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21 ルウに感謝



 気まずい……



「でも、ようやく生活も落ち着いたし」


大丈夫だよ、と言うとファルが


「そうかっ、この街に落ち着くことに決めたか!」


……え?


「いやぁ、ハルは狩人だからすぐにどこかへ移動しちまうかと思ったが良かった! ハルの持ってくる肉は質がいいからな」


泣きそうな顔から笑顔になるファル。表情が豊かだ。


「どの辺りに住んでいるのだ? 用事が終わったら送ろう」


紳士的なイーライ騎士団長……でも、どの辺りと言われても…………


「あ……いやぁ……大丈夫です。これから買い物もあるし……」


森に住んでいるとは言えない……


「では荷物を持とう」


紳士的なイーラ…………いやいやっ


「とっとんでもないです! 騎士団長様に荷物を持たせるなんて」


森に住んでいるとは言えないんだって……


「ハルは変わっているなぁ、イーライに送ると言われたらどんな女も喜ぶんだぜ?」


ファルはそう言うけれどそれはどうかと……好みもあるだろうし……


「それはどうかと思うぞ、ファル」


騎士団長はまともな人みたい。


「そんなことよりハル、その堅苦しい呼び方と話し方を止めないか? 年も近いようだし」


えー……でも貴族で騎士団長なのでしょう……?

