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30 リボン



 森での狩りはやっぱりルウのお陰で早く終わった。



その後のお菓子作りではそれぞれの性格が出ていた。


レトとグレンは細かく正確に分量を計り混ぜていたし、アレスは同じように粉を混ぜて作るのに、前回はフワフワのパウンドケーキで今回は固いクッキーができるのはどうしてかと不思議がる。


ライオスは何でもいいから適当に混ぜて早く作ろうぜ、とざっくりとした感じ。


ロゼッタはミアを手伝いながらも教えた通りにできているし、ミアは周りの様子を伺いながらゆっくりと作業を進めている。


それぞれ好きな形に作った生地をルウが魔法で焼いてくれて出来上がり。


おやつを食べたら別館へ行き、みんなが薬草の仕分けを手伝ってくれた。


「こ、これとこれは残り少ないく、薬の材料になるものだからとっておこう。そ、それからこっちの薬草は寒くても生えているや、薬草だから売っても大丈夫」


こんな具合に分けながら教わりながら作業を進めていった。


「ルウ達も風邪をひいたりした時は薬を飲んだりするの?」


人数も増えたし万が一のときのために備えておいた方がいいよね。


「僕達は飲まないかな。魔族は治癒能力が高い者が多いから」


そうなんだ……でも、子供達みたいに魔力が回復していない状態のときは役に立つかもしれないから後でレトに教わりながら一応多めに作っておこう。


もし、家にある薬で対処できないようならティファナのお店の薬と医者にも頼ることにしよう。


必要になるとすれば私のような気もするけれど……


薬草の仕分けが終わり家に戻るときに思い出した。

みんなには先に家に行ってもらって私は自分の家の荷物の中からロゼッタとミアに買ったリボンを取り出す。


「喜んでくれるかな」


フフフッと思わず笑いながらみんなの家へ向かう。

家に入るとみんなはお茶をのんでいて、ルウが私のお茶をいれてくれた。


ありがとう、と一口お茶を飲んでからロゼッタとミアの近くへ行く。


私が二人にリボンの入った袋を差し出すと二人が顔を見合わせる。


「街で選んできたのだけれど気に入るかな」


なぜか少しだけ照れる。


「私達に……?」


二人はそっと手を伸ばして受け取ってくれた。


「可愛いリボン……」


ミアが嬉しそうに呟くのを見て、ロゼッタも微笑む。


「……可愛い……」


ロゼッタも小さな声でそう言った気がした。

リボンと一緒に持ってきた櫛でミアの髪をとかしてリボンで二つに結ぶ。


「かっ、可愛い……写真撮りたいっ……」


うちの子が可愛すぎる。


「シャシン?」


と首を傾げるミアの可愛さよ……思わず抱き締める。

それからロゼッタに手を伸ばすと


「私はいいわよっ」


と避けられた……


「ロゼッタ……」


ミアとお揃いにしたい、と見つめるけれど


「フンッ」


とされた。ダメかぁ……


「ロゼッタ……私とお揃いは……イヤ?」


ミアがロゼッタの服の裾を摘まむ。


「っ……わ、わかったわよっ、好きにすればっ」


と私に背を向ける。

ロゼッタの髪に櫛を通しながら


「ロゼッタもミアも綺麗な髪ね」


と何気なく言うと


「……ハルの黒髪も綺麗だわ」


と小さな声が聞こえて……ロゼッタの耳は真っ赤。

可愛すぎか……


思わず後ろから抱き締めるとちょっとっ、と怒られたけれども構わずぎゅぅっ、とする。


髪を整えながらこのリボンを買ったお店の話をしたら二人とも興味はありそうだったけれど……行ってみたいとまではならなかった。


それからロゼッタもミアと同じ髪型にして


「はい、出来上がり」


と言うと二人は顔を見合わせて微笑む。写真……

写真が無理ならせめて絵に描いて残そうと思って二人に頼み込んで描かせてもらえることになったのに……


私の絵心の無さに笑われるわ、ロゼッタには怒られるわで散々だった。


「貸して」


ここでグレンの新たな才能を知ることになる。


「おぉっ」


とみんなも驚くほどの早さと上手さ。写真じゃんもう。


ライオスは私の描いたものと比べて爆笑するし、ルウは私の方を額に入れて飾ろうと言うしでもう訳がわからなかった。


でも、みんなが笑っているからいいか、と私も一緒になって笑った。


それからそのままみんなと夕飯まで一緒に過ごして


「ハル、そろそろ家に戻ろう」


