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20 街の様子



 なんだか幸せな気分……



手探りで温かくて安心できる何かを抱き締める。


「フフフッ」


ハッ……自分の笑い声で意識が浮上する……

こういう目覚めってなんか幸せな気分だよね。


ふわぁー……あくびをして目を開ける。

今日は街へ行く日だ。


あれ? なんか動けない。


「おはよう、ハル」


フワリと微笑むルウ……まぶしっ


「おはよう、ル……ウ……?」


こ……この人……ルウ? あれ……あれっ!?


ボンヤリとしていた意識がはっきりとしてきて……

男性の腕の中…………?


……キッ


「キャー-ッ」


「なんだっ!? どうした!?」


カバッと起き上がり私を守るように覆い被さり周りを確認するために視線を走らせるルウの髪が……


「ヘッ……ヘクシッ」


くしゃみが出た。


「え?」


驚くルウ……ご……ごめん……

恥ずかしさ以外いろいろ吹き飛んだ……


クスクスと笑いながらそのまま私の首もとに顔を埋めるルウ。


ちょっ……とこの体勢は……くすぐったいし……

フフフッと私も笑い出す。


「ルウ、今日は街へ連れていってくれるんだよね」


朝食を食べて出掛ける準備をしよう、と言うとそうだね、とルウも起き上がる。


「そういえば……私、ソファーで寝たはずじゃ……」


子供達が布団に入ってから私もソファーに横になったはず……


「うん、ハルが寒そうにしていたからベッドに連れてきた。また熱が出たら大変だからね」


あ……そうだったんだ。


「そっか、ありがとう。でも……やっぱり大人二人で寝るのは狭かったよね。ごめんね、身体は痛くない?」


ルウが大丈夫だよ、と言い


「ベッドは丁度いい大きさだと思うし身体も痛くないよ」


もしかしてどこか痛いの? と聞かれた。

私も大丈夫だよ、と言うと


「それなら問題はないね、一緒に朝食を作ろう」


そう言って部屋を出ていくルウ。

ベッドの大きさだけじゃなくて年頃の男女が一緒に寝るっていうのも問題なのだけれど……


ルウはまだ子供のときの感覚が抜けないのか私との距離が近い気がする。


子供のルウならなんとも思わなかったのに……私が変に意識し過ぎているのかなぁ……


あんなに背が高くてかっこよく成長したらそれはねぇ、意識しちゃうよねぇ。


まぁ……それも今夜からはなくなるからいいか……

少し寂しくなるけれどいなくなるわけではないし、お隣さんになるだけだ。


よしっ、気分を切り替えて朝ごはんだ。


暖炉の前で寝ていた子供達も起きていたから先に顔を洗ってもらう。


朝はサンドイッチとサラダとスープ、それから果物をみんながおいしいと言って食べてくれた。


ルウの用事と私の買い物にどれくらい時間がかかるかわからないから子供達のお昼用に、朝多めに作っておいたスープとサラダ、それからオムライスを作っておいた。


お昼になったらオムライスとスープは温めて食べてねとみんなに伝えておく。


「それから、家を建てるときに魔力を使うんだよね。急いで建てる必要はないから無理はしないようにね」


とは言え、こっちの家は狭くて不便かもしれないけれど……と笑っているとルウに


「大丈夫だよ。帰ってきても終わっていなければ僕が完成させるから」


と凄くいい笑顔で言われた。


そんなに急がなくても……と思ったけれどもルウも早く新しい家で快適に過ごしたいのかもしれない。


ルウの負担にならないのならそうしてもらうのがいいのかなと思った。


ルウがいつの間にかお肉や魚や薬草、それからオイルランプを補充してくれていたお陰で今日は前に街へ行ったときよりも売れるものがたくさんある。


ルウにお礼を言って出発の準備を済ませて行ってくるね、と子供達を抱き締める。

ライオスとロゼッタには逃げられたけれど……


「行ってきます」


と、ルウと二人で家を後にする。


「ハル、今日は自分のものも買うのだよ」


ルウが私の格好を見てそんなことを言う。

サイズは合っていないけれどシンプルでそんなに変な格好ではないと思うのだけれど……


ちょっと綻びがあるだけで穴があいているわけじゃ……


「まさか穴があくまで新しい服を買わない気ではないよね」


