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ナイトメア・シンドローム  作者: Riviy
五章 求めたのは絶対幸福な双子の運命
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第五十八ノ夢 回想 それが私達の運命だった



私は、兄さんが大好き。兄さんも私が好きで、私も兄さんが好き。私達はその名の通りに一心同体で、互いになくてはならない存在。生まれる前から、生まれた後も一緒。だから私は、兄を、双子の兄を、いつまでも捜し続けるのーー





『大和国には『四武華よんかぶ』と呼ばれる武芸に長けた一族が存在する。そのうちの一つ、藤には二人の子供がいる。当主は二人のうち、長男に当主の座を譲るつもりではあったが、長女の武にも長男とは違った目を見張るものがあった。さすが武芸を得意とする一族ではあったが、当主は子供達に武芸を教え、その意志を聞いてからどちらかを次期当主とするかを決めることにしていた。その間、次期当主候補は長男となっており、彼もまた、「父親のように逞しくも鋭く大切な人を守る力を身に付けたい」と豪語していたのもあり、また長女も「兄さんのサポートをして、大切な人を守る」と主張していたことも当主の考えを後押ししていたのだろう。世間的には長子である長男が次期と見られていたが、正統な時期当主を決定するのは子供達が成人する二十歳とし、二人の愛しい子供達の適正を見極めると共に、将来を考える時間を与えた。なにも戦いだけが未来ではないのだ。このご時世、戦いはほぼなくなっており、『四武華』の出番も少なくなっていた。国同士の小競り合いも減少し、他の三家ーー菊・桜・梅とも「役目は終わりかもしれない」と笑いながら話していた。

そんな些細な日常が崩れ去ることを誰もが知らなかった。』



十年前ーー



私と兄さんは、いつも一緒。図書室で本を読むのも、お手伝いさんに見守られながら武器を見るのも、倉庫を探検するのも、勉強するのも、他の家の子達とも遊ぶ時だって一緒だった。男と女、似ているようで似ていない私達。何処までもそっくりで、違う私達。互いを見つけては笑う私達。互いに手を離すことも出来なかった兄妹。私達は双子。一卵性とか二卵性とかはよくわからない。多分、()()()()()()()()()()一卵性だとは思う。兄さんと一緒にいると安心出来て、そこに私がいるみたいな気がした。兄さんもそうだったと思う。私達は二人で一つの双子だったから、二輪の藤の花だったから。


今日は、私達の誕生日。兄さんは昨日から風邪を引いてしまっている。遅くまで私と一緒に図書室で本を読んでいたのがダメだったみたい。お風呂上がりにちょっと冷えた図書室で何時間も読んでたからかな?それなら、なんで私は風邪を引かなかったんだろう?兄さんと同じなのに。


「ねぇ、なんでかな?父さん」


ソファーに座った父さんの膝の上で寝転がって私が言えば、父さんは優しい笑みで私の頭を撫でてくれる。


和夜かずやは最近、朝に鍛練をしていたからなぁ。それもあったのかもしれない」


兄さんが鍛練してた?私、知らなかった。私も今度から朝早く起きて鍛練しようかな。兄さんに置いていかれちゃう。


茉昼まひるは、和夜の助けになりたいから鍛練をするのかい?」


私の心中を言い当てて父さんが言う。「うん!」と元気よく頷けば、父さんはちょっとだけ困惑した表情を向ける。変なの。でも、どうでも良かった。そのあとに頭を撫でてくれたし。胸元に抱き締めていた大事なお気に入り『華姫様の物語』を持ち直して、ソファーから降りる。


