表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/35

2.継母と義兄とは仲良くなりたい

 残念ながらジークハルトとの婚約が回避できなかった。

 これがゲームの強制力?


 そして、今日はお父様の再婚相手とその息子がやって来た。

 お父様の背中に隠れながら様子を窺う。

「ほら、クリスティーナ、今日から君の母親になるパメラと兄のレイモンドだよ。挨拶して」

 パメラは茶色の髪に緑の瞳の上品で優しそうな人だった。

 レイモンドは黒髪に緑の瞳の整った顔立ちの少し大人びた少年だ。

 かっこいい。これは将来モテる。

 それにしても、見たことがあるような気が…

 レイモンド、レイモンド、レイモンド…レイモンド・ラグリー!攻略対象者の公爵家の息子ってクリスティーナの義兄だったのか!

 ゲームの中のレイモンドの成長後の姿が頭の中に浮かんだ。

 前世の自分の好みど真ん中の推しキャラ、それがレイモンドだった。


「クリスティーナです。よろしくお願いします」

 内心の動揺を抑えて挨拶をすると

「よろしくね。クリスティーナさん」

 パメラが優しく微笑んだ。

「レイモンドです。よろしくお願いします」

 緊張しているのか、レイモンドは硬い表情だ。


 クリスティーナはお父様を取られた気になってしまって、新しい家族とうまく馴染めなかったけど、私はできればうまくやっていきたい。

 そして、推しキャラ、レイモンドから断罪されるかも知れない未来をなんとかしたい!

 でも、あんまり近過ぎると、ローラがレイモンドを選んだ時、私が邪魔になったりするのかな?


「お母様、お兄様と呼んでいいですか?」

 どんな距離感がいいか分からないけど、仲が悪いよりは良い方がいいだろう。

 いや、是非ともレイモンドと仲良くなりたい。

 お父様は私がすんなりと受け入れたことに、ほっとした表情をした。


「もちろんよ。そう呼んでくれると嬉しいわ」

 パメラお母様は嬉しそうに口元を綻ばせた。

「僕もそう呼んでもらえると嬉しいよ」

 レイモンドお兄様はほっとしたような顔をした。

 大人びているとは言え彼も12歳の子どもなのだから、受け入れられるか不安だったのだろう。

「私のことはティーナって呼んで下さい。何か困ったことがあったら、言って下さいね」

 クリスティーナはご機嫌な様子で元気よく言った。

 二人とも優しそうだし、うまくやっていけそうでよかった。




 パメラともレイモンドとも普通の家族程度の交流を心がけた

 結構仲良くやっている方だと思う。

 レイモンドはとても優秀で、お父様の実子ではないものの、問題なく公爵家を継げるだろう。


 問題のジークハルトとの仲は必要以上に会わない、関わらないようにしているので、悪くはないはずだが、全くもって親しみを感じることがない関係だ。

 もしかして、これは仲が悪いって言うのかしら?

 まぁ、どうせローラが現れたらクリスティーナのことが邪魔になるんだから、どうでもいいわ。



 お父様が再婚して二年後、私に弟ができた。巻き戻る前にはいなかった弟だ。

 クリスティーナが新しい母親と兄を受け入れて、家族の関係性が変わったからなのか分からないけど、弟のシオンはとてもかわいい。



 弟を溺愛し、パメラとレイモンドともそこそこ仲良く、王妃教育に忙しく過ごしていたクリスティーナはすっかり自分が悪役令嬢であることを忘れていた。

 そのことを思い出したのは学園に入学してからだった。



 ローラがジークハルトと仲良さそうに話す姿をよく見かけるようになり、高位貴族令嬢たちがローラを疎ましそうにしている。

「クリスティーナ様、あの分を弁えない者に注意しなくていいんですか」

「男爵令嬢風情がジークハルト殿下に近づくなんて!」

「婚約者がいる男性にあんな風に馴れ馴れしく触れるなんて信じられませんわ」

 クリスティーナに不満をぶつけてくるので、勘弁してもらいたい。

 前までのクリスティーナならともかく、今のクリスティーナはジークハルトにこれっぽっちも興味がないのだ。


「まぁ、そんなに気になさらなくても構わなくってよ。私たちは所詮は政略なんですもの。幸いにも、まだ結婚をしてないんだから、あの方がいいなら、婚約を解消すればいいのよ」

 本当に今にも婚約解消を言い出しそうな程、淡々としたクリスティーナに令嬢たちの方がギョッとした。

「きっと、もの珍しいだけですよ」

「そうですよ。いつも完璧なクリスティーナ様を見てるから、ちょっと興味を引かれただけですよ」

 慌てて、フォローをする。

「浮気する男だと今分かったのは僥倖よ。貴方もそう思わなくって?」

 ローラはジークハルトだけではなく、他の攻略対象者とも仲良くしている。

 令嬢はその中の一人、宰相の息子サイオンの婚約者だ。

「そっそうですね」

 顔を引き攣らせている彼女に更なるアドバイスをしておく。

「しっかり証拠を今のうちに掴んで、相手の有責で婚約を解消する手立てを整えておくべきですよ」

 勿論、クリスティーナもそのつもりで、着々と証拠集めをしている。

 今回はローラを虐めたりしないし、婚約破棄ではなく、ジークハルト有責の婚約解消にしてもらわなくてはね。

 クリスティーナは自由になれるその時が来るのを、今か今かと待ち構えていた。


 ただ一つ残念なことは、レイモンドもローラの側に侍っていることだ。

 ゲームのシナリオ通りだから仕方ないのかもしれないが、ゲーム内と違って家族の仲はいいからローラに惹かれないかもしれないと思っていたので、少し辛い。


 興味のないジークハルトはともかく、すっかり仲良くなったレイモンドが離れていくのはさみしかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