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67 新しい遊び



  気持ちよく目覚めた朝……



いつの間にか自分の家のベッドの中……

昨日はお茶会があってエイダンの家に泊まらせてもらう予定で……そのことを伝えるために帰ってきてそのまま寝ちゃった……?


お酒……そうだ、お酒を飲んだんだ。

だから覚えていないのか……でもそんなに飲んでない……


それにしてもこっちの世界のお酒とは相性が悪いのか良すぎるのか本当に少しの量で酔えてしまう。

お金のかからない身体になってしまったみたい。


そんなことを考えている間もルウと目が合っている。


「……おはよう」


「おはよう、ハル」


朝から眩しい笑顔のルウは……何か怒ってる……?

うん、とりあえず起き上が……あっ……あ-…………


「……お酒を飲みました……」


それで怒って……


「うん」


やっぱり……


「もしかして……迎えに来てくれたの?」


あぁ、と言い髪をかき上げるルウがカッコいい……


「エイダンも驚いていたよ」


エイダンにも会ったんだ。


「後でエイダンにも謝らないと……」


ん? とルウが首を傾げる。


「ハルが謝る必要はないよ」


え? 今度は私が首を傾げる。


「どうして?」


「酒を飲ませたのはエイダンだろう?」


…………ルウって……時々こうだよなぁ……


とりあえず頷いておいて後でちゃんとエイダンにも謝ろう。


「それよりもハル、少しは人を疑う練習をした方がいいかもしれない」


ほぅ……


「今日一日考えて……気を付けて過ごしてみてね」


え……何かあるの? 


「何か……」


「さぁ、朝食にしよう」


あるのかなぁ…………まぁ家だし大丈夫だよね。



そんなやり取りがあったその日の午後……


私は今、鳥籠の中にいる。


「ハル、庭に行こうぜ。見せたいものがある」


そうライオスに言われて付いていくと、みんなの家の裏手にある薬草を保管したりしている別館の隣に、見たこともないくらい大きな鳥籠があった。


「うわぁっ、凄いね!」


凄い凄いと見上げているとまぁな、と得意気なライオスが


「ちょっと入ってみろよ」


と……確かに余裕で入れるし中は快適そう。

ソファーとテーブルとベッドまであって小さな部屋みたい。


ほら、と入り口を開けてくれたからそれじゃぁ、お邪魔します、と中へ入る。


「おぉっ、暖かい!」


中は快適な温度で床もフカフカ……


カシャン


ん?


「簡単すぎる……」


そう言って頭を抱えるライオス……


「ハル……しばらくそこにいろ」


いいけど……


「しばらくって」


「じゃぁな」


どのくらい……だろう?

ライオスは姿を消してしまった……


まぁいいか、お茶とお菓子と本まであるからゆっくりさせてもらおう。


しばらくすると森からアオがパカパカとやってきてこちらに近づいてきた。


「アオ……角が立派になっているね」


悪魔っぽい感じの角が黒いボディに似合っているよ。


「カッコいいねぇ、素敵だねぇ」


アオが私の肩に顎を乗せようとしてくるけれど鳥籠があるからそれ以上は……


バキッ……バキッバキッ


あ…………


「あーーっ!! なにしてんだコノヤロウ!!」


ライオスが現れた……すぐ近くにいた。

まさかずっと見ていたのかな……


アオが壊したところから私が出ようとすると


「ケガするだろうが」


こっちから、とライオスが出入口を開けてくれた。

ありがとう、と外に出てアオを撫でたりスリスリされたり。


「まぁ、これで少しはわかっただろう?」


なにが? と首を傾げる私を見て


「閉じ込められて怖かっただろうってことだよっ」


あ、え……そういう遊びだったの? もっと怖がればよかったかな……


「う、うん、なんか不安だったような気もするし怖かったような気もするっ」


めちゃくちゃ快適に過ごしてしまった……おもてなしされているのかと……


「わかったのならいいんだよ」


フンッとなんかやった感を出しているライオス……


「ハル、ちょっと私の部屋へ来てくれないか」


アレスが家から出てきてこちらへくると私の手を取る。

ライオスを見ると私に行っていいぞと言ってからアオに何か説教をしている……


「本をね、読んで欲しいんだ」


ニコリと微笑むアレス。

読んで欲しいって……私に読んで欲しい本があるのかそれとも……


「ハルが今、私達と会話ができていたり文字が読めるのはルシエルが魔力を流しているからだときいたからね」


アレスにもできるか試してみたいから付き合って欲しいらしい。


みんなの家の二階へ続く階段を上がりアレスがドアを開けて、どうぞと言ってくれたのでお邪魔します、と部屋へ入る。


パタン


アレスが後ろ手にドアを閉める。


「ハル、また本が増えたんだよ」


ほら、この辺り、と本棚を指す。


「アレスは本当に本が好きだね」


いつも本を読んでいるものね。


「寝る間も惜しいくらいだよ、面白い本を見つけたら寝ずに読むこともある」


わかる、私も一気に読んでしまうから。


「それじゃぁ、さっそく始めようか」


アレスがベッドに座りこちらへおいで、と言い


「私の膝の上に座って両手を出して」


って…………そんなアレスを椅子みたいに……


「そんなにくっつかなくても」


アレスが不思議そうに首を傾げる。


「触れている範囲が広ければ魔力が流しやすいんだよ。ルシエルもよくハルにくっついているだろう?」


そうなの? そうだったんだ……


「まぁ……人にもよるけれどね」


魔力を流しやすい方法は人それぞれということ?

