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ナイトメア・シンドローム  作者: Riviy
三章 愛してました、地獄まで
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第三十六ノ夢 侵入不可能を弾いて


広間、もしくは何処か安全な場所を探しているはずだった。なのに、和夜達三人が行く先々は全て、化け物に覆われていた。


ザッと目の前の化け物を刀で真っ二つにする和夜。そしてそのまま振り返り様に背後にいた化け物に刀を振るう。自分の方に来るとは思っていなかったのか、ガラスの破片を握りしめ振り上げた状態の化け物が和夜の目に入る。容赦なく、ズバッと刀を振り切れば、化け物の両腕に切り傷が入る。痛みに一瞬呻いた化け物の隙を見逃さず、和夜は化け物の顔に少し跳躍して蹴りを入れる。油断していた化け物は顔面に蹴りを受け、後方に仰け反っていく。そんな化け物に明石が頭上から扇を振り下ろし、首を切断する。勢いが良すぎて、扇は残像しか見えなかった。まるでギロチンのよう。化け物から出た血を頬に浴びた明石は片手で拭いながら、和夜の元へとやってくる。その足取りが何処か怒っており、地団駄を踏んでいるように見えるのは気のせいではない。


「なんなのホントこれ!」

「落ち着け明石」

「こんなこと今までないよ?!化け物ばっかりってさぁあ!!」


「もう!」と憤慨しながら明石は真横から襲いかかってきた狼の姿をした化け物に扇を振り回し、牙を防ぐ。と、そこに和夜も刀を振り、胴体と首を切断する。途端に化け物は生気を失い、その場に倒れ込んだ。するとフジが倒れた化け物の後ろから現れた。どうやら和夜と明石が呆気なく倒してしまった化け物を追ってきたらしく、握られていた刀が化け物の死に残念そうに輝きを失う。三人の周囲には化け物の亡骸が散乱し、壁や床、装飾品に至るまで抉られた傷や破壊の跡が目立つ。それほどまでに此処は化け物に侵入を許していた。


「『色欲』が関係しているのかな」

「どうだろうねぇ。ボクらは見てないけど、フジが棺見た後に()()だもん。可能性はあるけど」


うーんと顎に手を当てて悩む和夜に明石が扇を閉じたり開いたりして自身を落ち着かながら言う。化け物が現れる前に変わったことと言えば、毒を盛った盛れない事件と、フジが目撃したという棺の中の女性が動いたことだけだ。毒に関しては関係ない気もするが、毒さえ盛れないのに体調不良を起こしたことから、化け物の登場になんらかの関わりはありそうだ。


「……明石」

「なぁに?」

「『色欲』は、モノか?」


和夜の言いたいことがわかったらしく、パシンッと扇を閉じ、閉じた扇を口元に明石は当てる。『色欲』と出会った時を思い出しているのだろう。その間、フジがローブの中から鋭い視線を周囲に向けている。暫く思考したのち、明石は和夜に言う。


「多分さぁ、棺だと思う」

「棺……女性、って、こと?」

「それは分かんないけど、能力とかじゃないと思う。でも、こう何度も起きてるから能力の可能性もあるね」


明石の返答に和夜は頷く。『色欲』の男性は棺がモノに該当する場合はあるが、会ったのは数分。短い間で分かるくらいなら、悪神さえ要らない。まぁ、とりあえず、この状況は『色欲』で間違いないだろう。アダムは意気揚々としていたし、『暴食』は見ていないがあの女性からして化け物を使うとは考えられない。ならば、消去法で事件を起こそうとした『色欲』が妥当だろう。そこで和夜はほぼ無意識のうちに『傲慢』を使役するはめになっているフジを抜かして考えていることに気づき、微笑を漏らした。なんだかんだ違和感とか不思議とか言っておいてフジのことを信頼していることに気づいたのだ。和夜の微笑にフジは不思議そうに彼を見て首を傾げていた。


「とにかく、『色欲』を捜すか。フジが見た通りに棺の中で死人が動いたとすれば」

「うん、原因の一つだろうね」

「捜す……!」


和夜の言葉を受け継ぎ、明石が言い、フジが「頑張るっ!」と意気込む。悪神・『色欲』がモノに宿っていて、棺がなんらかの原因だとすれば、早急に捜し出さなければならない。和夜は倒した化け物を見下ろし、先の廊下を見通す。この先にも化け物がいないとは限らないが、此処が安全とも限らない。進むしかない。そう、背後の二人に一瞥で告げると和夜はゆっくりと警戒しながら歩き出す。その後に明石とフジが続く。すると、廊下の先の曲がり角から足音が聞こえてくる。急いでいるようでタッタッとリズミカルに音を刻んでいる。もしや残党の化け物か?和夜が警戒に刀の柄を握りしめた、その時、曲がり角から見覚えのあるヴェールが顔を覗かせた。


「……管理者」

「嗚呼、君たちでしたか」


曲がり角からやって来たのはフジの落胆というか拍子抜けした声色の通り、管理者だった。右脇には隠し扉を教えてもらった時には所持していなかった古びた表紙の本を抱えている。表紙になにやらタイトルが書かれているように見えたが、管理者が和夜の本を見る怪訝な視線に気づき、胸元に押し付けるようにして隠した。隠す動作で余計に気になったりもしたが、とりあえず頭の隅に疑問を投げ、和夜は大きな疑問から片付けることにする。


