表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/87

63 お茶会



 メイドさんの……



服を着たロゼッタ……


「ロゼッタ!?」


メイド姿のミアも現れ


「馬臭い」


と言って清潔魔法をかけてくれる……ありがとう……

そんなことより……と周りを確認して小声で話す。


「二人ともどうしたの?」


ここで働いているわけではなさそうだけれど……


「たまたまよ。ハルこそ何をしているの?」


たまたまか…………たまたま?


「ドレス……」


ミアが私が着ているドレスをつまむ。


「うん、素敵なドレスだよね。お城のお茶会に招待されていてドレスも用意してくれたんだよ」


ミアがジッと私の胸元をみて


「肌が……」


あ……やっぱり開きすぎかな……


「きれい……」


…………ありがとう。

私よりも二人だよ。


「二人ともその格好、メイドさんの制服」


なんかエッチだ……


「……大人になったねぇ……」


なによそれ、と言いながらそっぽを向くロゼッタとスカートをつまんで見せてくれるミア。


「ハル様? こちらにいらしたのですね」


振り向くと着替えを手伝ってくれたメイドさん。

ロゼッタとミアは……いなくなっている。


「イーライ騎士団長様とご一緒だったのでは……」


あ……


「さっき……ついさっきまで一緒だったの」


そうでしたか、と少し納得のいっていない様子で微笑むメイドさん。


「そろそろお茶会が始まりますので……」


さっと私の全身をチェックをしてから


「ご案内いたします」


と頷くメイドさん。

いよいよ始まるのか……お茶会。



思っていたよりも少ない……十二人。

お城のお茶会だから勝手に大人数だと思っていたけれどそんなことはなかった。


さっとご令嬢方の顔を見るけれど……やっぱり知らない方ばかりと思ったけれど……


あの女性……もしかして……


「お待たせしてしまったかしら」


声の方へ視線を移すと王妃様。

皆さんが一斉にご挨拶をしようと王妃様の元へ行こうとするとそのままで、と言い


「皆さんよく来てくれたわ。今日はあまり堅苦しくしたくはないの。皆さんと仲良くなれたら嬉しいわ」


と微笑む王妃様に嬉しそうなご令嬢方。

堅苦しい方がよかったと思っているのは私だけか……


「それでは皆さん、お掛けになってお茶とお菓子とお喋りを楽しみましょう」


と言うと王妃様の近くの席から埋まっていく。

王妃様から一番遠い席にホッとしていると私の隣の席にあの女性が……やっぱりこの方……


街で会ったことがある。


お店の前で声をかけられた……あの貴族が利用する高めなお店の人だ。


招待客の中には街の人もいるのか。

ドレスを用意してくれたのはそういうこともあってのこと……そこまでして選ばれた今回のメンバーって……


「貴女がダンスを申し込まれたのはどちらの方でしたの?」


「どなたかお名前をお聞きできた方はいらっしゃるのかしら?」


「お名前は教えて頂けなかったけれども私の名前は覚えていただきましたわ」


これってやっぱりパーティーのときにアレスとレトとライオスがダンスをした女性達……


そうか……うっかりみんなの名前を出さないように気を付けよう。


「それにしても素敵な方だったわ。仮面を着けていらしたけれど美しいお顔立ちだとわかるくらいに……紳士的でお身体もその……逞しくて……」


と頬を染める女性の言葉にキャァキャァ言う女性達。

逞しいって……ライオスのことかな。


普段のライオスと紳士的という言葉が重ならなくて思わず吹き出しそうになる。


「私が踊った方はとてもいい香りがしましたわ。香水をつけていらっしゃるか聞いたのですがつけていないと……香水もなくあの香りは……反則ですわっ」


これにもキャーッと……

レトかな。たくさんの種類の花が部屋にあったからその匂いか。香水で再現するのは難しそう。


「とても色気のある方もいましたわ。物腰は柔らかで知的な方で……流行りの小説や劇のお話も私として下さったのよ」


アレスか。

ライオスもレトもアレスもキャーッキャーッと言われているけれど子供の頃は可愛かったなぁ。

と、遠くを見ていると


「貴女もその方と踊っていたわよね?」


確か一番最初に申し込まれていなかったかしら……と突然話を振られて驚く。


「……そう……ですね」


私に注目が集まる。


「でも、緊張してしまって何を話したか……」


わかるわぁ、とっても素敵な方でしたもの、と今度は王妃様の近くの席のご令嬢に注目が集まる。


王妃様は微笑みながらお喋りをしているご令嬢一人一人をよく見ている。


「それにしても魔王様はどのような方なのかしら」


どなたか何か聞いたことがあるかしら? と王妃様の隣に座っているご令嬢が皆さんに聞く。


「さぁ……どうだったかしら。あれだけ素敵な方々を束ねる魔王様はとても魅力的な方に違いないわ」


