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73 至れり尽くせり



 ミリアのお店で買い物をすると必ず贈り物用に包んでくれる……



商品を包みながら、森の中の様子が変わってくるだろうから気を付けてねぇ、と緊迫感の無い感じだけれど本当に心配してそう言ってくれた。


最後にララのお店のドアを開けると


「ハルッ」


とララに抱きつかれた……パンのいい匂い……

話しはファル達からきいたよ、と言うと


「気を付けなければならないのは森の中だけではないわ、街にもこれまで以上にいろいろなところから人が集まり初めているから……」


なんか活気があると思ったら……

そういえばいつもより街を歩く人が多かったような……


「街を歩いていると声をかけられたり強引に誘われたりもするから気を付けるのよ」


……けっこう歩いたけれど何もなかったな……


「う……うんっ、気を付けるよ」


それにしても……いろいろなところから人が集まってくると街の治安も変わってくるのか……


それだけ魅力的な額なのか……賞金……


パンをたくさん買い込んで、ララも気をつけてね、と言って手を振りお店を後にした。


それから……


結局ルウへの贈り物だけ用意ができないまま家へ帰ってきてしまった。


みんなにそれぞれ選んだものを渡すと、ロゼッタは眉間にシワを寄せ耳まで真っ赤にさせて……喜んでいるし、ミアは目を輝かせて結んでとせがんでくる。


アレスは早速使わせてもらうよ、と言いお礼に本を読んであげるから今夜部屋においで、と招待してくれた……また今度ね……


レトは欲しかったオモチャを買ってもらった子供のように目を輝かせて計りを抱きしめて大切にする、と言ってくれた……可愛い……


ライオスは……これを大きくしてやるから部屋に来いよ、とかなんとか……大きくしても私は入る気がないけど……


グレンは少し微笑んで静かにありがとう、と一言……

喜んでくれた……でいいんだよね……


ルウには……寝る前に謝った……


「ごめんね、いろいろと考えたんだけれど思い付かなくて……聞いてもいいかな」


結局欲しいものを聞くことにした。


「欲しいもの……何でもいいの?」


お、何かある感じ。

コクリと頷くと、それじゃぁ……と


「ハルを……ハルの全部が欲しい」


真っ直ぐに私を見つめてそういうルウ……

真剣な眼差しと緊張も伝わってきて本気なのだとわかる……


「ルウ……それって……」


そういうこと……だよね……


「うん……ハル、ごめんね」


どうして謝るの……


「ハルを離したくない……嫌がっても離してあげられない……誰にも取られたくないんだ」


ルウ……


「無理矢理はしたくないのに……傷つけたくはないのにいつかそうしてしまいそうで怖い……」


大丈夫なのに……


「ルウ、私ね、ルウのことが……その……」


いざ言うとなると恥ずかしいっ!

でもちゃんと言っておかないとっ……


「ルウが大切で大好きなのっ……だから」


無理矢理されるとかそういうことはないと思うし、そう感じることもない、と伝えようとしたのに……


唇をふさがれた……


「ハル、ハル……嬉しい……」


と言葉をはさみながらしていた口付けが深いものに変わっていき…………


ちょっと待って…………

今日……今夜……今から……!?

心の準備がっ!


「ル……ルウ……ンッ……ちょっ……アッ……」


ハル、ハル、可愛い……僕の……と首筋にも唇を這わせ……

待って待ってっ!


