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75 どうしてくれる



 三人の勇者達が魔王城から街へ帰って数日後……



今度は五人の勇者を名乗る男性達が魔王城にやってきた。


最初の勇者達が来たときと同じように出迎えたのだけれど……応接室に入るなりソファーに座り


「ここまで来るのは大変だったぜ」


とお疲れのご様子。


キッチンでお茶をいれて応接室の近くまで戻ると彼らの話し声が聞こえてきた。


「それにしてもあの三人、役に立たなかったな。先を譲ってやったのに結局ここまでくるはめになっちまった。酒代の無駄だぜ」


やっぱりそういうことだったのか……でもきっとあの三人の若者は利用されたことにも気付いていないのだろうなぁ……


「まぁ、でも魔王の情報以外はいろいろと聞けてよかったじゃないか」


どんなことを話したのかな……


「とりあえず、ケガもなく生きて帰れるとわかったしな」


殺すつもりなんてないけれど……そんなに怖がっていたのか……


「それに食事もうまいらしい」


あ、ちゃんと褒めてくれたんだ、照れるなぁ


「聞いた話だとあいつらはあの女の子の魔族としか会っていないらしいな」


女の子って……


「こんなにでかい城に一人なわけはないよな」


今のところメイド的な存在は私一人……


「俺達は魔王に会えれば……まぁ、チラッと見るだけでもいいからな」


それだけで賞金がもらえるのか……


「もし会えないようなら会えるまで何日でも居座ればいいんだよ。あいつらも言っていたが確かにここは居心地がいいじゃないか」


え……


「その間にたくさんある魔道具をいくつかいただいていこうぜ」


は!?


