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4.婚約破棄再び⁉︎

 卒業パーティー当日、クリスティーナは体調不良の為、パーティーを欠席した。

 クリスティーナは卒業生じゃないから、何にも問題はない。


 はーっ

 ジークハルト殿下はどうでもいいけど、お兄様とは卒業パーティーに出たかったな。

 パーティーの為に正装したお兄様は一段と格好よかった。あれは確実に令嬢たちに囲まれて動けなくなるだろう。

 なぜか分からないけど、お兄様は未だに婚約者がいない。

 ゲームのレイモンドにはいたような気がするんだけど…


 お兄様を送り出し、夕食も済ませるともうやることがない。体調不良っていうことになってるし、今日はさっさと寝てしまおうといつもより早く、この日は寝てしまった。



「おっお嬢様!大変です!」

 翌朝、ノックもそこそこにマリーが焦った様子で入って来た。

「なぁに?マリー、いくら何でも朝からバタバタしすぎよ。今日、何か予定があったかしら?」

 モゾモゾと起き出したものの、今日はこれといった予定はなかったはず。


 ふぁーと欠伸をしていると

「ジークハルト殿下が!」

 息も絶え絶えでマリーの言葉がなかなか出てこない。

「ジークハルト殿下?殿下がどうかしたの?」

 のんびりしているクリスティーナに焦れたマリーが

「早く、早く着替えてください!」

 手を引き、強引に着替えさせる。


 訳がわからないまま、着替えさせられ、顔を拭かれたところで、部屋の前で言い争う声が聞こえて来た。

 何事かとドアの方を見ていると、いきなりドアが勢いよく開かれた。



「クリスティーナ!」

 入って来たのはジークハルトだった。

 クリスティーナはいきなり自分の部屋に押し入って来たジークハルトを呆気に取られて見つめた。

「どうして昨日は来なかった!」


「へ?」

 あまりのことに令嬢らしからぬ声が漏れてしまう。

「殿下!クリスティーナは体調が悪いと言いましたよね!」

 レイモンドが必死にジークハルトを引き止めようとする。


 どうやら、折角婚約破棄をしようと手ぐすね引いて待っていたのに、肝心のクリスティーナが来なかったことに怒っているようだ。


 何て勝手な人なんだ!

 いい加減にしてもらいたい!


「殿下、何の御用か存じませんが、いきなり淑女の部屋に押し入ってくるなんて不作法すぎます。客間でお待ち下さい」

 クリスティーナがビシッと言うと、少し我に返ったのか

「逃げずに来いよ」

 憎々しげに言って、出て行った。


 なんなんだ。あいつ。

 いくら何でもおかし過ぎ。


「ごめん、ティーナ。昨日、ティーナが来ないって聞いてから、ずっとおかしくて。何とか朝まで待つように言ったんだけど、朝一番で来てしまった」

 レイモンドがげっそりとしている。

「そう。お兄様のせいではないわ。殿下は何かおっしゃってた?」

 急いでいるので、マリーに髪の毛をセットしてもらいながら訊く。


「婚約破棄だなんだと騒いでいるから、婚約解消したらどうかと言ったんだけど、ローラが婚約破棄じゃないとって余計なことを言って、収拾がつかなくなってしまった」

 レイモンドがげんなりとした。

「卒業パーティーは混沌としたまま終わったよ」


「それは…お疲れ様です。卒業生の皆様には申し訳ないことになってしまったわね。それにしても、殿下の様子がおかし過ぎませんか?」

「そうなんだ。他の奴らもいつもに増して言動がおかしくて、他の生徒が皆引いてた」

「ローラはなんで婚約破棄に拘るのかしら?ジークハルト殿下の婚約者が邪魔なら解消でもかまわないはずなのに」

「それは酷い虐めにも負けず貫く真実の愛とやらに拘っているからじゃないか?全く理解できないがな」

 顔を顰めて吐き捨てるように言った。


 レイモンドはクリスティーナの身支度が整うと、マリーを部屋から下がらせた。

「まだはっきりとはしていないが、ローラは魅了の魔法らしきものを使っている可能性が高い。普通の魅了の魔法では離れれば解けるものなんだが、魔法が解けない上に、ローラが望まないような行動をとろうとすると更に魅了が強くなって自分では何も考えられなくなっているようだ」


「それは大事になりましたね」

 王太子が操られるなどあってはならないことだ。

 ヒロインは健気で努力家の子だったはずなのに、なんでこんなことになっているのか…



「父上にこのことは伝えてある。父上が陛下に連絡したはずだ。普通の魔法ではないからまだ確証はないけど、これ以上野放しにするのは危険過ぎる。殿下がこの後、王宮に戻ったら、ローラから引き離す為にしばらく王宮から出られなくなるだろう」

「お兄様は結界で自分を守っているんですよね?他の方はできないのですか?」

「残念ながら、常時結界を張り続けるのは、結構大変なんだ。それなりの魔力が必要な上、既に魅了の魔法にかかっているから、結界を張らせようとしても、ローラがそんなことする訳ないと言ってきかない」

 ため息を吐くと、立ち上がった。

「さぁ、そろそろ行かないと、また殿下が暴挙に出そうだ。殿下が何を言っても気にしなくてもいいからな」

 レイモンドの言葉に頷くと、クリスティーナはジークハルトが待つ客間に向かった。



「クリスティーナ、おまえのローラに対する非道な行いは全て知っているぞ!」

 客間に入る早々、ジークハルトはクリスティーナを指さし、断罪を始めた。

 ジークハルトの目は人形の目のように何も映してない。

「お前の様な女は国母に相応しくない。婚約破棄する!俺の新しい婚約者はローラだ」


「またですか。婚約破棄を言いたいのはこちらですよ」

 クリスティーナは落ち着いた声で静かに言った。



「こっちは浮気の証拠がいくつもある」と言おうと口を開いた瞬間、クリスティーナは目の前が真っ暗になった。

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