「ルウッ……」


両手でルウの頬を包むとようやくこちらを見るルウ……

その顔の色気に当てられながらどうにか理性を保つ。


「ルウ……私……こういうの慣れてなくて……だからあの……いきなりは……」


そういうとルウが目を見開き……それから私を抱きしめて


「ハル、可愛い……うん、大切にする。なるべくハルのペースに合わせる」


……なるべくっていうところに自信の無さが……

まぁ……私がルウを押し倒す可能性も…………


そんなこんなで今夜は大人しく、という訳にもいかず……


唇や頬やいろいろなところにキスをされながら……ときどき首や肩を噛まれたりしながら夜は更けていった……



次の日……


あんなことをされながらもちゃんと眠れた自分に驚きながら目が覚めた……よく寝た…………


伸びをしながら、何度も一緒に迎えた朝なのにどこか違うように感じるのは私だけだろうか……とかなんか少しそういう雰囲気を出しながら少しだけカーテンをそっと開ける。


朝日が眩しい……ルウの寝顔も眩しい……


朝食後に街で聞いた話をみんなに話した。

みんなは……


「めんどくせぇ……」


「興味ない……かな」


「ほっとけば」


「ふぅん……」


と、どうでもよさそうな反応……


とりあえずは、魔王討伐とか言っているけれど、言っているだけらしいから、本気じゃないからと伝えられたからいいか……


でも……


「何かあってみんなのせいにされるようなことになったら……」


嫌だなぁ……と呟くと


「嫌なの?」


とみんながこちらを見る。

嫌に決まっている、濡れ衣なんて……


みんなは人にどう思われようと構わないという感じだけれど私は……自分の大切な人達が誤解されたら悲しいし悔しい。


そう言うと……みんなの話し合いが始まった。


「最初に……森に入るなら自己責任でと言ってあるからそうして欲しいところだけれどね」


と言いながらアレスが本を閉じる。


「いっそのこと立ち入り禁止にしたらいいじゃない」


ロゼッタが切り捨てる……


「そ、それはまずいよ。む、向こうもハ……魔王様が街に行っていることを知っているし……」


レトの言葉にそういえばそんなことも言っていたな……と思い出す。


「また霧とか出してたどり着かないようにすればいいんじゃねぇの?」


……また? ライオスを見ると目をそらされた……


「それを長期間やると他の魔獣や動物にも影響が出るかもしれない」


巣穴に戻れなくなったり家族が離れ離れになったり……とグレンが言う。


ねぇ、霧って? 私も森の中で見たことがあるけれどあの時のは自然に発生したんだよね? 


「い、いっそのこと魔王城に招待するのもいいかもし、しれないよ」


そんなことを言うレトを、はぁ? と言いたげな顔で見るライオスとロゼッタ……


「招待か……」


ルウ?


「彼らの安全を考えるのならそれもいいかもしれないな」


確かに……


「でもそれではパーティーに招待したときと変わらないし彼らの冒険心が満たされないか……」


ルウって人を嫌っている割にはけっこう考えてくれるよね……


「魔王城から人の足で歩いて半日かかる場所に野営ができる場所を作るのはどうかな」


街からそこまではどうやって……


「街のどこかと野営地に生えている大きな木を魔力で繋げておけば森を歩くのは半日だけだ」


それで冒険心も満たされるだろう、と。


さらに、念のため野営地と魔王城までの道とその周辺の広範囲に結界を張って魔獣が入れないようにしておこう、……って……至れり尽くせり……


「でも、それだとかなりの魔力を使うんじゃないの?」


私を見て微笑むルウと目が合い……胸がキュッとなる……


「これくらい大したことはないよ。それにこのくだらない遊びにはすぐに飽きるだろうし、そうでなくても、どちらにしろ長くは続かないから」


大丈夫、と……なんか……きつい言い方をしながらもニコリと笑うルウは優しいのか冷たいのか……


「向こうのお城にも知らせたりした方がいいのかな」


勝手にこんなことを始めてしまっても……って始めたのは向こうだけれど。


「城の連中も何も言ってこないからこっちもそうすりゃいいんじゃねぇの」


……この小さなすれ違いが重なっていって大変なことになったりはしないのかな……


それに……彼らが……というより王妃様が知りたいのは……


「魔王様は? 魔王様が一度姿を見せれば気が済むんじゃない?」


みんなが一斉に私を見る……なぜ笑うライオス。


「……そうだね、一度相談してみようか」


……相談できるのか……出てきてくれたら解決なんだけとなぁ。


「ただ、人間達の盛り上がった熱を下げるために、一旦最初の案でいってみようか」


と、微笑むルウ。


「話しもまとまったことだし、ハルが作ってくれたお菓子を食べよう」


お茶をいれるよ、とルウがキッチンへ向かうとみんなも動き出す。


結局…………ん? 魔王城に……



勇者達が来るの?


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