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ナイトメア・シンドローム  作者: Riviy
一章 不老不死の代償理論
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第十四ノ夢 彼という『怠惰』について

明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!と云いつつ戦闘ですぜー!


『悪神・『怠惰』を使役するはめになっているロイ・チェイサー。彼は研究者であり、科学者だ。彼は世界の端に位置する国に所属する研究所である実験をしていた。その内容は不老不死。化け物が出る以前よりも行われていた国、ひいては世界の悲願とも言える実験。その実験(プロジェクト)で彼は副責任者として勤めていた。だが性格は横暴気味で、実験にしか興味がない無頓着。同僚にも実験以外の日常生活では毛嫌いされ、のちに実験は苛烈さを増し、一人、また一人と同僚は消えていった。不老不死、「老いもせず死にもしない」実験は動物を使った実験ではもはや効果を見出だせず、人間もしくは死体で試すしかなかった。また不老不死へ至る薬も配合次第では本人にまで被害をもたらし、そのことも同僚が忌避する原因となっていた。だがこの実験は世界の悲願。国から絶え間なく人材が派遣され、彼はことごとく追い返すかの如く相性が合わなかった。そんな中、最高責任者となった女性がいた。彼女は卑屈な彼の周りをうろちょろし実験を邪魔するこもなく、ただひっそりと影のように立ち実験を手助けし、彼に足りなかった情報や実験を支えた。彼女は彼の知識の領域に、全ての領域に辿り着くほど天才だった。だからこそ気が合った。そんな二人が実験以外でも親密になるのに時間はかからなかった。それに伴い、プロジェクトの雰囲気も緩和し、全員が一つの目的のために向かって歩いていた。


だからこそ、ロイ()は忘れていた。


ある日、実験中に薬品が爆発した。混ぜてはいけない薬品を混ぜたがために起きた事故だった。だが、研究所では事前に危険と判断したものは報告が義務づけられており、事故も起こるはずがなかった。しかし起きてしまった。そしてそれは、ある意味殺人へと発展した。爆発に彼と懇意にしていた女性が巻き込まれたのだ。薬品を誤って混ぜた人物の背後にいたせいで割れたビーカーが勢いよく飛び、破片が心臓と首元の血管を切り裂いたのだ。薬品を混ぜた人物は運良く生還したが女性は重体となり手術の甲斐も虚しく、そのまま帰らぬ人となった。彼自身も近くにいたせいで顔の半分に大火傷を負い、入院を余儀なくされ彼が彼女と再会出来たのは彼女が骨となった時だった。すでにそこに彼女の温もりはなく、体もなければ、魂もない。そこにあるのは彼女の亡骸だけ。そうして彼の手に残ったのは彼女がしていた黒百合のネックレスのみ。爆発の際に爆風に巻き込まれ、金具が外れたためにほぼ無傷で残っていた彼女の形見だった。彼は爆発を起こした人物を恨んだ。自分から愛しい人を奪った人物を、彼女が死ぬ前まで没頭していた愛しい実験を。全ての原因を。しかし、彼は気づかなかった。いや、気づかないふりをして他人に罪を擦り付けていた。


報告を怠ったのは彼だった。


薬品内の成分にある薬品と混ぜ合わせると爆発することを一週間前に見つけ、彼は報告書を書いた。だがそこまでだった。不老不死に使用する薬品の一種であったがために、棚の奥に隠しておけば問題ないのだろうと彼は高を括ってしまったのだ。何分かすれば彼女を含めた全員との実験の話し合いもあり、彼は彼らしくなく浮き足立っていた。淡々とこなしていたはずの実験を楽しんでいた。そのため報告も後回しにしてしまった、怠ってしまった。その結果、人物ーープロジェクトでいうところの新人は棚の奥に隠された薬品をまだ実験に使っていない薬品と勘違いして引っ張り出してしまい、ある薬品と混ぜてしまった。ある薬品を実験に使うため、配合をしようとしていたのだ。そうして、悲劇が起きた。新人は薬品を混ぜ合わせると爆発するという知識を持ち合わせていなかったが、事故であるものの自分のせいだと思い詰めてしまい研究所を退所。彼は報告を怠ったことがのちに判明したものの、不老不死に関しての実験とこれまでの功績により強制退所は免れた。がその事実は研究所の隅々に広まり、プロジェクトへの人材派遣は停止し、副責任者という地位も剥奪された。


