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32 成長痛とか



 それから数日はこれまでと変わらずみんなと一緒に過ごした。



ロゼッタとミアの髪は私が毎日結ってあげている。

二人とも容姿が整っているし髪も長くて綺麗だからアレンジのするのが楽しい。


二人が喜んでいるかどうかは……どうだろう。

私は毎日大満足。


レトには薬の作り方を教えてもらっている。

そして気づいたことがある。


レトは得意分野になるといつもの自信がなさそうな泣きそうな感じが消えて流暢に話す。

顔つきも自信に満ちていて別人のよう。


グレンには絵を教わっている。

描くのが早くて戸惑っているとゆっくりと描いてくれるようになった。


グレンは寡黙ながらも教え方が上手だから少しずつ上達していくと思う。


アレスには魔力のことを聞いたりしている。

魔石は使っているといずれ中に溜めていた魔力が空になるから定期的に魔力を補充しなければいけないと。


魔石の大きさや質にもよって補充する時期はバラバラらしい。


「魔道具のない時代もあったんだよね?」


そう聞くとアレスは驚いたような顔をした。


「そう、だね。そんな時代もあったんだろうね」


私は魔道具なんて便利なものがあることを知らなかったから


「私が住んでいた世界には魔力というものがなかったから魔道具なんて知らなかったし……ここにきて最初の頃は水汲みは大変だったけれど魔道具無しでどうにか生活をしていたよ」


そう言って笑うとアレスも優しく微笑んでくれた。


ライオスはアオのお世話を手伝ってくれる。

お世話といっても放し飼い状態だからほとんど手が掛からないのだけれど、アオのところへいく時は必ず付いてきてくれる。


「ライオスは馬に乗れる?」


乗れるなら教えてもらおうかな。


「まぁ、一応乗れるけど」


おぉ、


「アオが乗せてくれそうなら乗り方を教えてくれないかな」


森の中を移動できる範囲が広がる。


「馬って……そいつは魔」


ブフッと突然吹き出し、首を傾げる私をみてさらに笑う。


「アオは優しいし賢いからきっと乗せてくれると思うのだけれど」


ふぅん、そうかもな、と少し落ち着いたライオスが言う。


ルウはみんなのために冬に備えて狩りをしたり薬草を取って来てくれたりオイルを集めたりしてくれているから最近は森へ入ることが多くなっていた。


私も手伝うと言ったのだけれど日が暮れるのも早くなってきているし、さっさと済ませて帰って来るから待っていて、と頭を撫でられた。


「みんなのことを頼むね」


と言ってルウは出かけていくから私は毎日隣の家にお邪魔している。


こんな風に過ごしていたある日……

いつも通りルウを送り出してからみんなの家に行くと


「……大きくなっている……」


いきなりみんな……いや、なんとなく最初にあった頃より背が高くなってきたかな、とは思っていたけれど今日、大きくなっている!