「で、どうして化け物がいるんだ?此処は()()()()()()()()()なんだろ」


嫌みを含めて和夜が言えば、管理者は嫌みも含めて「そうなんですよねぇ」と、隠し扉の時のように多少の親しみを持って返答された内容は和夜達と同じ疑問を孕んでいた。


「え?……そっちの、せいじゃ……」

「違うとも言いがたいですねぇ」


多少はあった神サマ側の都合とかではないらしい。というか絶対にあり得ないとも言える。管理者はうーんと悩んだ様子を見せると、自分の背後に化け物がいないか一瞥したのち、しょうがないと、何処か下の子を見るような生暖かい憐憫と慈悲が詰まったむず痒い視線を管理者はこちらに向ける。本当に、何故そんな視線をするのか分からず、和夜は微かに首を傾げ、あの時見た黒い瞳を唐突に思い出した。


「もともと此処は最初に言ったように神聖な儀式の場。つまり神の仮領域と言っても過言ではありません」

「殺し合いなのに?」

「……そこは、ご愛嬌で」


なにがご愛嬌か。そんな文句がフジから殺気として漂ってくる。和夜も同じ文句を管理者にぶつけたかったが、明石のチシャ猫のような歪な笑みに怒りの矛を収めた。


「なので化け物が容易く侵入するなんてあり得ません。あるとしたら……悪神しかあり得ません。神の仮領域であるこの場で、外から干渉出来ないとすれば、内側からの干渉が妥当でしょうから。ですので君たち、リーラ・トイズ・ローズを見てませんか?」

「『色欲』を?見てないし、同じ考えだから捜すつもりだったが」


管理者の説明に納得しつつ、和夜がそう答える。やはり、原因は『色欲』なのだろう。管理者が処罰うんぬん言っていたのを考えると、干渉が毒と化け物に関することであることは容易に分かる。すると、フジが和夜の袖を引っ張り、不思議そうに問う。


「あの女性……ローズって、名前だった、けど」

「リーラ・トイズ・ローズ……同じ名前ってこと?」


フジの些細な疑問に明石が付け足せば、フジはうんとフードを大きく縦に揺らした。確かに『色欲』の男性は棺の女性をローズと呼んでいた。顔立ちは美男美女でお似合いだろうが、どう見たってーー思い出したって兄弟ではないし、結婚していたにしても彼女の名前が後ろについているのは可笑しい。国ごとに名前の表記は違うとは言え、違和感がある。

リーラ・トイズ・ローズという男性は初対面の時から思っていたが美丈夫だ。顔の左半分を覆うさそりの痣はシンボルマーク。パールグレイ色のセミロングで前髪や髪の切っ先がベビーブルーのグラデーションになっていて、ライラック色の瞳。左耳にのみダイヤが二つ連なったベビーブルー色のイヤリングをし、首にはチョーカーと指輪だろうか、リングを通したネックレス。クリーム色のシャツの上に灰色のベストを着、青系のズボンに紺色のブーツ。ズボンの裾はブーツに入れ、腰回りには邪魔にならない程度のアクセサリーがついている。

一通り、『色欲』である彼のことを思い出しても、棺の中の女性ーーローズと兄弟である可能性は低い。ただ二人共に同い色合いがあるだけで恋人同士なのだろう。そんな彼らの疑問を管理者が胸元に押し付けた本を口元に当て答えた。


「リーラ・トイズ・ローズの出身であるディセローナ公国……教国に近いそこでは恋人もしくは近親者が死んだ場合、片割れが望んだ時に限り死んてしまった者の名を連ねることが出来るそうです」

「……よく知ってるな?」


管理者を睨め上げ、何処か探るような眼差しを浴びせる和夜に管理者は見える口元をニィと横に歪めた。その笑みが「これ以上干渉するならお前も処罰しようか?」と脅迫しているように見えて、和夜は片方の口角を小さく上げた。大方管理者が大事そうに抱える本が教えてくれたのだろう。


「とにかく、なにか知っているであろうリーラ・トイズ・ローズを捜さなければ、化け物は終息しませ」


そこで管理者の言葉が途切れたのは、一瞬にして周囲を包んだ異様な気配のせいだった。だが、周囲を見渡しても化け物は愚か気配を発したらしきものはなに一つ見当たらない。どういう?しかし、体を直接刺すような殺気のような気配は続いている。次第に和夜は明石とフジと背中を合わせ、死角を作らないようにしていた。管理者も緊急事態だと分かっているからか、和夜達と同じように背を向け、円を描く。何処から気配がしているのか。分からない現状が恐怖となって襲いかかる。気配がしてもその姿が見えなければ意味がない。ふと、和夜は刀の切っ先が足元に、床にぶつかりそうになっていることに気づき、刀を持ち上げた。上げて、目を疑った。足元に広がっていたのは無数の腕。床から伸びた無数の腕が和夜達の足を掴み、その下の海に似た波紋を広げる空間なのかなにかに引き摺り込もうとしていた。


「っ!足元だ!」

「えっ、なに……ぃええ?!」

「キモチ……悪いっ!」

「……なんですこれぇ」


和夜の言葉に全員が足元の異物に気づき、どうにか手を払おうとするが、払っても払っても手は空間から新たに生え出し、彼らを引き摺り込もうとする。なかには化け物の手であろう鋭い爪がついたものもある。どうにかしなければ、そう思い咄嗟に顔を和夜は顔を上げた。上げた瞬間、待ってましたとばかりに化け物の群れが和夜達に覆い被さってきた。


暗転。

四月は新しいのがまた始まりますね……土日に出せるよう頑張ります!とりあえず、いますよ!←??

次回は来週です!

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