全ては彼自身の責任。自分の怠慢で愛しい人を失った。だから彼は研究を続ける。彼女が愛し求めた結果のために、二人で目指した答えのために。不老不死の副作用にすがって、実験に狂喜的にすがって。実験と殺し合いを別のものに捉えて、本当は違うと何処かで分かっていて。嗚呼、彼は怠慢だ。自分の罪に殺されるのをただ待っている。自ら呼び込むこともなくただ待っている。まるで彼女が再び現れるのを待つように。決して現れるはずもないのに。彼女は彼の(怠惰)で死んだのだから。嗚呼、これは罪だ。彼のーーロイ・チェイサーが望む実験の結果だ。押し付けてすがって怠って……愛して。もうそこになにもないのに。あると思い込んで。彼女のーーミーヴァのためにと、実験(殺し合い)を望んだ。


これはロイ・チェイサーの成れの果て。きっと、未来にはなにもない。』


「……なんと、哀れ」


ポツリと呟かれたその言葉。言葉には憐憫さと哀愁さが混じっていて、哀れんでいた。その言葉を、声色を吐き出したのはヴェールを目深に被った管理者だった。管理者は広間で椅子に深く腰を下ろしていた。目の前のテーブルに置いた古びた本を管理者は一瞥する。まるで全てを見据え、見ているかのような本を管理者は何処か不安げに見つめている。そしてその本から目を逸らし、自らが淹れた珈琲に手を伸ばす。今も何処かで誰かが殺し合いをしている。誰が生き残って、誰が生き残るのか。管理者にとっては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。嗚呼、きっとだからこそ、その呟きは宿り主や悪神に向けてでもあって管理者自身も示しているのだろう。


「……可哀想に」


その意味も知らずに。


……*……


「ミーヴァのために、さあ、不老不死の実験を始めよう!」


白煙に飲まれながら二本の刃物を擦り合わせ音を鳴らすロイ。白煙に消えていく彼を睨み付けながら明石が手にした扇を大きく、上段から振り下ろした。ブオン!と空を切る音と共に風圧がまるで吐息のようにロイを包む白煙を切り裂いていく。しかし、そこにロイはいなかった。ロイは白煙を利用し、手術台の方へ身を隠していた。和夜と明石はアイコンタクトで会話し、彼を挟み撃ちにしようと動き出す。手術台を軸に二人で回り込むがロイはなにをしているのか、動かない。それに和夜はなにやら変な雰囲気を感じ取ったが、相手が刃物を二本所有し攻撃を実験としている以上、無抵抗のわけにはいかない。手術台に回り込み、手術台の前方でしゃがみこんでいるロイに向かって和夜は刀を横に薙ぎ払った。が、その一撃をロイは片手の刃物を縦に構えて防ぐと反対側から下りてきた明石の扇ももう一本の刃物で防ぎ、片足を手術台を支え柱に添えて跳躍。勢いを使って二人を弾く。しかし、和夜は弾かれた勢いを利用し一気にロイに詰め寄り、蹴りを放つ。腹に直撃した蹴りを受け、ロイは壁に背をぶつけてしまう。ガラガラッ!と派手なけたたましい音を立ててロイの左腕が棚に当たり、棚の中身を床に撒き散らしいく。その中には薬品もあって、床に落ちては中身をぶちまけていくが大した効果や威力はないらしくただの色つきの水溜まりのようだった。体勢を立て直そうとするロイに明石が横から扇を振り払えば、ロイは刃物を振ろうとする。だが左手の刃物の切っ先が棚に刺さってしまったらしく、振り払おうにも動かない。そこでロイは刃物を諦め、棚にあった物を無我夢中で掴む。少しだけ薄暗い部屋ではなにかまでは明石の目には届かなかったようだが、少し距離が離れていた和夜にはロイが明石に向けて振り払おうとしているのがなにか見えた。それは、濁った液体が注入された注射器。和夜の背筋に嫌なものが走る。


