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5 ターシャ2


 これまでの記憶を抱えたまま赤子として生を受けるならかなり厳しいな、と思っていたが、そこはやはり非実在世界なだけあった。ターシャが物心ついて、この世界での教育を開始するその日から、私の記憶は彼女と同居するようになる。ターシャからすれば「思い出した!」というような感じだろうか?これが“異世界転生”……。


 ああ、今すぐに過去にかえって書き物の続きをしたい。きっと”転生感覚”を知った今ならもっと名作が書ける、そういう予感がする。全然そんな状況じゃないけど。


メイド―名前も覚えていない―が私の顔色をうかがう。

「……どうかされましたか、ターシャお嬢様……?」

「!! なんでもありません!」

 意識の入れ替わりで身内の名前もわからない、赤子同然の知識量になったなどとは口に出せない。メイドも教師も怪訝そうな様子で、この家の歴史と、この世界のことについて教えてくれた。以前私の創った世界とはいえ、端役の家庭環境までは覚えていないからありがたいことだ。

 本当はあなたの名前とこの屋敷の間取りについて教えてほしいのですけど。


 危なげなく一日を終えて、一人で部屋にいるうちに、私は今後のことを考えることにした。

「私は、これからどうすればいいんだろうか?」

 例えば“ふつう”の異世界転生なら、私は本来のストーリーから外れて何らかの方法で幸せになることを目指すのだけど、

「それで本当にいいのだろうか?」

 何もわからない。いつまた死んで……どうなるのかもわからない。誰も答えをもっていない。

「これでは、人生をまた新たに始めるのと何も変わらないじゃないか」


 そのまま、その日は一睡もできずに朝を迎えた。



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