「和夜の部屋に行っては駄目だからね」

「わかってるもーん。こんな時まで兄さんに甘えたりしないもん」


もう!父さんったら!プイッと怒った風に顔を背けながら自室に向かう。父さん付きのお手伝いさんが「可愛らしいですね」って父さんに微笑みかけていた。私が今までいたのは台所に近い方の居間。扉を挟んだ窓際には憩いの場となっている畳の部屋があって、そこも居間って呼んでる。畳の部屋には炬燵もあるから寒くなってきた今の時期には大体みんなあそこに集まるから憩いの場。その憩いの場には家宝の刀が太刀掛けに置かれて鎮座している。その後ろには神々しいほどの 掛け軸が家宝を輝かせている。私達碧藤家一族の守り刀。私は守り刀を一瞥して、自室に行く。自室に行く最中に何度かお手伝いさんとすれ違う。全員に挨拶してようやく自室に辿り着く。隣は兄さんの部屋。母さんとお手伝いさんが兄さんの看病に当たっている。壁越しに兄さんの部屋の様子を伺いながら私はベッドに寝転がって『華姫様の物語』を開く。今日の夕食は誕生日だからって豪華になるはずだったけど、兄さんの風邪で明日に延期。明日、兄さんと好物食べられるって楽しみだったのになぁー


「……兄さんがいなくちゃ、面白くない」


顔の上に掲げて読んでいた本を胸元に落とす。いつも兄さんと読んでたから、一人だと全然面白くない。華姫様は可愛くて格好いいけど、今の私みたいに一人じゃない。いつも誰かと一緒にいる。それこそ、私と兄さんみたいに。

兄さん、一人ベッドで寂しくないかな?辛くないかな?風邪ってだけなのに、なんか引き離されたみたいで私は寂しい。兄さんも、同じ気持ちなら嬉しいなぁ。


「!そうだ!」


いいこと思い付いた!

兄さんが寂しくないように、私からもなにか贈ろう!そうすれば、私も寂しくないし兄さんも寂しくない!同じものを共有すれば、一緒にいるみたいだよね!そうと決まれば、どうしよう?うーんと起き上がって考える私の視界に『華姫様の物語』が入る。


「そうだ!『華姫様の物語』の番外編、今日発売だった!」


『華姫様の物語』に登場する騎士の一人が華姫様と出会い共に戦うまでの物語、『華姫様の物語~騎士の物語~』が出てる!兄さん、あの騎士様好きって言ってたし、バッチし!でも、兄さんへのプレゼントで被ってないかな?……あ、大丈夫か。いっつも母さんも父さんも私達に欲しいもの聞いてからプレゼントしてくれるし。今年兄さんは耳飾りが欲しいって言ってたもん。なんだっけ、「お揃いの耳飾り」って言ってし私に笑ってくれたから、多分私とお揃いの耳飾りってことだと思うけど……私はそれに「お揃いの武具」って答えておいた。兄さん、嬉しそうだったなぁ。ちょっとずつだけど父さんに鍛練つけてもらってたから、必要だもんね。兄さん、武器は刀で行くのかな?私は薙刀にしようと思ってるけど……母さんが薙刀専門だし……うーん、ま、そこはいっか!プレゼント被らなければ良いもんね!そうと決まれば、早速!私は箪笥たんすから上着を取り出して、お財布もとりだして上着に入れる。兄さんに内緒にしたいけど、誰かに言ってから出ないとなー


「……まっ、出会い頭に会った人でいっか!」


わーい!って叫ぶ感じで部屋を飛び出して階段を一目散に駆け降りる。早く買って兄さんを喜ばせたい!私の思考はそれだけだった。玄関を抜けて入れ違いに入ってきたお手伝いさんに「書店行ってきます!」と言えば、「行ってらっしゃいませお嬢様!お気をつけくださいね!」って答えてくれる。うちは結構?大きめなお屋敷。半分西洋で半分和風っていうよくわからない構成をしている。なんか父さんの前の人、お祖父ちゃんが西洋屋敷を買い取って和風をチマチマくっつけたらしい。私は大きな鉄格子の門を押して開けて近所の書店に走る。今はお昼過ぎだから、走ればまだ間に合う。


「あったぁ!」


書店に駆け込んで新刊が置かれている棚を見れば、良かった、一冊だけ残ってた。茶色の表紙に金色の文字で刻印された番外編。良かったぁと心底安心してお会計をする。


「ふふっ、兄さん……カズ、喜んでくれるかなぁ」


買ったばかりの本を抱き締めて、喜ぶ兄さんを……カズを想像する。多分、寝てるだろうから母さんにお願いして渡してもらおうっと。絶対移しちゃダメだって入れてくれないし!書店から家へ浮き足で帰る。家を一周して裏門から入る。

