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11.またまた婚約

「ティーナがさっき言った通り、パワーバランスやなんか色々あるけど、一番の理由はティーナが優秀だからだよ」

 何で今になって婚約話が出るのかと問えば、ジークハルトはニヤリと笑った。

「君はどう思っていたか知らないが、あの勉強会は王妃の指示で行われていた。未来の側近と王妃を見定めていたんだ。そして、その為の教育だった」


 え?どういうこと?

 最初っから王妃教育の一環だったってこと?

 そんなバカな…

 一緒に勉強しようって言い出したのは私だったはず。

 でも、王宮で一流の教師陣に教えられたのは…


 今の今まで、ただの勉強会だと思っていた自分を殴ってやりたい。


「じゃあ、ジュリアは?」

 あまりのことに頭を抱えてしまったクリスティーナは恐る恐る尋ねた。


「魔力検査の結果で 完全にティーナに決まったから、その後はティーナの巻き添えかな?でも、ジュリアはサイオンと婚約することになってるし、一流の教育を受けられて、親睦も深められたと思えば、悪い話じゃなかったんじゃないか」

 そんな爽やかな笑顔で言われても!

 黒い笑顔が見え隠れしてる気がする。


「ごめんね。ティーナが望んでないのは分かってたけど、逃してあげることはできない」

 いやいや、絶対逃さないって目ですよね!

 どうやらジークハルト殿下の興味を大いにそそったらしい。

「その代わり、今回は絶対婚約破棄しないからね」

 にっこり笑ったジークハルトを見て、なんだが急にどっと疲れてしまった。

 ジークハルト殿下との婚約は強制発動するものらしい。

 また巻き戻ることを考えたら、婚約自体避けたいところだが、避けられないなら諦めるしかない。

 ため息を吐きたいのを何とか我慢する。

 これ以上、幸せが逃げたら困る。


「お願いしますよ。今度は何歳から始めることになるか分からないし、またやり直しは勘弁してもらいたいんで」




「お姉様、おかえりなさい!」

 公爵邸に帰って来ると、真っ先に弟のシオンが出迎えてくれた。

「ただいま。シオン」

 シオンが抱きついてきたので、思わず抱き上げて頬擦りをする。

 ぷにぷにほっぺがかわいい。

 癒しだわ。

 まだ二歳のシオンは顔立ちは父親のラグリー公爵似だが、パメラの茶色の髪に緑の瞳を引き継いでいて、かわいいことこの上ない。

「お姉様とあちらで本を読みましょうね」

 クリスティーナは最近の一番の癒しであるぷにぷにの小さな手を取って、いそいそとシオンの部屋へと向かった。




「ティーナは今日、ジークハルト殿下と会っていたのか?」

 夕食後、クリスティーナは父親に呼ばれて執務室を訪れていた。

「ちょっとお聞きしたいことがあったので」

 何で知っているのかと少し疑問に思いながら、答えた。

「じゃあ、殿下との婚約をティーナが承知したというのも本当なのか?」

「え?承知したって言えば承知したのかしら」

 ラグリー公爵はがっくりと肩を落とした。


「え?ダメだったんですか?王家からの申し出で、あれだけ外堀を埋められてたから、受けなければならないかと思っていたんですけど」

 前回も前々回も婚約していたのだから、そう言うもんだと思ってた。

「いや、確かにそうだな。そうなんだけど、ティーナが承知しなければ無理だと引き伸ばしてたんだ」

 思ってもいなかった父親のがっかりした姿に、思わず笑みが溢れる。

 政略的な婚約だったとしても、お父様はちゃんと、私の意思を尊重してくれようとしていたのね。

 それが分かっただけでも嬉しい。


「ごめんなさい。お父様がそんなこと考えていてくれたなんて気づかなくって」

「いいんだ。いずれは受けなくてはならないものだった」

 ラグリー公爵は諦めたようにため息を吐いた。




「婚約おめでとう」

 久しぶりにジュリアとシリウスを公爵邸に招いてお茶会をしていると、ジュリアがニコニコしながらお祝いの言葉を口にした。

「ありがとう。なんだか知らない間にジュリアたちを巻き込んでたみたいで、ごめんね」

 申し訳なさそうにするクリスティーナを見て、堪らなくなったのか、クスクスと笑い出した。

「気づいてなかったのはティーナだけよ」

「へ?」

 信じられない思いでジュリアを見て、それからシリウスを見た。

 二人はニヤニヤしながら、それを誤魔化すよう紅茶を口にした。


「僕は王宮で勉強会することになった時から、そうなんだと思ってたよ」

 シリウスが肩をすくめた。

「ティーナが優秀なとこを発揮する度に、あぁ、また一歩王太子妃に近づいてるなって思ってた」

「何で⁉︎言ってくれたらよかったのに!」

 そうしたら、わざわざ王宮でのお勉強会なんて参加しなかった。

「え〜、そんなことして、ティーナが勉強会から抜けたら殿下に恨まれちゃうよ」

「そんなことで恨まれないでしょ」

「本当に知らぬは本人ばかりなりだね。まぁ、おいおい殿下から聞けばいいよ。僕の口から言って変に拗れたりしたら困るし」

 なんなんだ、それは。

 中途半端に話を聞いて、気持ち悪い。

 ジュリアも隣で頷いている。

 これ以上、何も教えてくれなさそうなので、諦めて違う話題に移ることにする。


「それはそうと、私、学園に来年、前倒しで入ろうと思ってるの。二人はどうする?」

「それは、早く殿下と一緒に学園に通いたいから?」

 シリウスがニヤニヤしながら訊いてくる。

「違うわよ!」

 明らかに揶揄ってるシリウスに咄嗟に否定する。

「勉強会もなくなったし、毎日結構、退屈なのよ。学園の勉強はあれより易しいらしいから、なんとかなると思って」

「ティーナは王太子妃教育があるんじゃないの?」

 ジュリアが不思議そうに首を傾げた。

「勉強に関しては、もう終わってるらしいし、マナーやダンスもこれ以上必要ないって」

 知らない間に勉強させられていて、前回身につけたマナーやダンスは完璧だとお墨付きをもらった。


「なるほど…さすがだね。それなら、僕もティーナと一緒に入れるようにしようかな」

「じゃあ、私もティーナと一緒に通いたいし、頑張ってみるわ」

 二人も一緒に入学の手続きを取ってくれることになった。

 前回操られていたシリウスをローラと同じクラスに残すのは心残りだっただけに、ほっとした。


「二人が一緒に行ってくれると心強いわ。これからもよろしくね」

 クリスティーナは二人と一緒に学園に通えるのが嬉しくなって、ニコニコと微笑んだ。

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