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62 招待状



 二日間、みんなと過ごしてエイダンの家に戻った。



エイダンにはお帰りと言われ、エリオットにはもう戻ってきたのか、と言われた。


エリオットも私もあの夜の事がなかったかのように振る舞っている。


「兄上が城に呼ばれた。ハルにも茶会の招待状を渡すよう言われている」


ほら、と渡されたこの封筒……


香水の匂い? 好みの問題だろうけれどあまりいい匂いではないような……レトが私にふりかけていた霧の方が好きな香りだなぁ……


思考が逸れてしまったけれどお茶会!?

しかもお城で?


「え? 何で!?」


「知らない」


「お茶会って何!?」


「茶を飲んで喋るのだろう」


「何を!?」


「知らない」


「誰と!?」


「知らないよ、うるさいなぁ。王妃様が開く茶会だから王妃様はいるだろう」


「欠席してもいいかな……?」


はぁ!? と、面倒そうにこちらを見るエリオットと心配そうなエイダン……


「ハルは茶会は始めてかな?」


うん、貴族がするようなお茶会は知らない……


「そうか、招待状を見せてもらってもいいかな」


エイダンに招待状を渡す。


「ドレスを用意して待っているみたいだから欠席は難しいかな」


そもそもお城からの招待は余程の事情が無い限りは断れないらしい。


何となく王様に本当にエイダンのところにいるか探りを入れられたような……これから王妃様に魔族について探りを入れられるような…………


い……行きたくないっ……


「私が城に呼ばれている日に茶会があるようだから一緒に行こう」


ね? と励ますように言ってくれるエイダンは優しい。

それでも行きたくない……けれどもエイダンを困らせたくはないからコクリと頷く……


「僕も行く。丁度その日は城に用があるからね」


……用を作ったのでは……


「四日後ということはハルは次の日は休みだからうちに泊まっていくといいよ」


よ……


「四日後!? そんなにすぐ!?」


エリオットがうるさいというような顔でこちらを見る……だって……


「あぁ、ドレスをあちらで用意するというのは茶会までに時間がないということもあるからだね」


そっか……何がなんでもお茶会をするという意気込みが伝わってくるね。

仕方がない、一度行ったら気が済むかな。


抜けられそうなら途中で帰ってくればいいか。

そんなことを考えていると


「まさか途中で帰ろうなんて思っていないよね? 王妃様主宰の茶会は王妃様が終わりを決めるのだから途中退席は許されないよ」


……教えてくれてありがとう、エリオット。


「そ……そんなことわかっているよ」


本当かぁ? と疑いの眼差しが痛い。


「まぁ……急な話しだけれどもわからないことや不安なことがあればいつでも聞いて欲しい」


ね? って……エイダン、わからないことや不安なことだらけなんだよ……



それから、少しでもましに見えるようにマナーとかも教わってみたけれど……


結局なるようにしかならないか……と、諦め半分で迎えたお茶会当日。


「準備はいいかな」


エリオットが実家から馬車を借りてきてくれたから三人で乗り込む。


貴族の間では今、魔道具を使わないことが流行っているらしい。


「魔力を節約していると思われたくないからそんな風に言っているだけだろう」


と呟くエリオットにそんな風に言うものではないよ、と困り顔で注意をするエイダン。


馬車が走り出すと


「私は城への報告などを陛下や宰相と話して仕事を片付けながらハルの茶会が終わるまで待っているから一緒に帰ろうね」


うん……


「兄上、僕も一緒に帰ります。兄上と一緒に待ちます」


うん……


「そういうことだから急がなくてもいいぞ」


聞いているのか、と私の顔を覗き込むエリオット。


「聞いているよ。ありがとう」


帰ってみんなとお茶会をしたい……


「ハル、美味しい茶や菓子も食べられるから楽しんで。私は城で出るものよりもハルのいれてくれた茶と作ってくれた菓子の方が好きだけれどね」


「まぁ……僕もハルの茶と菓子は好きかな……」


二人とも……ありがとう。

あまりにも大人しくなった私にとうとうエリオットまでそんなことを言い出してしまった。


気を遣わせてごめんね、そうだよね、お茶とお菓子を楽しむことにしよう。


「二人ともありがとう」


エヘヘ、と笑うとエイダンは笑って頷きエリオットはそっぽを向く。


お城に着くと


「ハル様はこちらへ」


と、早速二人とは離れ離れになってしまった。

お城は以前来たときよりも人が少ないからか静かで少しだけ肌寒い気がした。


「こちらのお部屋でございます」


と扉を開けてくれたメイドさんに中へどうぞといわれ部屋の中へ……


ドレスがたくさんある……


「こちらからお好きなものをお選びください」


って……ざっと見て……うん、選べない。


「あの……選んでいただけないでしょうか」


こういうのはお任せに限る。


「お任せいただけますか」


お願いします、というとメイドさんがニコリと微笑みさっと私の全身を見てからドレスを選び始める。


あっという間に数着に絞り


「こちらはいかがでしょうか」