その時の私は忘れていた。本が買えた嬉しさで、兄さん(カズ)に喜んでもらいたい一心で。仰々しい鉄格子の門にきちんと鍵を閉めなかったことに、裏門をーー半開きにしたまま家に入ってしまったことに。それが、どれだけの不幸を呼ぶか、私達を引き離すか。

私はーー知ろうとしなかった。



「あらぁ、じゃあ茉昼は和夜のために?イイ子ね~」


テーブル越しに母さんが頭を撫でてくれる。家に帰って、母さんに買った本をお願いしたら「寒かったでしょ」って居間に集合していた父さんと母さんにひき止められた。兄さん……カズは薬が効いて眠っているらしくて、お手伝いさん達も起こしちゃ悪いからって汗を拭いている人以外全員撤収して、個々に仕事をしている。テーブルの上に置かれた本を一撫でして母さんがにっこり笑うから、私も笑い返す。


「そういえば、茉昼」

「?なに父さん」

「和夜の風邪が治ったら改めて二人の誕生日を祝うが……」


父さんが言葉を止める。誕生日を終え九歳になったら父さんと母さんによる本格的な鍛練が始まるから、そういうことだろう。重々しい表情の父さんに私も真剣な表情で返す。覚悟は出来てる。私は。

その時、お手伝いさん達の悲鳴と甲高いなにかが割れる音が台所の方角から響いた。悲鳴は、なにかを割って驚いたとかそういう類いのものではなくて、明らかに恐怖に滲んでいて。でも、碧藤家のお手伝いさん達はなにかあった時のためにって多少の武術を身に付けている。なのに、悲鳴……どういうこと?父さんが異変に顔をしかめて立ち上がりながら、傍らに控えていたお付きの人に様子を見に行くよう指示する。母さんは私を抱き締めて、「大丈夫よ」って笑いかけてくる。そこでようやっと私は異変に体が震えていることに気づいた。ガタガタと震えていた体は母さんの温もりでもどうにもならなくて、なにがあったのかも分からなくて、カズが大丈夫か不安になった。


「旦那様!大変です!よくわからない……化け物がっ!」

「なにっ!?」


台所に様子を見に行った父さんのお付きが慌てた様子で帰って来た。化け物……彼が父さんに叫びながら、片手に持った銃で台所にいるであろう化け物に応戦している間にも悲鳴はまるで木霊のように響いている。それはまるで合唱のよう。でも、応戦はほぼ無意味みたいだった。扉越しにこちらへ鮮血が舞うのが見えた。


「あなたっ!」

「茉昼を押し入れに!茉昼、そこに隠し通路がある。そこから逃げろ!」

「兄さんは!?」

「母さんと父さんが助けに行くわ!台所から侵入したってことなら、まだ二階に到達するのに時間があるわ。だから!」


母さんが叫びながら私を今の押し入れに押し込む。その顔はいつもの母さんじゃなくて、戦乙女。不安にかられる私に安心させるように母さんが笑いかける肩越しに、武器をテーブル下から探り当てようとする父さんの姿が見える。現実味がない現状に私は、ただただ呆然と母さんに押し入れに押し込まれた。バタンッと音がして障子が閉められる。途端に訪れる暗闇に私は怖くなって、体を抱き締めた。母さんに抱き締められた温もりが残ってる。怖い、怖い、怖い!でも、逃げなくちゃ……母さん達に言われた通りに逃げなくちゃ……暗闇の中、端に押し込まれた布団や座布団を横目に手探りで父さんが言っていた隠し通路を探す。碧藤家には非常時に備えていくつかの隠し通路がある。それもその一つ。全てが()()()()()()()()()。隠し通路の扉の引っ掛かりを指先に感じた途端、私の意識は、壮絶な言い難い痛みと共に消えた。



永遠に。



































泣かないで、カズ

ウチが作る双子というか兄弟ってこう……こう……極端な……なんかわかります!?好きだからいいけど!?

ちょっと来週は投稿できないかもしれないと言っておきます!と言いつつやるんだきっと!

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