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ナイトメア・シンドローム  作者: Riviy
六章 怒り狂いし未来へと
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誰かがしたためた日記


また、誰かが……居なくなった。それは神々にとってはいいことであっても彼らにとっては死であり生であり終焉だった。長い時が恐らく経った地上ではもはや人柱として捧げられた彼らのことを覚えている者は一人もいない。全員、過去の人間となってしまった。誰も人柱のことなど気にしないし気にも留めない。()()が当たり前であると思ってしまえば、それまでだ。例え此処でまだ生きていても、その亡骸は消滅し、魂のみが成仏する。誰一人、地上に戻ることは……嗚呼、やはり()()()の云う通りだ。私は、神様の操り人形で偽善者。嘘とわかっていて、彼らを焚き付けた。これを偽善と言わずになんと言うのだろう。だから、()()()は私を愛し憎んだのだろう。そして、二人は依存したのだろう。何処までもよく似た感情を持っていたから。


この殺し合いもそろそろ終焉。()()もそろそろ終わりを迎える。魂のみとなった彼らの冥福を祈ることは、やはり偽善だろうか。ただ一人残ったのは、嗚呼、あの人か。番狂わせもあったものだ。いや、神々はそれも承知だったのではないか。そう思えてならない。



『傲慢』と『憤怒』。この両者に関わっているのは『嫉妬』だった。なんとも、運命的ではないか。魂となれる『憤怒』と魂のみで、肉体を器とした『傲慢』。似て非なる者達。そう言えば、『憤怒』は怒るだろうけれど、私にはそう見えた。……もっとも、『憤怒』は世界に、神々への怒りという復讐のために此処まで来たのだろうけど。そこまで神々がお見通しだなんて知れば、『憤怒』はどう思うだろう。全て、神々のお遊びでしかない。


碧藤そうふじ茉昼まひる、またの名をフジと名乗っていた、死人であり生贄だった一人。彼女は『嫉妬』の双子の妹で、自分達はずっと一緒だと信じて疑わなかった。けれど、幸福という日常(それ)を壊したのも自分だと決して疑わなかった。()()同様、事件は兄が納得しているように事故だった。でも、人の心は、幼い心はそう簡単に割り切れない……私がこんなことを言うのは本末転倒と言うのだろうが、そうだった。彼女は兄との幸せを願っていた。約束に縋っていた、祈っていた。抗っていた。だからこそ、悪神・『傲慢』は彼女に()()して手を伸ばした。自分のせいだと、悪神のせいだと傲慢にも思い込んで精神を保っていた一人の幼い少女。悪神・『嫉妬』が彼に手を差し伸べたように、彼ら双子は表裏一体だった。不幸で繋がれた強い強い絆。それ

が『傲慢』にとって、美しいものだったのだろう。

彼女はきっと嗤っていた。兄が不幸で自分が不幸を導いてしまったと思っているから。

彼女はきっと泣いていた。私のせいだと思っているから。

彼女はだから動いた。絡め取られた兄との絆のために。

彼女は、語る。全て、私達が望んだことだと。

その結果がもう一度兄によって終わりを迎えることだなんて、なんて皮肉なことか。その結果さえ、彼女が望んだことなのか、それとも兄との絆を、依存を壊すための選択だったのか。もう、分かるはずもない。だって、彼女はいないのだから。正真正銘、魂さえも消え失せた。輪廻転生の理でもう一度兄と出会うのを夢見ているのだろう。彼女の契約した悪神もまた被害者であり、『傲慢』なりの愛情だったのだろうと思う。悪神・『傲慢』と彼女は似すぎた。肉体という器、脇差に宿った器……『傲慢』にも魂のみで生に、全てにしがみついていた。きっと、皆同じで彼女が一番強かったのだ。手を取り合ってしまった、指と指を絡めてしまった。もう、双子ではなくなってしまっても。手を取り合った男女は、もはや互いではない者を選んでしまったから。それが、双子の終わり方で、新たな依存の開幕だとは知らずに。……こんなことを言えばまた幻滅されるかもしれない……そう考えてしまうほどに私の方が溺れている。


アダムと、ラスと名乗っていた悪神・『憤怒』。二人で一つとも言うべき彼らは、私達が生み出してしまった本当の、本物の悪神だ。けれど、神々はそれを容認しない。だからこそ、彼は愛しい人形ドールと共に復讐を誓い、神々への怒りを募らせた。嗚呼、神は命を扱っているのでは決してないのに、扱っているのは()()なのに。誤ってしまったのはこちらなのに。世界の秩序を乱す行為を『憤怒』に見出してしまった。もはやそれさえも忘れてこの殺し合いを始めたとなれば、『憤怒』も怒りを募らせるのは当然だ。人形を愛し人形ではない人形を生み出した、「命を与えた人形師(人間)。アダム……本当に彼の本名なのだろうか?一番最初、原初の悪神。何百年もの間、独りぼっちだったアンバランスな人らしくて人らしくない人物。人の感情、そして欲望、罪を模した悪神という人間の器。()()が自分達の欲望を成就させるために選んだ犠牲者……彼は最高傑作と共に此処まで辿り着いた。あと一歩と言う所まで。彼は、彼らは淡々と作業を繰り返していたに過ぎない。怒りを込めているようで込めていないで。古の人形師となった彼らは、人形を得して戦っている。ずっと、魂はアダム、体はラスとして。アンバランスだからこそ全ての悪神を翻弄し、勝利を勝ち取って来た。そんな彼らが敗れたのは必然だったのかもしれない。神々が望んだことなのか、わかるはずもないが。けれどこれだけは分かる。彼らは最初で最期の生贄だった。もうこれ以上、彼らが復讐というーー神々へ向けた怒りを持つことは恐らくない。だって、彼らはすでに『嫉妬』と云う悪神に敗けたのだから。これで良かったのかもしれない……神にとっては。




……きっと私はまた、後悔する。なら、ずっと書き留めていよう。それが偽善だと()()()に罵られようとも私にとっての救いだからと。嗚呼、でも……本当は、本当のことを()()()に言えば良かった。後悔しかしていない……ふふ、だから……



「日記は続く。懺悔と偽った言葉を後悔と改めかな見守ると宣言しながら罵倒する。気づいていて、気づいていないふりをしてただただ馬鹿げたことを繰り返す。()()()の言う通りに、自分を偽り正当化して、愛したふりをする。一番、()()()が望んでいなかったことを言い連ねながら。それを、神は嗤う。


ーーこの日記は、もう一柱ひとりの宿り主で犠牲を慮ったばかりに命を投げ出したある人の物語」



申し訳ありません……!来週もお休みをいただくかもしれません……!

最近、気温の変化とリアル事情で創作が思うように行かずだし、思いつかないしで、最大のスランプ状態です……ホンットにすみません!

ちなみに、この日記、もう誰のかわかりますよね…?

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