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6 一緒に



 「それじゃぁ……ハルは……」



ルウの表情は変わらない。


「うん、こういう話ってこれまでに聞いたことはある?」


ルウが首をふり


「聞いたことはない」


キッパリと言い切った。

そっかぁ……


「だから……ごめんね、この世界に来てから会ったのはルウが初めてで……」


この世界のこともよくわからなくて……頼りなくてごめん。


「魔力の無い世界……」


それからルウに魔道具がないと不便なのにどうやって生活していたのか聞かれた。


私が住んでいた世界では魔法の代わりに科学があって…………と冷蔵庫や洗濯機、エアコンの話もした。


あまり詳しく聞かれても仕組みとかはわからないから少し困ってしまった。


「魔族と人間って仲がいいの?」


さっきルウがチラッと言っていたけれど……魔道具とか作ってあげているなら協力関係にあるのかな。


「ハル、ハルは魔法が使えないんだよね」


お、おぉ……まだ私のターンではなかったみたい。


「全く使えないよ」


人間だもの。


「僕の着替えはハルが?」


うん。


「身体も綺麗になっていた」


「身体が冷えていたしケガをしていないかも確認したかったからね。一緒にお風呂に入ったよ」


「僕が魔族だとわかっても一緒に入れる?」


うん。今更でしょ。


「ルウは自分が魔族だということが気になるの? それとも私が人間だということ?」


ルウがジッと私を見つめる。


「さっきルウが読んでくれた本ね、あれは多分人間が書いたものだよね」


何となくちょっと偏っているというか怖がらせようとしているというか……


この世界の人間には会ったことがないし、魔族だってルウだけだからなんとも言えないけれど……


「私はね、私が作ったご飯を美味しそうに食べてくれるルウが可愛いし、一緒に住めることが嬉しい」


やっぱり頭に手が伸びてしまう。

ほんの少し驚いたような表情をしたあとに


「それなら今日も一緒に入る」


お風呂?


「お風呂はそんなに大きくないし無理しなくてもいいんだよ」


あの時はルウの意識がなかったからで今日は一人でゆっくり浸かりたいんじゃ……


「一緒に入る」


……うん、いいけど。

そうだ、ついでに


「ベッドも一つしかないから……」


「一緒に寝る」


そう……布団もたくさんある訳じゃないから助かるし一緒に寝ると温かいからいいけれど……

夏になる前に考えないと……ベッド作れるかな……


そんなことを考えているとルウを不安にさせてしまったみたいで


「やっぱり……イヤ?」


と少しだけ不安そうに聞いてくる……可愛い。


「嫌じゃない……嫌じゃないよっ、ルウが嫌っていうまで一緒にいるよ」


そう……とうつ向くルウ…………

うわぁぁーっごめんよ! 不安にさせてっ


ギュッとルウを抱き締める。


「ルウが魔族でも人間でも関係ない。ルウが家に帰れるまで一緒にいよう」


抱き締められたままルウが頷いたのがわかった。

よしよし、と落ち着いたところで


「この世界の事をもう少し聞いてもいいかな」


コクリと頷くルウ。よかった……


「魔族と人間は仲がいいのかな」


改めて聞いてみる。


「それは…………」


うつ向いてしまった……あまり良くはなさそう……

最初に私を見た時の反応から何となくそうなのかな、とは思っていたけれど……


「それじゃぁ、ルウのご両親は?」


「さっきも話した通り魔族が子育てをするのは長くて十年だからどこかへ行ってしまったよ」


「ルウはいくつなの?」


一応聞いてみる。


「……見た目通りの年齢だよ」


十才くらいでいいのかなぁ……


「どうして森で倒れていたの?」


裸足だったし荷物も持たずに……両親と離れたばかりだとしたらあんまりだ。


「……覚えていない」


「どこかで誰かと一緒に暮らしていた?」


やっぱり意外と近くに……?


「……覚えていない」


手がかりになるようなことは覚えていないか……

今いろいろ聞いても困らせるだけかな。


「そっか、何か思い出したら教えてくれる?」


コクリと頷くルウ。


「魔物はこの森にもいるのかな……」


何となく呟いた言葉にルウが反応する。


「いるよ。みたことないの?」


一年いるけれど……


「見たことないねぇ……この森、動物はたくさんいるけれど」


ルウは別に驚いた様子もなく……けれども少し首を傾げて


「魔物はそんなに数が多い訳じゃないから……」


本にもそう書いてあったみたいだしこれまで出会わなかったとしても不思議ではないのか。

ちょっと見てみたい気もするけれど。


ところで……とルウが話を変える。


「ハルはこの家の魔道具を使いこなせているの?」


何となく……?


