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ナイトメア・シンドローム  作者: Riviy
七章 その感情、悪神なりて
89/95

第八十四ノ夢 行き着いてしまった悪夢の行き先は

お久しぶりでございます……長らくお待たせいたしておりますm(_ _)m(深々としたお辞儀)

書き溜めてあるのを少し放出です。新作投稿を前に今作を終わらせるか、書けるかな…とプロットを確認しましたら、あとちょっとで終わりでした。「あとちょっとじゃねぇか!!」とリアルで笑い転げてました。

設定やプロット、投稿済の話等々見ながら少しずつ完結に向けて進めて行けたらと思います。生き残ってるキャラの口調と性格が…()

長らくお付き合いいただきありがとうございます。ではでは、続きです。


前話からの超簡単なあらすじ

主人公、和夜退場により相棒、明石絶叫。


「和夜……和夜ぁああああああ!!」


涙に塗れた絶叫が響く。仄かな蜂蜜色の光に包まれた和夜の亡骸を抱き抱え、明石は絶叫する。もう目覚めない、話さない、笑わない。分かっていたことなのに胸が張り裂けてしまいそうになるほどに痛い。体を引き裂かれてしまったかのように息苦しい!それほどまでに愛おしかった、嫉妬してしまうほどに愛していた。仄かな光が消えてしまえば、悪神と契約をした生贄(和夜)は消えてしまう。悪神と契約した者が死んだ時に現れる光は、ある意味魂であり、人間の依代とも言える。それが神の遊び場(ココ)での定め。人柱と()()()()()()()彼らの最初で最期の終わり。勝利にて勝ち取った自由なんて、アダムとラスのように繰り返すだけ。それでも、希望を求める。生を求める。それが、『嫉妬(明石)』が愛した和夜だった。まぁ明石も知らないことが多いが。閉じられた瞳から涙を流し、明石は嗚咽混じりに泣き叫ぶ。もう、せめて朽ちていく消えていくこの体だけは失わせないとでも言うように。

その時、カツン……と甲高い音が明石の耳に入った。もう此処には悪神と契約した人柱、生きている人間は存在しない。いるのは、何故か己を保っている明石と管理者だけ。明石は管理者がいることに気づきながらも和夜を抱きかかえていた。そうしなければ管理者に奪われてしまうとでも言いたげに。涙を雨のように降り注いで、恵みの雨を与えようとする。そこにはなにもないのに。そんな明石をーー管理者はあの本を持って立ち尽くして見ていた。震える小さな背中は悪神とは到底思えないほどに弱く、力なき弱者であり泣き叫ぶ少女であった。明石に手を一瞬伸ばしかけたのは、いつもの癖だ。管理者は自分が伸ばしかけた手を見下ろし、その手で本を開いた。真っ白なページに刻まれる今回の殺し合い。何度も見た神々の遊びに、いつの間にか声を上げることさえ諦め、憂いた。その行為さえ、明石には憎らしい。


「……終わったんですね」


淡々と、けれど何処かホッとしたような管理者の声色に明石の泣き叫ぶ肩がピクリと動いた。明石は和夜の亡骸を消え失せ魂となる瞬間まで抱きしめたまま、管理者を振り返った。目は開かれていないのに、睨まれたような錯覚に陥ってしまうのは管理者が抱える罪悪感の表れにほかならない。


「ねぇ、満足?」

「え?」


意味がわからないと言わんばかりの管理者の間抜けな声に明石はギリッと歯を噛んだ。彼女が勢いよく管理者の方へ体を向ければ、和夜の体は世界に忘れ去られた人柱として人形のようになっていた。琥珀に包まれた光は和夜の魂を引き連れ、そうして体も引き連れてこの忌まわしい場から逃れようと光を放っていた。明石は冷たい和夜の頬に愛おしげに頬釣りをすると床に横たえた。名残惜しそうに和夜が消えるのを待つと、明石は見えない瞳で管理者を睨みつけた。ぺたりと座り込んだ足はもう動かないのか、見えないはずの瞳と薄ら笑いを浮かべる口元だけが管理者を責め立てる。


「満足した?全員いなくなったよ……和夜も、フジも、みんな!悪神ボク以外!これが欲しかったんでしょ?!カミサマは満足したでしょ?カミサマの思惑通りだったでしょ?」

「なに、を」

「とぼけないでよ」


ゆっくりと、管理者が明石に近づいているのに明石が管理者を追い詰めているような、圧迫感。首を絞められているような感覚に息が詰まったのはどちらだったか。そこには殺意と敵意が共存していた、嫌味なほどに仲良く共存していたのだ。


「カミサマはボクらが邪魔だもんね?だから、だから契約者を人柱にして悪を抹殺しようとする。ボクらを絶望させて、ねぇ。ハハッ……でもさぁ、殺し合いさせて愉しんでるだけでしょ?ねぇ?」