「やぁ、ハル」


と微笑む………誰ですかぁーーっ

全員私より背が高くなっている……


「みんな……骨とか大丈夫……?」


成長痛とか……


「骨ってなんだよ。相変わらず面白いな、ハルは」


クックックと笑っているのは誰かわかる、ライオス。

よく見ると……見上げると誰かはわかる。


大きくなったとき用の服も用意しておいてよかった。

みんな着てくれている。


「こんなにいきなり大きく……というか元に戻るんだねぇ」


と感心していると頭に重みが……


「ハルは小さくなった」


私の頭に顎を乗せて笑うライオス。

重いな。


「私は小さくなっていない。みんなが大きくなったんだよ」


ロゼッタとミアと目が合う。


「うわぁ、ますます綺麗になったね」


二人も私より十センチくらいかな……背が高くなっている。

やっぱり私、この世界の平均身長より低いのかな。


「ハル……ハルも綺麗……」


ミアが小さい声で嬉しいことを言う。

大きくなっても変わらない。


「子供ではないけれど……また髪を結ってくれる……?」


と少し恥ずかしそうに……可愛すぎっ……


「もちろんだよ! ロゼッタもね。またお風呂も一緒に入ろう、それからパジャマパーティーとかもしたいね。女子会しよう女子会!」


子供じゃないから夜更かしも出来るね。


「パジャマ……パーティー? 女子会? 何よそれ」


楽しいのならやってもいいけれど……と、ロゼッタも可愛い……


二人にパジャマパーティーや女子会の説明をしていると


「楽しそうだね」


と、振り向くとアレスの綺麗な顔がすぐ近くにあってちょっとびっくり。


「いつやるの」


反対側にはグレン。

いや、女子会は女子……


「ハ、ハルがこの家に泊まりにく、来るの?」


レトも参戦。

お部屋もあるみたいだしルウも一緒に泊まらせてもらうのもいいかもしれない。


そんなことを考えているとフワリと包み込まれる感覚が……


「君達、元に戻ったのだね」


ルウがいつの間にか帰ってきて後ろから私を抱き締める。


「ルウ、おかえり」


ちょっとびっくりしたぞ。


「ただいま、ハル」


チュッと私の頭にキスをする……みんなの前でもこの距離感……


「ルウ、今夜はこっちの家に泊まらせてもらおうよ。みんなが元に戻ったお祝いをしよう」


ルウが少し困った顔をする。

ダメって言われそう……


「ご馳走をたくさん作るし! デザートも! お酒も買ってきたのがあるから開けちゃおう!」


ね? お願い、と言うと仕方がないと言うように微笑んで


「ハルがしたいようにしよう」


と言ってくれた。ありがとう!

結局女子会でもなんでもなくなったけれどそれはまた今度、近いうちにしよう。


そう勝手に決めてふと思い出す。

魔族は集団では暮らさない……そう本に書いてあったはず……


みんないずれどこかへ行ってしまうのかな……


そんな考えを胸の奥にしまって今夜のメニューを考える。

デザートもいくつか作りたいし……これはまたすぐに街へ買い物に行かないといけないかも。


みんなも手伝うと言ってくれたから早めに準備を始めて作り始める。


キッチンに立つとみんなの大きさが……

ルウが大きくなったときと同じような戸惑いがある。


みんなにキッチンを任せて一度アオのところに行ってくる、と言うとルウも行くと言い一緒に馬小屋へ向かった。


アオはいるかな。出入りを自由にしているから時々いないこともある。


「みんな元に戻って良かったね」


歩きながらルウにそう言うとそうだね、と微笑む。


「いつか……みんなはいつかあの家から出ていってしまうのかな……」


胸にしまったはずの寂しい気持ちを口にしてしまった……


「……どうだろうね……」


ルウが私の髪に触れ耳に触れる。


「でも僕は」


「ブルルッ」


アオが私とルウの間に割って入ってきた。


「アオ、お出かけしていたの?」


あれ?


「ルウ、アオの頭……耳の近くに何か生えている……角?」


ルウがアオを見てあぁ、と言う。

この世界の馬は角が生える種類もいるんだ。


「アオ、立派だね。カッコいい」


そう言って撫でるとどこか誇らし気な顔のアオ。

アオにも果物や野菜をあげてからルウと一緒にみんなの家へ歩き出す。


「ハル、僕はずっとハルの側にいるからね」


歩きながらルウが私の手を握りそう言ってくれた。


私はルウを……みんなをこの場所に縛りつけるようなことはしたくはない。


したくはないけれど、ルウのその言葉がすごく嬉しかった。


「うん、ありがとう」


となるべく軽い感じで言うとルウは眉を下げて笑った。


その日の夜はみんなでご馳走を食べて、お酒は一本しかなかったから私はまた今度にしたけれど、みんなのグラス半分ずつくらいにしか分けられなかった。


けれどみんな楽しそうだったからお酒はまた買ってこようと思った


それからパジャマに着替えてお菓子やおつまみを持って暖炉の前のラグの上に移動して広げる。


みんなとお喋りをしたりロゼッタとミアの髪をアレンジしたりと楽しい夜だった。


だから……魔力の戻ったみんながこれからどうするのか……



その日は聞くことはできなかった……


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