「たぶん……最初は間違った使い方をしていたけれど使っているうちに便利な機能に気が付いて正しく使えていると思う」


そう……私にサバイバルの知識があったから気づくのが遅かったとも言える。


「ここはたぶん……人間か魔力の少ない魔族が住んでいたんだね……」


ルウが気づいたことを話してくれた。


「お風呂は元々魔道具が使われていなかったと思う。後から魔道具の風呂釜を置いたみたいだった」


魔道具は昔に比べたら数も種類も増えて平民でも手が届くものがたくさんあって、お金が貯まったら買い足すような感じらしい。


ちょっと待って


「平民の他には……」


まさか……


「王族、貴族」


やっぱり……


「まぁ……ここに住んでいれば関わることはないよね」


そうだね……と言いながら首を傾げるルウ。


「……ハルは人間に会いたくないの?」


会いたくないわけではないけれど……


「ルウに会う前はわからないことが多かったから……本に書いてある文字も読めないし言葉も通じないんじゃないかと思っていたの……」


そういえば


「私、本に書いてある文字は読めないけれどルウとは話ができている。言葉が通じるなら騙されることもないかな」


通じても騙されるかもしれないけれど。


「街があるなら行ってみたい。ルウに必要なものを買い揃えたいし」


そこで気づいてしまった……


「お金……持ってないや……」


ごめん……期待させるようなことを言ってしまった。


「肉は肉屋に、薬草は薬屋に持って行けば売れるよ」


他にもランプのオイルとか…………そうなんだ……


「そうなんだ! 売る! 売りに行くっ、そしてまずはルウの靴を買う!」


教えてくれてありがとう、とルウを抱き締める。

ルウは身動きせずにそれから、と続ける。


「ハルの言葉はこの世界では通じないよ」


え? だって私、ルウと……


「僕が魔力を使ってハルの言っていることをわかるようにしているだけ」


なんと……だから言葉は通じても文字は読めないのか。


「でも……街へ行くならハルに魔力を使ってあげる」


それで他の人間が話す言葉も書いてある文字も理解できるようになるから、と。


それって……


「……それはルウの負担にはならないの?」


急に真剣な顔をした私に驚いたのか、ほんの少しルウの表情が動く。


「ルウの負担になるならそれはしない。時間はかかると思うけれどこの世界の言葉を勉強するよ」


とは言っても本だけで勉強も難しいと思うから結局ルウに教えてもらうことになると思う。

それはそれでルウの負担になるのか……? 


そんなことを考えているとギュッと服の裾を握られた。


「ならない。僕は魔力量が多いんだ……」


でも……といいかけると


「それに街は遠いよ。空を飛んで行かないと……」


空……飛ぶ!?


「空を飛べるの!?」


凄い凄い! と驚いている私を見て


「別に……普通だよ」


と……普通なの!? 凄い凄い! と頭を撫でる。

ルウはどうしたらいいのかわからない様子で可愛い。


「もういいから……行くなら売れるものをまとめて明日にでも行けるけど」


ルウが私の手を優しく払いながらそう言ってくれた。

手を叩き落とされなかった……嬉しい。


これから寒くなるのにルウが使えそうな物が少ないから早めに買い物はしたいけれど……


「本当に大丈夫? 少しでも負担になるなら行かないよ」


多少不便でもこの家にあるものでどうにかできることも少なくはないと思う。


「大丈夫。出来ないことは言わないよ。明日、街へ持って行くものを決めよう」


そう? とまだ心配している私を置いてキッチンへ向かうルウ。


ルウから聞いた話を改めて思い返す。

やっぱり……元いた世界とは違うのか……どうしてこんなことに……


まだ知らないことがたくさんある状態で、人がたくさんいる街へ行くのは不安もあるけれど、いつまでも閉じこもっているわけにもいかない。



ルウのいるキッチンへ向かいながら私は密かに前へ進む覚悟を決めた。


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