心を読まれた……でもローブを羽織れば中に何を着ていても……


「狩りに行くわけではないのだから街へ行くときくらいは……逆に目立ってしまうよ」


若い女性の狩人は珍しいから、と。

確かに前回街に行ったときに言われたな……そんなことを。


うーん……でもなぁ……お金が余ったら買うか。


「うん、自分の服も見てみる」


と、言っておこう。

ルウが疑いの目で見てくる……ヘへッと笑うとルウも少し困ったように笑う。


街に着くとルウが人気のない場所で私を降ろし、気を付けて、と言いお城へ向かって行った。


私はルウが作ってくれたあの何でもかんでも入る便利な袋を持ってまずは肉を売りに行く。


袋の中身は腐ったりはしないとわかっていても前回と同じように何となく生物から売りに行きたくなるのは仕方がないと思う。


街を歩いていると以前とは少し様子が違うことに気が付いた。


何かあったのかな……?

兵隊? 騎士? 制服を着た人達が多いような……


制服を着た人達を横目に肉屋のファルのお店に行く。


お店に入るとファルが誰かと話していた。

ファルと同じくらい背の高い男性で制服を着ている、もしかしてファルのお店で何かあった……?


「よぉっ、ハル。また来てくれたな」


ニカッと笑い思いの外元気に声をかけてくれたファルの様子にホッとする。


ファルと話していた男性もこちらを見て目があったので会釈をしてからファルに


「お話が終わったらまた買い取りをお願いしたいのだけれど……」


そう言うとファルではなく制服の男性が


「こちらの用は済んでいる。申し遅れた、私は騎士団長のイーライだ」


ちょっと……制服を着てその話し方は威圧感が……


「おいおい、怖がらせるなよ。ハル、こいつは俺の幼馴染みなんだ。貴族のくせに小さい頃からお屋敷を抜け出して街に遊びに来ていた変わり者だよ」


おいっ、とファルの言葉に気安く答える様子に思わず笑ってしまった。


「フフフッ……すみません、私はハルです。ファルにはお世話になっています」


お店にくるのは二度目だけれど。


「きみ……ハルは狩人か」


違います……


「そうなんだよ、珍しいよな。若い女の子の狩人でしかもかなり腕がいいんだぜ、ハルは」


ファル……違うんだけどなぁ……しかも女の子って……


「そうなのか、偉いな」


イーライ騎士団長が私の頭を撫でる。

ファルが女の子って言うから……


「しかも森の奥にも薬草を採りに行っているって薬屋のティファナに聞いたぜ」


俺は心配だよ……って。


「そんな危険なことまで……両親はどうしているのだ」


うわぁ-っ二人とも気の毒そうな顔をしないでっ

ダメだ……ちょっとでも訂正しておかないと後々ややこしいことになりそう……


「あのっですね、私……女の子という年ではないです……たぶんお二人と同じくらいの年です」


えっ!? と声に出して驚くファルと目を見開くだけのイーライ騎士団長。


そして二人の視線が私の胸に……コラッ


「そ……そうだったか! いやぁすまん! 確かに……なぁ……」


ファルがイーライ騎士団長に同意を求めるが無視される。


「ティファナやララとも同じくらいってことかぁ、そんなダブダブな服を着ているから余計にわからなかったぞ」


それになぁ、となんかダメ出しが始まった……


「それくらいの年頃のコはイーライに会うとキャーキャー騒ぐもんだぞ」


それは……まぁ確かにイーライ騎士団長は整った顔をしているけれど……ルウと暮らしているからか綺麗な顔には耐性ができているのかな……


「ハルは一人暮らしか?」


うっ……困る質問きた。


「……ハイ」


無難にこう答えておこう。


「ご両親は別の街に暮らしているのか?」


別の街っていうか……別の世界……です。


「両親は…………」


何て答えるのがいいのか……


「……すまない、そうか……」


間が空きすぎてまた誤解を……でもこの世界に私の家族はいない……


「一人になってから必死だったので寂しく思う暇もなかったですよ」


アハハ、と空気を変えようと笑って見る。

実際そうだったし。


あれっ!? ファルが……泣きそう!?


どうしよう……



全然空気が変えられない…………


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