と言われてルウと一緒に自分の家へ戻った。

家に入ると静かで……うっかりまた何だか寂しいね、と言いそうになり言葉を飲み込む。


「そうだ、ルウにも渡したいものがあるんだ」


昨日はいろいろとあったからね、渡すタイミングを逃してしまっていた。


「僕に?」


うん、ちょっと待っていて、と寝室へいく。

街でルウのために買ったものを手に取りリビングへ戻る。


「サイズがわからなかったからとりあえず一着だけ買ってきたのだけれど」


と、大人のルウに似合いそうと思って選んだ服を差し出す。


「ハルが僕のために……選んでくれたの?」


うん、でも……


「そんなにいいものではないかも」


手持ちがそんなになくて……甲斐性無しでごめんよ……


「これでサイズがわかればもっといいものを選んであげられるし。後で着てみてよ」


本当は一緒に買い物が出来ればいいのだけれど……もしかしたら行きたくないのかもしれないし。


この辺りのことはみんなが自分から行くと言うのを待った方がいいのかなぁ、と思っている。


まぁ……私もルウに連れていってもらわなければいけないのだけれど。


アオに乗れるようになれば……もしかしたら街まで一人でも行けるかもしれない。


馬には乗ったことはないけれど……ルウは乗れるのかな。

アオは賢そうだから乗せてくれそうな気がするけれど……考えが甘いかな……


「ハル」


いろいろと考えていたら着替えたルウが目の前に……


「ハル、ぴったりだよ。ありがとう」


おぉっ……着てくれている。

高くはない服もルウが着ると高そうに見える。素敵だ。


「次はもっと素敵な服を」


選ぶね、と言い終わる前に抱き締められた。


「ハル、自分の服は買った?」


……買っていない、首を振る。


「みんなの物はあんなにたくさん買ったのに、ハルのものは一つも買わなかったの?」


耳元で響くルウの声……


「こ、今回はみんなのための買い物だったから……」


自分のは……


「私はこれ以上大きくなることもないし今着ているもので足りているから大丈夫だよ。それに私が勝手に選んだものだし、みんなの好みを聞いていかなかったから気に入ってくれたかどうか……」


なぜか口数が多くなってしまう……

ルウが私を落ち着かせるように頭を撫でる。


「ハル、僕も見て欲しいものがあるんだ」


? なんだろう?

こっちへ来て、と手を取られて連れていかれたのはお風呂場。


「! ルウッこれ!」


うわぁーー!! と喜ぶ私を優しく見つめるルウ。


「浴槽が大きくなっている! 足も伸ばせるし肩まで浸かれる! どうしたのこれ!?」


ルウがクスクスと笑いながら


「喜んでもらえて良かった」


これは嬉しいよ! これから寒くなるしゆっくりお風呂に入れる。


「それじゃぁ、さっそく風呂に入ろうか」


うん、もうお湯も張ってあるしね。


「お先にどうぞ」


と脱衣所から出ようとすると……あれ? ドアが開かない。

もう一度、力一杯開けようとしてみるけれど開かない。


なんで? と思ってルウを見る。


「ルウ、ドアが開かないのだけれど……」


そう? とルウもドアに手を掛けるけれども


「開かないね。少し待てば開くと思うからその間お風呂に入ろうか」


ニコリと微笑むルウ……やられた……


「ル、ルウ……さすがに大人の男女が」


ってもう脱ぎ始めているし!


「ハルもいつもみたいに思いきりよく脱いでいいよ」


……そりゃぁ、私はもうルウに裸は見られているけれどもね……


「僕ね……家族とお風呂に入ったことがなくて……ハルと一緒に入った時、凄く嬉しくて楽しくて……だから」


それって……私を家族のように思ってくれているということ……?


「ダメ……かな。もう一緒には入ってくれないのかな……」


うっ……眉を下げて悲しげな表情……

浴槽が大きくなって前よりは密着しないだろうし……なんなら交代で湯船に浸かればいいのか。


「タ、タオルを身体に巻いたまま入ってもいいなら……」


私はどうもルウに弱い。


「もちろん、いいよ」


と嬉しそうに微笑むルウに、服を脱ぐときは背中合わせでね、と言っておく。



本当に良かったのかなぁ……となんとなく不安を覚えつつ、私も服を脱ぎ始めた……


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