「明石!避けろっ!」

「っえ」


和夜の警告に明石は驚いたようだったが、彼の言う通り、ロイに振り回していた扇を空中で止め、ロイの後ろの壁を蹴り上げその場で一回転。ロイの振り切った攻撃をかわす。その軌道の先を明石が流し目で確認すれば、ロイの手に握られていたのは案の定注射器だった。そのままブンッと右の刃物も振り切られ、明石は空中で一線を扇で受け流し、ロイと距離を取る。ゆっくりと左手に注射器を、右手に刃物を持ったロイが壁を杖代わりに立ち上がる。


「明石、大丈夫か?」


和夜が心配そうに明石の隣にやってくる。明石は優雅に、それでいて妖艶に口元を扇で隠して驚愕を覆いながら彼に聞く。


「あの中身、なんなの?」

「嗚呼、多分俺が眠らされた薬だ。彼が開発した薬で悪神(明石)であろうとも、注射されてしまえば動きが鈍る」


和夜の返答に明石の口元が驚きで歪んでいく。もし目元に包帯がなければその目は大きく見開かれていたことであろう。明石がニヤリと笑うロイに顔を向ける。ロイは心底残念そうに注射器を一瞥し、壁を蹴った。二人の間を引き裂くようにロイが飛んで来、右の刃物を和夜に振るう。それを和夜は刀を縦にして防ぎ、注射器が迫る前に振り払えば、ロイの背後から明石が扇を振る。しゃがんでかわし、ロイは二人の間から抜け手術台の向こう側、この研究室の扉へと向かう。逃げる気か?和夜はそう思ったがなんだか違う気がした。瞬間、目の前で弾けた火花に和夜は思わず片手で顔を覆った。「和夜!?」と明石が心配そうに彼の隣に着地する。和夜は大丈夫だと頷きながら、ロイに刃物のような目を向ける。和夜の表情、混乱した表情にロイは口角を上げて嗤う。薬の効果かと思った。だが、恐らく違う。だって、和夜の目にはーー


「ほぉ?お前は最初の衝撃に耐えられるのか。ますます解剖してみてぇなぁ……!」


和夜の目にはロイが二人写っていた。いや、片方は何処と無く薄く透明でロイが右手に持つ刃物を左手に持っている。目の当たりは空洞で何処までも吸い込むような穴がこちらの恐怖を掻き立ててくる。透明な以外はまるで水面に写りこんだもう一人のロイだが、もう一人の気配に明石が歯軋りをする。


「悪神・『怠惰』が使役させてあげてる能力のお出ましかなぁ?」

「明石、効果って」

「エンブレムは熊だけど、悪神の力は、使役は宿り主の特定の感情に由来するし能力もその……色々、だから」


苦しげに言う明石に和夜は理解した。つまり、分からないのだ。ロイの特定の感情、怠惰に由来しているとしてもそれが実験か明石を追いかけたという熊か分からない。嗚呼、なら。ニヤリと和夜は笑い、ポンッと明石の頭を叩く。それに明石は一瞬キョトンとしていたが和夜の言いたいことを理解したらしく笑い返す。


「和夜、ロイ()ね!」

「嗚呼、明石は能力()な!無理はするなよ!」

「分かってるもん!」


膨れっ面な言葉を吐き出す明石を横目に和夜はロイに向かって跳躍した。注射器が和夜の首筋を狙って空を切った。

こんな感じでちまちまと相手の事情っていうか物語が入ります……『怠惰』がその名の通りのイメージしかわかないのでちょっと悩みました……

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