首を傾げて笑う明石はまるで狂った人形のようで、ラスのようにも見えた。殺し合いの場で正常を保っている方が異常なのだ。普通ならば明石のように狂ってしまう。アダムとラスのように『憤怒』へと身を委ねてしまう。いや、委ねなければ生きていけない。それをこの場を設け、悪神を産んだ神々は気づかない。


神々(みんなみんな)悪神ボクらから全部奪っていく!愛したい人も愛したかったモノも、愛する人も全部!」

「それは……」

「アッハハ、なに?自分は違うとでも言う気?」


真っ赤に染まった手を頬に当て、何処か恍惚の表情を浮かべて明石は言う。明石は見えない世界で管理者を責め立てる。それこそが正義だと云うように。()()()()()()()()の務めと言うように。管理者は明石を労るように肩を叩いた、がその手を明石は真っ赤な手で勢いよく振り払う。明石に振り払われた衝撃で管理者の手にあった本が床を滑っていく。


()()()()()()()()くせに慰めとかやめてよ。ずっと、ずっとカミサマの手のひらで踊って嘲笑ってたくせに!ボクらにとって、最初の希望で、最後の絶望だった管理者キミには到底分からないよ!悪神ボクらのことなんてっ!」


立ち上がろうとしたのだろう明石だったが、腰が抜けているらしくすぐに座り込むと大きく肩で息を吐いた。その姿さえ痛々しく見えてしまった管理者だったが、明石の気持ちも痛いほどわかった。何度も目の当たりにした絶望の光景。けれどそれを伝えてなんになる?『生き残った者が自由となる、望みを叶えることが出来る』、希望を与え、本当は、絶望を与えるだけ。黙ってしまった管理者に明石は嘲笑を浮かべた。


「全部、ゼンブ、事実だよ。満足した?ボクから奪って、()()()()()()()()()()()()()満足した?!」

「それはちがっ」


明石の言葉に咄嗟に管理者が反応すれば、明石は先程と同じ嘲笑を浮かべていた。


「なにが違わないの?事実でしょ?最初にボクから、()から奪ったのはキミだよ……()()()()


ゆっくりと、ゆっくりと開かないはずの明石の瞳が開かれる。厳重に封をしたはずの、鍵を閉めたはずの箱の中。仕舞い込んでいた箱ーー明石の瞳はがらんどうの黒曜石。くり抜かれたはずの瞳が宝石のように機能を果たすことなく、肌の、本来眼球が入るであろう空洞に収まっていた。それは義眼だった。いや、ただの義眼ではなく、憎しみを込めた義眼だった。誰も見ることもなく、明石が見ることもない、まさしくがらんどうの瞳が静かに()()と呼んだ管理者を見つめていた。


「……数百年ぶりに呼ばれましたね、君から」

「ボクにはキミをそう呼ぶ資格なんてないかもしれないけれど、でも、懐かしくでもなった?義兄さん?」


がらんどうの瞳が管理者を見上げる。その瞳ならざる瞳に吸い込まれる感覚に陥りながら管理者は、カラカラに乾いた喉を賢明に動かす。そう、管理者は明石のかつての義兄で、明石が和夜に語った『嫉妬(全ての始まり)』だった。そもそもこの殺し合いさえも神々の盤上の、チェスにすぎない。だからこそ、何度も何度も巡り合う。この、穢れた愛しい悪神と云う悪夢の中で、輪廻を貪り食らう。この悪夢という名の愛憎はいつから始まったのだったか。もう、此処にかつて愛していた義妹はいない。いるのは、自分と義妹が壊して作り上げた悪神という悪の化身であり感情()を求めた哀れな獣のみ。嗚呼、本当に私は愚かだ。フッと鼻で自らを嘲笑う管理者だが、それは明石にとっては自分を笑っているものと思ったらしく、がらんどうの瞳を歪ませた。


「ねぇ義兄さん、本当に、本当に悪いのは、奪ったのは誰?教えて、教えてよ管理者ぁ!!愛しい人を奪った罰!?世界に、神に敵対した罪?!なんなのさぁあああ!!」


咆哮のような懺悔、懺悔のような問い。いつまでもわからない答えに管理者は明石を見下ろし、小さく肩を落とした。落胆したわけでもなくただただ明石の言葉に同意を示すような、よくわからない態度。それに余計、明石の怒りは募るが管理者がそう思ってしまう理由も理解していた。だって


「ボクらは()()()を分かち合った()()()()()()義兄妹きょうだいなんだから」


同じ名を奪い与え、そうして受け継いだ二人の家族であり義兄妹だったから。明石の、自分が犯させた罪に管理者は、かつて明石と同じ名を名乗っていた彼はヴェールに包まれた瞳を、黒曜石を模した瞳を開けた。

投稿は不定期です。気長にお待ちいただけたら幸いです。

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