少し屈んで幼い2人の目線に合わせる。近くでチロとミルルを見ると、2人とも目に涙を浮かべているではないか。
「大丈夫。大丈夫よ。また、すぐに会えるからね」
先ほどより、ゆっくりとした口調を意識して、両手でチロとミルルの頭を撫でながら伝える。
すると、2人は泣き出しそうだった顔をパァ〜っと明るくさせて、嬉しそうに笑ってくれた。
私が誰かの頭を撫でるという行為は、前世も含めて初めてのことだ。
撫でられると嬉しい気持ちになることは知っている。
私も、ずっと望んでいたことだから。
だけど、頭を撫でる側も、こんなに嬉しい気持ちになるなんて知らなかった。
いや、嬉しいより”愛おしい”だろうか。
この感情を”愛おしい”と呼ぶのだと、私は初めて知った。
「また来てくれよな!」
「こんどは、畑の野菜もいっしょにとろうね!」
「待ってるからなー!」
馬車が出発しても、皆が手を振りながら、そう叫んでくれる。
「また、すぐに行くからねー!!」
私も、馬車の窓から身を乗り出し、皆の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。
ーーーーー私は、孤児院に行くまで、正直怖かった。
私のことを受け入れてもらえるだろうか、と。
”子供に何ができるのだ”
”どうせ贅沢な暮らしをしているのだろう”
そう思われるのではないかと怖かった。
しかし、それらは全て杞憂だったのだ。
様々な境遇により孤児院で過ごす彼らは、ただただ純粋で素直で、将来の夢を持ち、未来を明るいものにしようと自らの手で努力している。
ーーーーーやはり、私は愚かな人間だ。
前世では認めてもらえなかったからと、あの時と同じように考えては、彼らに対して失礼すぎる。
そのように考えてしまっては、彼らが前世で私を貶めた人たちと同じだ、と言っているようなものではないか。
私から相手へ心を開くこと、私から相手を信頼すること。学園でミレーネ様たちのおかげで学んでいるではないか。
『ーーー前世からの呪縛に縛られてはいけない』
私は顔を上げる。
いつの間にか、顔を俯かせていたらしい。
私は、向かい側の席に座っているお母様を見る。
なんだろう、目に力が入ってきたような気がした。
「あらっ。何かに気づけたような顔ね!」
「はい!今回の訪問のおかげで、初めて気づいたことがありました!」
「ふふっ。いい刺激になったようね。ねぇ、ティナ。何か感じたことがあったら教えてね。大人の私が、気づかないことや思いつかないことは、きっとあるわ。子供目線の意見は貴重だから、ぜひ教えてね」
「わかりました!何度か訪問を重ねて、考えをまとめたらお話します!」
「ありがとう、よろしくね。ふふっ。なんだか少し、お姉さんになったわね」
そうして、クリスティナたちを乗せた馬車は、公爵邸へと帰宅したのであった。
次回は、まだまだ影の薄いリュドヴィック目線(今世版)をお届けする予定です★




