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私の人生は、仕事中-空想中ともいう―にあっけなく幕を閉じてしまった。これ、死ぬのかもしれないなと思った時にはもうほとんど自分の体は自分のものではなくなっているようだった。
ぼんやりと、死について思いを巡らせて……そこからは、何もわからない。
なにもないというのも違うような……感覚すべてがまさに“なくなってしまった”という具合である。
私は死後の世界があるとは思っていなかった。死後の世界も、私の大事な“空想”の一つに過ぎなかった。
だから、急に物体としての“わたし”の感覚がかえってきたとき、かなりの衝撃を受けることとなる。
急に眼が見えるようになった。意思で閉じていた眼を開くのとは違う、朝目を覚ました時のような突然さである。
「ああ、何かやってたね……これ」
目に入ったのは天秤を持った、男……だろうか、人と生き物のあいだの存在と、そこに乗った心臓。
私の心臓だ。
なぜそんなことがわかるか、よくわからない。
けれども、自分の手が自分でわかるように、私の臓器がそこにあって、私にはそれがわかるようだ。
私の肉体がどうなっているのか、気になってしまったが、確かめることはできないようで、私は私のことを見ることができない。
「よくないよ、これはよくない。人を見世物にして働いていた人だ。ほかでどう頑張っていても厳しいだろうね。……まあ、頑張ってもいなかったようだけど」
私の静かな混乱をよそに、その生き物はそう続けた。
私のことを、推し量っているようだけど……。
「あの」
「どうしようかな、ここのところの私は平和主義だからね。できれば、次に進んでもらいたいものだけど」
私の話をしているのに、まるで私がそこにいない、いなくてもいいかのようなふるまい。私のことがどうでもいいのか、よくないのか、微妙なところだ。私の進退も関わっている―ように推測できる―以上は、静かに、彼の言葉を待つことにした。




