前世の炎と紫
私は食べながら、前世でのスカーレット様とモアナ様を思い浮かべる。
”スカーレット・グスタフソン侯爵令嬢”
スカーレットの名の如く、髪は黄赤色で炎の色。目は切れ長で黒い色をしている。
グスタフソン侯爵家は代々、騎士の家系としてコフィア王国で1,2位を争うほどに名を馳せている。
スカーレット様のお父様であるグスタフソン侯爵は、第二騎士団の騎士団長だ。お兄様も2人いて、2人とも騎士団に所属していたはず。
そのような家庭環境もあり、スカーレット様も幼い頃から剣術の鍛錬を日課としており、前世では女性騎士を目指していたと思う。高等部では剣術を選択して、男子生徒を打ち負かしていた。ストレートで長い炎のような髪をポニーテールに高く結い上げて剣を持つ立ち姿は、女の私から見ても「ホ〜」っと、感嘆の溜息が出るくらい凛々しかった。
言葉のチョイスの特徴も、騎士であるグスタフソン侯爵やお兄様たちの影響なのだろう。
”モアナ・ウェバー伯爵令嬢”
髪も目もランベンダー色をしていて、ややタレ目で常に眠たそうな目をしているのが特徴的だ。
高等部の年齢になっても”美しい”というより”可愛らしい”という表現が似合う容姿だった。
容姿だけみると、ミレーネ様のようにおとなしそうな印象を受けるが、スカーレット様へのツッコミをしている様子からも、まったり、ゆっくりな口調であるだけで、ハッキリと思ったことは言うタイプだ。
髪は綿雲のようにフワフワとしていて、その可愛らしい容姿から前世では男子生徒に人気があり、何度か男子生徒がモアナ様へ告白する場面に遭遇したことがある。
「好きです!」
気持ちを伝えた男子生徒に対して、
「へぇ〜、、あなた、、誰?、、私の何を知っていて、、好きになったと?」
と、いつも返していた。
モアナ様のお父様であるウェバー伯爵は、王宮勤めで財務官をしている。
スカーレット様とモアナ様は、2人とも王都に邸宅があり、隣同士なのだ。幼馴染というやつである。
なんで私が知っているかというと、前世では貴族の付き合いがなかった私でも、王太子妃教育の一環として貴族の交流関係については熟知していたからだ。
それに2人は、学園で虐げられてる生徒を助けていた側だ。見ていただけの私とは大違いである。
あれは、高等部での出来事だった。
中庭で虐げている場面に遭遇した時、スカーレット様が声を上げた。
「弱い者イジメはヤメロ!!」
すると、虐げていた生徒たちがスカーレット様を睨みつけている。
「んっ?なんだ、その目は?そうか!私と1対1で勝負したいのだな!?よいぞ!剣と剣で語り合おうではないか!!」
スカーレット様、なぜ剣になる・・・。小細工などせず真っ向勝負で正義感が強い。
「まぁ、、、虐げることにしか、、脳みそが働かない、、スッカラカンの貴族が、、まだいたのね〜」
モアナ様、まったり、ゆっくりと辛辣すぎ・・・。もう、毒舌で素敵すぎます。
前世での初等部では、殿下と仲良くなることに心血を注いでいた私は、他の同級生に自分から話しかけることはなかった。
それでも初等部や中等部の時は、少なからず話しかけてきてくれた人はいた。ただそれも”公爵家”や”殿下の婚約者”という肩書きにあやかりたい人だけだったのだと、今なら分かる。
前世でも、2人と同じクラスの時もあったが話したことはなかったと思う。
それでも私は、この2人に好感を抱いていた。2人の関係性も、2人の堂々とした姿も、うらやましかったのかもしれない。
まさか今世で、こんなに早い段階で話せることになるとは。
これも、殿下とは離れた席に座ったおかげだ。
そして、ミレーネ様がいてくれたから。
今世では、スカーレット様とモアナ様、2人との関係性も大切にしていきたいと心に誓う。




