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スクランブルエッグを朝食に  作者: 中倉三利
11/33

警鐘と悪夢 

 ガンガンガンガン。

 警鐘が鳴っている。真っ白な空間に警鐘だけが響く。


 「ここはもう駄目だな。あっちはまだ大丈夫だ。向こうへ行くぞ。」


 聞き覚えのない声に導かれ、俺は走る。目の前を走る大柄な男が、俺を誘導する。さっきの声はこいつから発せられたのだろうか。


 「あんた」


 呼びかけようとしたら、後ろから大きな音がした。振り返れば、さっきまで真っ白だった空間が瓦礫の山になっている。


 「ぼーっとするな!走れ走れ!」


 慌てて男の後ろを付いて走る。次第に真っ白だった景色に色が付き、景色が現れる。瓦礫、土煙、頭上には黒煙。ここはどこだ?


 「お、おいあんた!ここはどこだ!」


 「無駄口叩く余裕は無ぇよ!早く走るんだ!」


 俺達は走った。理由などわからない。逃げるためか、戦うためか、救うためか。


 「どこに向かっているんだ!」


 未だに顔が見えない男に向かって叫ぶ。男は急に立ち止まり、慌てて俺も立ち止まった。


 「どこに向かうんだろうな。」


 「なに?」


 「俺達は、いや、お前はどこに向かえばいいんだろうな。」


 「お前、穂高か。」


 振り返った男は、傷だらけの顔をした穂高だった。


 「どうしたんだよ!なんでそんな怪我を!」


 「賢人、お前の進むべき道は、お前しかわからない。でも、後戻りはできないんだぞ。」


 「どういう意味だよ!穂高!」


 気がつけばあたりはまた真っ白な空間に戻っていた。穂高ももういない。

 ガンガンガンガン。

 警鐘だけが、無くならない。

 


 「…頭、痛い。」


 のそりと起き上がる。見たことのない夢だった。寝ぼけ眼で辺りを見て、ようやく自分の部屋でないことに気がついた。そして、隣に寝る女が塔子ではないことにも。

 一瞬にして覚醒、と同時に現状把握。俺、裸。女、裸。女、美雪!?ここは、ホテルのベッド?

 顔に手を当てて、やっちまったと思う。よりによって美雪。どうやってここまで至ったかの経緯を全く覚えていない。ただ、この現状から見て、どうやら美雪とやったことは確からしい。

 ゆっくりとベッドを抜け出して洗面所へ向かう。頭が痛い、ひどい二日酔いだ。鏡に映る自分の顔は、青白く、死人のようだった。口の近くには淡い紅色が付着していて、そこだけが色鮮やかだ。何も考えず、手で拭う。まじまじと手についた紅を見て、ようやく自分の愚行を実感する。


 「後戻りはできないんだぞ。」


 夢の中の穂高、いや俺の本心が語った言葉。

 もう、戻れないんだ。


 「先輩、先帰ったかと思ったじゃないですかー。」


 いつものように美雪が話しかける。


 「俺、お前と寝たの?」


 「まあ、寝たと言えば、寝たことになるんですかねー?」


 曖昧な返答に疑問を抱き、肩を掴み美雪を問い詰める。


 「昨日の夜から何も覚えてないんだよ。何か知ってるなら教えてくれよ!」


 「構いませんけど、まずは、服を着たらどうですかー?」


 頬を赤らめ目線を外す美雪の言葉に、改めて自分が裸であったことを思い出した。

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