表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は三度目の舞台を降りたい  作者: 桃田みかん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/35

21.閲覧禁止の図書室

 クリスティーナがローラによって魅了の状態にされているであろう男子生徒に魅了の魔法を重ね掛けすると決めて一週間後、クリスティーナによる禁術である魅了の魔法の使用が許可された。

 それに伴い、閲覧禁止となっている魅了に関する図書の閲覧が可能になったので、許可が下りた数日後、クリスティーナは王宮を訪れた。


 ジークハルトが案内をしてくれると言うので、後をついて王宮の図書館に入った。

 図書館の奥に閲覧禁止になっている本を納めている部屋があった。普段は鍵がかけられているその部屋の辺りは人気がなく、しんと静まりかえっていた。

 ジークハルトの魔力によって鍵が開けられる。

 中に入ると、魔力を注いで、照明を点ける。

 そこには壁一面に本棚があり、ぎっしりと本が詰まっていた。


 クリスティーナが物珍しそうにキョロキョロしている間に、ジークハルトは慣れた様子で本を数冊選び取り、クリスティーナに差し出した。

「魅了の魔法について書かれている本はこれだけだ」

「殿下はもう読まれたんですね」

 迷いなく本を取り出したので、それと分かる。

「まぁな。ローラ・パティーニの魅了について調べてみたからな。前に話したこと以上のことは分からなかったが」

 肩を竦めると、部屋の真ん中にある机と椅子があるだけの読書スペースで読むよう促した。


「持ち出しはできないから、ここで読んで覚えてくれ」

 クリスティーナは頷くと、早速、本のページを捲り始めた。


 魅了の魔法が闇属性の魔法であり、対象者と術者を一日から三日離せば、魔法が解けることなど、既に知っていることが書かれている。

 三冊目を読んでいると、目的の魅了の魔法の使い方が書かれている部分に行き当たった。


 魔石に本に書かれている魔法陣を施し、そこに闇属性の魔力を流せば、魔法が発動する。

 対象者に触れたり、目線が合っていることが条件となる。


 本が持ち出せないので、クリスティーナは暫く魔法陣の部分をじっと見つめ、頭の中に入れた。


「これなら多分、出来るとは思います」

 暫く黙って本を見ていたクリスティーナが徐に顔を上げた。


 クリスティーナの向かいで、違う本を読んでいたジークハルトが本を閉じた。

「そうか」

 ジークハルトはひとつ息を吐くと、立ち上がり、読んでいた本を元あった場所に戻した。


「ところで、上手くローラの魔法が解けたとしても、またすぐに魅了の魔法がかけられる可能性が高いですよね?どうするんですか?」

 クリスティーナも自分が見ていた魅了関係の本を棚に戻した。

「あいつと距離を取る為とはいえ、さすがに全員に学園を休ませるのは不自然だから、今、ティーナが作った結界を張る魔道具と同等な物をいくつか作らせているから、それをとりあえず持たせるつもりだ」

「確かに全員に学園を休ませるとなると不自然ですよね。あの魔道具が役に立っているようで、よかったです」

 クリスティーナは自分で作った物が役立っているのを感じて、ホッとしてジークハルトを見ると、酷く憂鬱そうな顔をしていた。


「何かあったんですか?」

 今日は元々口数が少なかったが、なぜまた余計に暗くなったのかと小首を傾げた。

「いや、大したことじゃないよ。ティーナのことは俺が守りたかったんだけど、いつも守られているのは俺の方だなと思って」

 クリスティーナは自嘲するように言うジークハルトに瞠目した。


 そんなことを思ってるなんて思いもしなかった。

 いつも自信ありげな王子様のイメージで。


「本当は魅了の魔法なんて使わせたくないし、矢面には立たせたくない」

「あの、えっと、私なら大丈夫ですよ」

 そんなことを言われるとは思っていなかったクリスティーナは困惑の表情を浮かべた。


「俺が嫌なんだよ。ティーナがみんなの為に頑張ってくれているのに、勝手だよな。ごめん」

 悲壮な様子にクリスティーナは思わず、俯いたジークハルトの頭を撫でた。


 きっと何かあったのだろうなと察するものの、何も言わないジークハルトが何を抱えているのか分からないので、どうすることもできない。


「私はジークハルト殿下が味方でいてくれて、とても心強いんですよ。あなたが思ってる以上に。前回の私はただ断罪を避けたくて、ジークハルト殿下になるべく関わらないようにしてました。だけど、間違ってたって分かりました。ちゃんと話せば、殿下は荒唐無稽な話でも聞いてくれたし、一緒に色々対策を考えてくれて…嬉しかったんです」


 ゆっくりと顔を上げジークハルトに微笑んだ。

「そばにいてくれるだけで、安心できます。だから、ジークハルト殿下に守られていると言っていいのではないかと思うんですけど」


 ジークハルトは暫く黙ってクリスティーナを見た後

 、ふっと息を吐いて表情を緩めると、ぽつりとつぶやいた。

「いつまで殿下呼びなんだ」

「へ?」

 聞き取れなくて、聞き返すクリスティーナに苛立たしげに言った。

「クリスティーナは俺の婚約者なんだから、そろそろ殿下呼びはなしだ」

「え…」

 初めて愛称じゃなく名前で呼ばれて戸惑うクリスティーナに無言の圧力で促す。

「ジッジークハルト様?」

 クリスティーナが顔を赤くして、辿々しく名前を呼んだ。


 なに。この羞恥プレイ。

 じっと見られながらなんて、恥ずかしすぎる。


「様もいらないけど、まぁ、いっか」

 ジークハルトがにっこり笑った。


 恥ずかしさに赤さがまだ抜けないクリスティーナの頬に、温かい柔らかな感触を感じた。


 え?え?え〜⁉︎

 いっ今のはキッキス⁉︎


 頬を手で押さえて、呆然としているクリスティーナにジークハルトが声をかける。

「行くぞ」

 気づいた時には、もうジークハルトはドアの前に立っていた。

「はっはい」

 クリスティーナは慌ててジークハルトの後を追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