「そうだな、賞金がもらえなくてもそれを売って金にすれば無駄足にはならねぇか」


それはもう泥棒……

思わずため息が出る。


最初に魔王城にきた三人の話をルウ達にしたとき、勝手なことをしたから怒られるかも、と思っていたけれどそんなことはなかった。


意外なことに、これからは城にきた人達の対応はハルに任せるよ、と言ってくれた。


せっかくルウ達が勇者の対応を私に任せてくれたのにもう相談しなければならなくなるかも……


コン コン コン


お茶とお菓子を出すと手をつけながら話続ける男性達。


「なぁ、夕食のときは酒を出してくれよ」


それから、と続けて


「魔王に会わせてくれ、今すぐに」


……この人達は……

自分の国の王様にもそんなに気軽に会えると思っているのか……


「魔王様は……私もどこにいるのかわかりません」


本当に……


「なら魔王のことを聞かせてくれよ。何でもいいんだ、どんな外見か、好きなものや女の好みとかいろいろあるだろう?」


と、言われても……


「申し訳ありませんが……」


全然知らない


「チッ、下っぱに聞いても無駄か」


まぁ……はい。


「……では、夕食までゆっくりお過ごしください」


何日間かいるつもりなのかなぁ……

部屋を出てまたため息……


「魔道具は持てるだけ持って帰るぞ」


「あぁ、他にも金目の物があればいただいていこう。それから……」


と悪巧みが聞こえてくる。


夕食の時間まで、彼らはコソコソと魔王城の中を歩き回って持って帰る物を物色している様子。


自由に見て回っていいと言ったのにコソコソしてしまうのは悪いことをしているという自覚があるからか……


今夜、ルウに話してみようかな……


夕食の席では食事よりもお酒をたくさん飲んで酔っぱらい、食器もたくさん割られてしまった。


「そんなの魔力を使って片付ければいいじゃねぇか」


割れたお皿を片付けようとする私に笑いながらそう言う男達。


「ちょうどいい余興だ、見せてくれよ魔力をよ」


そんなことを言われても魔力なんてない……


「ハル、大丈夫だよ」


私の隣にルウが姿を現し……と言っても私にしか見えていないみたいだけれど……


私の手を取り割れた食器の破片をまとめて浮かせ片付けてくれた。


「へぇ、便利なもんだなぁ。なぁ、あんた俺と結婚しないか」


一人がそう言うとギャハハハハッと他の男達が笑い出す。


「お、お前っ、いくら便利だからってそりゃないだろうっ」


笑いすぎて苦しそうにそう言う男の言葉にまた笑う。


「だって魔道具無しでいろいろできるんだぞ、家にいたら便利だろうが」


人のことを便利って……失礼な人達だ。


「ハル、ハルはもう部屋に戻って大丈夫だよ。後は僕に任せて」


先に寝ていていいからね、そう囁いて優しく私の髪に触れ微笑むルウ……のこめかみに青筋が立っているように見えるのは気のせいか……


任せて大丈夫なのかな……


「なぁおい、魔族同士の夜のアレは人間と同じなのかなぁ? どんな風にするのか教えてくれよぉ」


よし、ルウに任せよう。


「それでは皆様、ごゆっくりお過ごしください」


男達の下品な笑い声を背に、私は部屋を後にした。


魔王城に勇者や勇者らしき人達がきたときは私は魔王城に泊まることにしている。


……ルウも一緒に……同じ部屋で。


部屋はたくさんあるけれど、やっぱりルウは私と同じ部屋がいいと言ってくれる。


森の家とは違って広い部屋に大きなベッドがあるけれどくっついて眠るからあまり広い意味がないような……


とにかく素敵な部屋だ。


ベッドに入り少しするとルウも部屋に戻ってきた。


「ルウ、大丈夫だった? 任せてしまってごめんね」


ありがとうと言うと、大丈夫だよと言いルウもベッドに入り私を抱きしめる。


最近はそうやってすぐに眠ることが多かったけれど……


「……ハル……」


耳元でそう囁き首筋に何度も口付けをする。


「ル……ルウ? どうし」


唇も塞がれ寝間着もたくしあげられ……


「ヤッ……ルウッ……恥ずかしいよ……」


琥珀色の潤んだ瞳と目が合う……一瞬……悲しそうにも怒っているようにも見えた気がしたけれど……


「アッ……ル……ンッ……」


ルウが胸に唇を這わせ……強く吸い付いたり……そうしながら私の太ももを指でなぞり……


「……ハル……ハル……」


耳元で囁くルウの声が……指が……下腹部を刺激する……

その強すぎる刺激に涙が溢れる……


ルウも……泣きそうな顔をしている……


「ごめん……ハル……」


ルウ……


「どうしたの……?」


ルウの頬を両手で包みそう聞くと……


「あいつらが……」


あいつらって……あの自称勇者の五人の酔っ払い?


「ハルに……僕のハルに僕よりも先に結婚したいって……いった……」


それに腹が立ったと…………か……可愛っ…………

胸が……苦しい…………


あんな酔っ払いの言葉に……


思わず可愛い、と言ってしまいそうになるけれど、それはそれでムッとさせてしまいそうだからその言葉は飲み込む。


「ルウ……大好きだよ、ルウが一番……」


うん、と頷き


「ごめん、こんな子供みたいに……」


謝ることなんてない


「最初から失礼な態度で気に入らなかった……」


ん? 最初から……? いつから近くについていてくれたのかな……


「私は大丈夫だよ、ありがとう……」


自分のことのように苛立ち怒ってくれるルウが愛おしくて……そういう気持ちを持っているルウはやっぱり優しいと思う。


ルウの頭をそっと抱きしめてサラサラの髪を撫でる。


一応、職場ではどうかと思っていたけれど……

ルウが安心するなら……それに私も私は今……すぐにでも……


そう覚悟を決めて思いきってルウに……


「ルウ……あ、あのね、私…………」


ルウ?


「…………寝ている…………」


さっきまであんなに激しく求めてくれていたのに……安心してくれたのかな。


私の胸に抱かれてスヤスヤと眠るルウ。


まだ……ときどきうなされることがあるけれど、今夜は大丈夫そうかな……


私もルウがいると安心するんだよ……

まだまだ伝え足りないかな……


それはそうと…………



私の火照った身体……どうしてくれる……


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