さぁ、と私を引き寄せ膝の上に座らせる。


アレスが両手を出してその上に私の手を重ねる。


「私の魔力で上書きしても変わらずに話したり読んだりできるか試してみるね」


耳元のアレスの声を意識しながらコクリと頷くと……ジンワリと温かい感覚が手から身体の中へ……


「ハル、痛くはない?」


うん


「それじゃぁ、このままゆっくりいれていくから力を抜いて……」


うん


「辛かったら体勢を変えるから」


……うん


「中に入っている……わかる?」


…………う……ん


「嬉しいよ、ハルとの初めて……気持ちいいね」


………………う…………


「ハルの中……私で満たされているね」


……ん……っなんか! わざとかな!?

そう聞こえる私が悪いのかな!? だとしたら恥ずかしい!


「……さぁ、終わったよ」


クスクスと笑いながらそう言うアレス……からかわれたのか……


まぁいいか……とりあえずアレスからおりないと……


私が動こうとするとアレスが後ろから抱き締めてきてそのままコロンとベッドに倒れる。


「ハルは温かいね」


このまま寝てしまいそうだ、と笑うアレス。


「アレス、言葉の方は大丈夫みたい。ちゃんとわかるよ」


そうだった、と言い枕の横にあった本をアレスに渡されて読んでみて、と……


アレスにも聞こえるように少し朗読すると


「うん、上手くいったみたいだ」


もう少し読んでくれる? と言われたから続きを読んでいると……


「……寝ちゃった……?」


スヤスヤと眠るアレスを見ていると子供の姿だった頃を思い出して頬が緩む。


フフフッ……さては昨日夜更かししたのかな?


「……んっ……」


アレスの眉間に皺がよる……


「やっ……め……」


身体に力が入り……苦しそう……

これは……ルウが……みんながうちに来たばかりの頃を思い出す。


もしかしてみんなまだうなされて……?


「……大丈夫だよ……」


アレスの頭をそっと撫でる。

大丈夫……ここはみんなの家だから安心して眠って欲しい。


しばらく撫でていると身体の力も抜けて表情も柔らかくなる。


再びスヤスヤと眠りにつくアレスにほっとしながら、お休みと言いそっとベッドから抜け出し部屋から出る。


みんなからは何も話してはくれないけれど……そろそろ私から聞いてもいいかな……


どうしたものかと考えながら歩いていると、いつの間にか目の前にレトが……


「ハ、ハル……別館にい、行かない?」


薬草を置いている……


「うん、行こうか」


歩きながらレトをチラリと見ると目があったから


「レトは……」


聞いてしまおうか……


「いつもいい匂いがするよね」


聞けなかった……


レトとダンスをしたご令嬢も言っていたけれど本当にそう……いい匂い……


「そ、そうかな」


はにかみながら別館のドアを開けてくれるレト。


ドアを閉めて振り返ると


「ぼ、僕は……ハルの匂いが好き」


照れながら……可愛いな……

薬草の整理を手伝いながら話をする。


「レト達はここに来る前はお城に住んでいたんだよね」


う、うん、と頷くレト……


「どんな生活をしていたの?」


聞いてしまった……無理に聞くつもりはないけれど……大丈夫かな……


「……き、気になるの?」


気になる……でも……


「ハルは……僕が何をしていても……何をされていても嫌いになったりしないかな……」


ポツリと一人言のように呟くレトの雰囲気が変わったような気がした。


「何をされていてもって……何かされた……の……?」


レトが真っ直ぐ私を見つめる……


「やっぱりハルは優しいなぁ……」


そう言って私の頬に触れる……


「……レト?」


「城での生活は……酷く……退屈なものだったよ」


冷たい表情……


「今は楽しい」


嬉しそうな笑顔……


「ハルがいるだけで楽しい」


なん……て可愛いことを言うんだっこのコはっ


「ありがとうっ、私もみんながいてくれて楽しいよ」


エヘヘ、と笑うとレトも嬉しそう。

あれ? 結局何も聞けていないような……


「……ハルのいた世界はハルみたいな人間ばかりなの?」


レトが不思議そうに首を傾げる。


「どうだろう? 人それぞれだから……でも、私の周りは優しい人が多かったかな」


……私は恵まれていたと思うし、こっちの世界でもそうだと思う。


「そうなんだ……ハルの周りに優しい人が多くてよかった」


でも……とレトが私を抱き寄せる。


「この世界では気を付けた方がいい」


レトの腕に力が入る。


「ハルが思い付かないような残酷なことをする魔族も人間もいるのだから」



ちょっ……苦し…………何て言ったの……?


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