と淡い水色のドレスを見せてくれた。

そんなにヒラヒラもゴテゴテもしていないし好きな感じかも。


「そちらでお願いします」


とお願いすると、かしこまりましたと言いやっぱり着替えを手伝ってくれた……慣れていないから恥ずかしい……


それから髪のセットとお化粧までしてくれた。


ドレスはとても素敵で思っていたよりも動きやすいけれども……思っていたよりも胸元が開いている。


これくらい胸元の開いたドレスを着ている女性を見ても素敵だな、と思うだけでそんなに気にならなかったのに自分が着ると……


心もとないというか……谷間とか見えちゃっていいんですかね? ってなる。


「とても素敵です」


と、全てをやりきって満足しているメイドさんにそう言われると、そうかな……となんだか照れてしまう単純な私。


メイドさんにお礼を言うとニコリと微笑み少し申し訳なさそうな顔をする。


「ハル様、お茶会の時間まで少しお待ちいただけますか」


思っていたよりも私の準備に時間がかからなかったみたい。


「それならお庭を見てきてもいいですか?」


せっかく来たのだからいろいろとみていきたい、と……お城という場所は私を観光気分にさせてくれる。


「今、お庭にはお花も咲いていませんし……そうですね……温室をご覧になられますか?」


温室……ぜひ! お願いします! と前のめりな私を見て微笑むメイドさん。


こちらです、と案内された温室にはたくさんの種類の花や実が成っていて本当に別世界のよう。


温室自体が魔道具らしくこの中の植物はどの季節も関係なく安定して育つらしい。


薬草がなくなると薬も作れなくなるからここは大切な場所なのだと思う。


長居して悪影響があったりしたら大変と思いメイドさんにお礼を言って温室から出る。


メイドさんと歩いていると


「ハル!」


声をかけられて振り向くと


「イーライ……様」


騎士団長様の登場……

メイドさんが私の後ろへ下がる……さが……ちょっ……そんなに下がらなくても……


「ハル、その……とても綺麗だよ」


私の胸元は見ないようにしている……やっぱり開き過ぎかなぁ……


「ありがとう、イーライ様」


ハル……と寂しそうな顔をされてもお城だからねここは、敬称は付けさせてもらう。

イーライもわかっている、というように頷く。


「王妃様の茶会に呼ばれているのだね、よければ時間まで城を案内するよ」


騎士団長に案内してもらうって……すごく目立つような……

それならメイドさん案内してもらう方が……チラッとメイドさんを見ると


「ここからは私が案内するから君は下がっていいよ」


イーライが遠くで待ってくれているメイドさんに声をかける。

かしこまりました……って行かなでっメイドさんっ……


「大丈夫、茶会の時間には間に合うように送るから」


うん……ありがとう、それなら……


「それなら馬を見せてもらうことはできるかな?」


「馬?」


「うん、騎士団の相棒の馬」


イーライが確かに私達の相棒だね、と笑い


「しかしせっかくドレスアップしているのに……」


平気だよ、汚すようなことはしないし。


「やはりハルは変わっているな」


そう言って笑いながらこちらへどうぞ、と案内をしてくれる。


馬小屋ではなく訓練場へ案内してくれたみたいで大勢の騎士達と馬……


驚いてイーライを見ると……微笑まれて……

それを見た騎士達がざわつく……


「あ、あの……訓練のお邪魔になってしまうから」


もう戻ろうと言おうとしたところで一頭の馬が近づいて来た。


「イルバだ、私の馬だよ」


気難しい馬なのだよ、と手綱を握りイルバを撫でる。


「初めまして、イルバ。私はハルだよ、よろしくね」


と手を伸ばす私に驚くイーライと騎士達。


「ハル! 気難しいと言っただろう、危ないから……」


え? スリスリと私の手に顔を寄せるイルバは可愛いけれど……


騎士達がざわつく……


「イルバは賢いねぇ、いい子だねぇ」


と撫でると顔を私の肩に乗せて甘えてくる……可愛いじゃないか。


「ハル……君は……」


イーライが顔に手を当てて何か呟いているけれども、私はイルバに夢中。


ここにはアオと同じ種類の馬はいないみたい。

私の周りに集まってきた馬達もみんな私が知っている馬だ。


「あの方はどこのご令嬢だ」


ん?


「団長の知り合いなのか……?」


え……


「お、俺、挨拶してくるっ」


人も集まってきそうっ


「ハル、着替えなければならなくなる前に戻った方が良さそうだね」


騎士達が集まり始めたのを知ってか知らずかイーライは私の周りにいる馬達に戻るように言ってから私を連れて訓練場を後にした。


「ハル、今度一緒に」


「失礼いたします。ハル様、お時間ですのでこちらへ」


とさっきとは別のメイドさん。


「あぁ、すまない。そういえば……ハルは今、エイダンの家にいるのだよね」


なぜ急にそんなことを聞くのだろう……と思いながらもそうなんです、と頷く。


「わかった。それではまたね」


彼女を頼むよ、とメイドさんに私を引き渡してからイーライは訓練場の方へ行ってしまった。



なんだったのだろ……と思いながらメイドさんを見ると……



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