友達
学園の食堂で、ミレーネ様、スカーレット様、モアナ様、初めて4人で昼食を食べた日の夜。
「「「いただきます」」」
公爵邸の夕食には、家族3人が揃っていた。
「ティナ、入学して2週間たったけど、学園はどうだい?」
「うん!とっても楽しいよ!ミレーネ様とね、今度おすすめの本を貸し合う約束をしたの!」
「ティナは、すっかりミレーネ様と仲良しね。お友達が出来て安心だわ〜」
「ミレーネ嬢とは、ワグナー伯爵の娘さんだったかな?」
「そうだよ!本が大好きなの!」
「ワグナー伯爵も本が大好きで有名だからね〜。ワグナー伯爵の領地にある邸宅には、立派な図書室があるんだとか。俺も何度かワグナー伯爵と話したことがあるけど、とても博識で話してて楽しいし、物腰も柔らかくて謙虚なお方だよ。ティナは、いい友達ができてよかったね」
『と、友達.....』
前世で”友達”と呼べる人がいなかった私にとって、新鮮な響きだ。
なんだか恥ずかしい。
「えへへ。あっ、あとね、今日は昼食をスカーレット・グスタフソン様と、モアナ・ウェバー様と、ミレーネ様の4人で食べたの!スカーレット様もモアナ様も同じクラスの子なの!」
「グスタフソンって、もしかして第二騎士団長のグスタフソン侯爵の!?しかも、ウェバーって、あのウェバー伯爵の!?」
お父様が、身を乗り出して聞いてくる。
「そうだよ!とっても個性的な2人で、おもしろいの!4人で、いろいろ話しながら食べるのは楽しかったな〜」
「あははっ!」
「ふふふっ!」
なぜか、お父様とお母様が笑い出す。
「ティナに、いい友達が増えて安心したよ!」
「これで、ティナの学園生活は楽しいこと間違いナシね!」
よく分からないが、両親が喜んでるから、まぁいいか。
「ティナがもう少し大きくなったら、ワグナー伯爵の領地にも行ってみたらいいよ。広大な土地で作られている乳製品は美味しいと評判だからね。機会があれば、伯爵家自慢の図書室も見せてもらえるかもしれないし」
そうなのだ。ミレーネ様のワグナー伯爵領は、コフィア王国の北側に位置しており、山に囲まれた広大な土地で酪農を主としている。たくさんの牛を飼育し、ミルクやチーズ、ヨーグルトなどが特産品である。
邸宅に立派な図書室を完備しているくらい本好きの伯爵は、その知識から様々な手法で品質改良を研究していることにも有名だ。
現在は、ミレーネ様が学園に通うため、王都にあるタウンハウスにワグナー伯爵もいっしょに住んでいる。王都にいるあいだは、王宮の王室書庫管理室に勤めており、古い歴史書や文献の翻訳、複製などに携わっている。ワグナー伯爵は綺麗な文字を書くことでも定評があるのだ。
王室書庫管理室に勤めているのも、ミレーネ様いわく「品質改良の研究費を稼ぐため」らしい。
その日は、お友達のお家に遊びに行ける日を夢みて、私は眠りについた。
ーーーーークリスティナが眠りについた同時刻、公爵邸にある夫婦の寝室では、父グレイソンと母アリアナの会話が繰り広げられていた。
「いや〜、俺らの娘は、人を見る目があるらしいな」
「ふふふっ。まさか仲良くなったのが、あのグスタフソン家とウェバー家のお嬢様方とは」
「あぁ。グスタフソン侯爵は、剣技の腕だけではなく人望も厚いお方だ。リュベルト陛下が、珍しく信頼している人物でもあるからね」
「そうね。それに、グスタフソン侯爵は早くに侯爵夫人を亡くされてしまったけど、後妻を娶らずにお子様3人を育てていらっしゃるわ」
「そうだな。本当に子煩悩なお方だよ。3人とも、将来有望な騎士になるだろうね」
「私たちはグスタフソン侯爵と10才離れていたから、高等部の時の侯爵しか知らないけど、あの時の剣術の試合は素晴らしくて、初等部の私でも興奮してしまったわ」
「わかる。わかる。俺も陛下も刺激されて、剣術の稽古を増やしたもん」
「それにしても!ウェバー伯爵って、ふふふっ!」
「笑いすぎたよ〜。俺も久しぶりに、ウェバー伯爵に追いかけ回された学生時代を思い出したよ」
「1才年上のウェバー伯爵が、生徒会に顔を出さない貴方たちを追いかけてきたわね。初等部から高等部まで、ずっと。そういえば、あなたとリュベルト陛下のことを”悪友”って呼んだのも、ウェバー伯爵だったわよね」
『ーーーおまえらは、本当に”悪友”だな』
「そうそう!でも”悪友”って呼び方はイヤじゃなかったな。本当にそうだと思ったし。生徒会のメンバーだって、初等部からずっと変わらないんだもん。俺らも、王家と公爵家だからって選ばれてただけでさ。でも、ウェバー伯爵も今では立派な財務官だ。ウェバー伯爵には嘘の報告なんて通用しない、あの性格には財務官の職業がピッタリだよね。そして、決して嘘をつかない人間のことは裏切らない、筋の通ったお方だ。将来の財務大臣の筆頭候補だよ」
「お2人のお嬢様方は少し癖が強いって聞いたことがあるけど、ティナとは相性がいいみたいね」
「その年で少し癖が強いって・・・あははっ!そのほうが将来楽しみだよ!」
「そうね!あのお2人のお嬢様なんだもん。いい子に決まっているわ!」
「ティナの学園生活の話を聞くのが、ますます楽しみになったな〜。ワグナー伯爵のミレーネ嬢も心配ないし。どれだけ楽しい学園生活を送ってくれるかな・・・」
夫婦2人、目を合わせて笑い合う。
「俺ら」
「私たち」
「「みたいにね!!」」
こうして、ロバート公爵邸の夜は更けていったーーーーー。




