二度寝、三度寝……
枕元に置いたスマホから「ピピッ、ピピッ」という耳障りな甲高いアラーム音がけたたましく鳴り響き、私は薄目を開けました。寝ぼけ眼でロック画面に表示される時刻を確認し、支度さえ手際よくこなせば、あと30分は寝ていられると判断した私は、そのまま二度寝を敢行することにしました。
眠たいということは身体が休息を欲しているサインですし、鉛が詰まっているかのように重たい頭と体を無理やり引きずって準備をするよりも、スッキリとした目覚めとともにテキパキ動いた方が効率的だと判断したのです。決して睡魔の誘惑に屈したわけではありません。
「ピピッ、ピピッ」
はあ……。私としたことが、うっかりスヌーズを解除し忘れていました。貴重な睡眠時間を些細なミスで無駄にしてしまうなんて。今度こそ、もうひと眠り……。
「ピピッ、ピピッ」
あれ、おかしいですね。確かにアラームは30分後に設定したはずなのに。でも気にしている時間が勿体ないので無視します。
「ピピッ、ピピッ」
……煩いなあ。間近に感じるこの電子音は、一体どこから聞こえてくるのでしょう。
「ピピッ、ピピッ」
あれ……なんで……私は……どうして起き上がることができないんですか?
「ピピッ、ピピッ」
なぜ何も見えないんですか?
「ピピッ、ピピッ」
そもそも、今日は何月何日でしたっけ? 私はどこで何をしているんでしょう。
「ピピッ、ピピッ」
……ああ、そうでした。
私は、ずっと、今まで一度たりとも、この深い眠りから目覚めてなどいなかったのです。数か月? それとも数年? 正確な期間は自分でも分かりません。鳴り続けるアラームがいつまでも止まない理由は、それが目覚ましではなく、眠ったままの私を傍らで強制的に生かし続けている優しく残酷な機械から生じている音だから。
いつまで続くのかも分からない現実から目を背けて、正気を保つために自分に嘘を吐き続けていたのでした。
思い出してしまった以上、取るべき選択肢は一つしかありません。
私の理性は再び眠りにつきました。