いいのかなぁ……ファルをチラリと見ると親指を立ててニカッと笑う。


「……じゃぁ、そうさせてもらうね。今日はたくさん行きたいところがあるから一人の方が気が楽なの。ごめんなさい、でもありがとうイーライ様」


と一気に言うと、そうか、わかった、となぜか少し面白そうに笑って引いてくれた。


「では、私は失礼するよ」


またな、と言ってお店を出ていく。


「ハル、待たせたな。品物を見せてくれ」


早速査定をはじめるファル。


「今回もいい肉を持って来てくれたなぁ。ハルがこの街に住むと決めてくれて良かったぜ」


それにしても、とチラリと肉から視線を外して私をみる。


「まだ服を買っていないのか? 前に来たときと変わらないじゃねえか」


う……ファルにも服のことを言われた……


「今日みたいな出会いもあるかもしれないんだ。ハルくらいの年頃の女はお洒落して化粧してってのが好きなもんだがねぇ」


ファルはちょっとダメ出しが多いと思う。


「イーライはハルのことを気に入っていたぞ。あいつにはいつも女が群がるからな。うんざりしているから冷たい態度を取るがハルには興味を持ったみたいだ」


長年の付き合いだ、俺にはわかる。と一人頷くファル。


そんな風には見えなかったけどなぁ……まぁ滅多に会うこともないでしょう。


「今日の肉は前回と同じくいい肉だ! 量は前回よりも多いから……これでどうだ」


と金額を提示してくれた。

おぉ、たくさん狩りをしてくれたルウに感謝だ。


「ありがとう、ファル」


「おぅ、こちらこそありがとうな、ハル」


お金を受け取りお店を出る瞬間


「服を買って帰れよ-」


と聞こえた気がしたけれどきっと気のせい。

さてさて、次はティファナの薬屋さんで薬草を売ろう。


「ハル、いらっしゃい!」


ティファナが微笑む。


「こんにちは、ティファナ。また薬草を買い取って欲しいのだけれど」


もちろん、と早速査定を始めるティファナ。

その間お店の中を見せてもらう。


薬はレトが詳しいみたいだから作り方を教えてもらうとして……


寒くなると乾燥してくるからこの前来たときにくれたハンドクリームのような……入浴剤かお風呂上がりにも使えるボディクリームがあればルウと子供達に買って帰りたい。


「ティファナ、身体にも使えるクリームはあるかな?」


ティファナが顔を上げる。


「身体に? あぁ、乾燥するのね。この間あげたクリームは全身に使えるわよ。肘や膝、かかとに使うようにすれば少ない量でも長持ちするわ」


もちろんこの前のものよりたくさん入っているものもあるわよ、と。


なるほど、今回はみんなで使うように前回いただいたものよりも大きい容器に入っているものを買って帰ろう。


「ハル、まさかとは思うけれど森へは一人で行っていないわよね?」


…………コクリ


「そう……それならいいけれど。寒くなると森の薬草も減るから売りにくる人も減るのよ」


チラリと私を見て


「でもまぁ……売りには来なくても自分用に少し採りに行く人もいるわよね」


薬草に視線を戻す。


「ハルは狩人だからわかっているだろうけれど、魔獣もいるのだし、一人で行ってはダメよ」


はーい…………


「今回もとても良いものだわ、これでどうかしら」


再びルウに感謝。


「ありがとう、ティファナ」


どういたしまして、とティファナがいい私の全身を見る……嫌な予感……

けれどもティファナはなにも言わずに紙に何かを書き始める。


「私のお勧めのお店よ。お化粧品やアクセサリーを取り扱っている雑貨屋さんとお洋服屋さんと靴屋さん、それからこっちは新品ではないけれど服やアクセサリーや魔道具まで安い値段で大体なんでもそろうお店よ」


リサイクルショップだ、後で行ってみよう。


「教えてくれてありがとう、ティファナ。助かるよ」


ティファナは微笑み今度一緒に買い物に行きましょうねと言ってくれた。


クリームの代金を払い、お金と紙を受け取りお店を出る。


制服姿の騎士団の方を見かけて、そういえば何かあったのかファルにもティファナにも聞き忘れていたことに気が付いた。


まぁ、いいか。


まずは子供達に必要なものを買おう。

服はすぐに身体が大きくなるかもしれないから少し大きめのものの方がいいかな。


それからスリッパと靴もサイズがわからないからとりあえず暖かそうなスリッパと同じような型の靴を選んで買っていく。


布団と枕は大人が使うものを七組。


さすがにお店の人に家まで運ぶと言われたけれど、荷馬車を用意してあるからと言い、お会計を済ませてから一旦お店の裏手に置いてもらった。


周りに誰もいないことを確認して袋の口を布団にくっつけると吸い込まれるように入っていく。

便利、ありがとうルウ。


あとは食器とカトラリーと……とりあえず目についた必要そうなものを買っていった。


大体揃ったかな、あれも買ったこれも買ったと考えながら大通りを歩いていると、素敵なドレスやリボン、アクセサリーが飾ってあるお店を見つけた。


ティファナのお勧めには書いていないけれど素敵なお店……そして値段も高そう……


でもこのリボン、ミアとロゼッタに似合いそう。

二人が大きくなったらこのドレスも……


「ちょっと」


リボンだけでも……駄目だ……食材も買っておかないといけないし……


「ちょっとっ、そこのあなた」


せめて美味しいものを食べさせてあげよう……


「聞いているの!?」


なに!? 突然近くで聞こえた大きな声に驚く。

声がした方を見ると綺麗な女性が……


「きったない格好ねぇ、そんな格好でお店の前に立たないでくださる?」


はっきりと物を言う人だ。


「すみません、とても素敵な商品が飾られていたので思わず立ち止まってしまいました」


こちらも本当のことをはっきりと言わせてもらう。


「それはそうよ、ここは貴族様も来られるお店なのよ。あなたみたいな……狩人?」


珍しいわね、若い女性の狩人なんて……と女性が呟く。


「はい! お店の商品を買えるように頑張って働きますっ」


何か聞かれる前にとっとと退散だっ


「えっ? あ、あぁ……そうなの? 頑張って」


戸惑う女性にでは、とお辞儀をして歩き出す。


やっぱり……この格好……というか私がこの格好をしているから珍しくて目立つのか。


ティファナが教えてくれたリサイクルショップでワンピースでも見てみようか……

買うものを買ってからだけれど……


そんなことを考えながら歩いているとクスクスと笑い声が聞こえてきてハル、と声を掛けられた。


「イーライ様……」


さっきの女性とのやり取りを見られていたのか……

やぁ、と爽やかに手を上げて


「また会ったね」


と、爽やかに笑う。爽やかな風とともに爽やかに歩いてきて……爽やかに……ってどれだけ爽やかなの……


初対面では威圧感を感じたのに自己紹介をしたからか、ファルの知り合いだからかわからないけれども、今は何だか親しげな感じ。


そして周りの女性達が騒ぎ出す。


「買い物は終わった?」


周りの綺麗なドレスを着た女性達がジリジリと……


「まだ……終わっていないから……あの、もう行くね」


そう言って歩き出すと同時にイーライ様に群がる女性達……きっと貴族のご令嬢……


後ろから名前を呼ばれたような気がするけれどきっと気のせい。グッドラック、イーライ様。


振り向かずに親指を立ててそのまま歩き続ける。


この辺りは貴族の方も来るようなお店が並んでいるのか。



…………気を付けよう


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