そうね、と皆さん頷く。


「美丈夫で高い魔力を持っているわね」


間違いないわ、と……


「それにあの魔王城! 魔道具が贅沢に使われていたしデザインも素敵だったわ!」


でも……と一人のご令嬢が首をかしげる。


「魔王城にあんなにたくさんの魔道具がいるかしら?」


そもそも魔族は魔力が使えるのに……と。


「それは……この前のように私達を招待してくださるパーティーがこれからも頻繁に開かれるからではないかしら?」


まぁっ、新しいドレスを用意しておかなくてはいけないわね、とキャァキャァと盛り上がるご令嬢。


「もしかしたら私達人間の中から王妃を選ぶ準備なのかも」


と誰かが言うと一瞬静まり返り……どうしましょうっ! とまた盛り上がる。


王妃様はそんなご令嬢方の様子をみて微笑んでいる。

そして……


「皆さんには……」


と口を開く。


「皆さんには夢はあるかしら」


王妃様に注目が集まる。


「夢……ですか……?」


突然の質問に戸惑うご令嬢。


「そう、夢よ。なりたい自分でも手に入れたいものでも何でもいいわ」


ニコリと微笑む王妃様。

少し間があり


「私はやっぱり素敵な方との結婚かしら」


そうね、と同意するご令嬢。


「私も素敵な出会いがあればと思うけれど……いつか自分のお店を持てたらと思っていますわ」


私の隣の女性がそう話す。


「まぁ! 素敵だわ! 自立した女性ね! でも、財力のある素敵な方との出会いがあれば働かなくてもいいのよ。どなたかご紹介できる方がいればよかったのだけれど……」


クスクスと笑いながらズレたことを言うご令嬢。


「あ……貴女はどうなの?」


少し顔を強ばらせた女性が私に話を振り


「あら? 貴女……」


と、私に気がつく。


「狩人の……」


女性の言葉にご令嬢がざわつく。


「まぁっ、狩人ですって? あの動物を追いかけ回している?」


とクスクスと笑うご令嬢と気まずそうな隣の女性……

彼女に悪気がないことはわかっている。


「ぜひ、聞いてみたいわ狩人さんの夢を」


教えてちょうだい、とまたクスクスと笑うご令嬢方。


「私は……」


夢か……こっちの世界に来てから考えたことがなかったけれど今は……


「……安心して暮らせる場所……」


みんなと一緒に……それからそこがみんなが帰って来られる場所になるといいかな。


「狩人ならではの夢ね。いろいろなところに移動しながら生活しているから落ち着かないのよ。可哀想だわ」


……まったく移動していないしこれからも動くことはないかもしれない……


「あら、その夢、私と同じよ」


まさかの王妃様……


「ま、まさか……ご冗談ですよね? こんなに立派なお城にお住まいなのに……」


動揺するご令嬢方。

私もしている。


「私も安心して贅沢に暮らしていきたいわ」


笑いながらそういう王妃様にホッとするご令嬢。


「それなら私もですわ、高みを目指すのは男性だけではありませんもの」


と笑う。


私の隣の女性は自分のときと同じように話がズレていく様子をみて上手く笑えないみたい。


「魔王城に長期滞在をすれば魔王様にお会いできるかしら……」


と誰かが言い、そういえば……とご令嬢の一人が呟く


「パーティーで陛下とお話をされていた魔族の男性は……あの方が魔王様……ではないのですよね? かなり魔王様に近いお方なのですか……?」


ルウのことかな。


「あぁ、ルカ様のことかしら」


ル……カ? あれ……


「ルカ様とおっしゃるのですね! ルカ様もとても素敵でしたわ……できればお近づきになりたいです……」


ルウじゃなくてルカ様? 話の流れで魔族の方みたいだけれど……ルウの友達かな?


「ずるいわ! 私だってお近づきになりたいです……けれど……少し怖い気もしますわ。魔族の性質は皆さんご存知でしょう?」


そうねぇ……


「確かに私達と違うところはあるけれど、愛の重さは容姿が整っていれば問題はないし、子育ても乳母や使用人に任せれば大丈夫よ」


そう……なの?


「確かにそうだわ。魔族であれば誰であれ容姿は整っているし魔力でなんでもしてくれるわね」


なんでも……


「でも……本にはあまりいいことが書かれていないですし……やっぱり少し怖いです……」


でもね、と王妃様


「本の内容は時代に合わせて徐々に変わっていくものよ。これからは魔族の国にも人間が増えていくの。魔族に愛され魔族を使うのが人間よ」


愛も何もあったもんじゃないな。


魔王様については皆さん想像でしか話せなかったから結局本当はどんな方なのかはわからなかった。


貴族だからかここにいる方々だけなのかはよくはわからないけれども力や財力があることはとても大切なことみたい。



みんなにはお互いを大切に思いあえる人と結ばれて欲しいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