メタリオン
ミランとフレイの護衛が登場します。
【共用広場 宴の終わり】
平らげられたお皿やグラスが並ぶ中、同年代の仲間と雑魚寝してしまっているミラン
フレイのヒザにミランの頭が載っている
族長:「楽しかったかね星の騎士よ」
フレイ:「こういう席には慣れてなくて」
族長:「どうやら君は酒の席ではなくて女子に慣れていないように見えるんだがね」
苦笑するフレイ
族長:「星の騎士は、優れた守護者であると同時に優れた調停者でもあると聞くが、女子に弱いのではまずいじゃないのかね?」
フレイ:「もう騎士じゃないんです」
族長:「なんと!辞めたのか?」
フレイ:「騎士団に籍を置いた方が多くのことを守ることができるのは確かです。でも騎士団にいてはミランを守ることはできないんです」
族長:「・・・・」
フレイ:「私は怖いんです」
族長:「怖い?」
フレイ:「彼女は15日も目を覚まさなかった。私には彼女を起こす力がなかった。だから怖いんです。このまま目が覚めなかったらどうしようと・・・」
族長:「本気で惚れるなよ騎士よ」
フレイ:「えっ?」
族長:「この子は炎の娘だ。人一倍気性も激しいし、感情の起伏も大きい。ヘタに手を出せばヤケド程度ではすまないくらいにな」
ミラン:「う~ん」
寝ぼけて目を覚ますミラン
フレイを見つけると抱きついて押し倒す
フレイ:「お、おい」
フレイの首に暑苦しく抱きつく寝ぼけたミラン
ミラン:「ふ~ん」
フレイの首筋にミランの吐息がかかる
ミラン:「・・・ヒューマ・・」
フレイ:ミランの寝言にドキリとして虚空を睨むフレイ
【火の民の村 入り口】
見送りをする火の民
乳母:「無理をしなさんなとしか言えんが、2人だけで行くとは無茶じゃなかろうか」
ミラン:「平気よ、おばあちゃん。私は1人で大丈夫なんだけど、フレイがどーしても着いていくっていうから」
フレイ:「・・・・」
ミラン:「まあ、無職だからやとってあげるんだけどね」
フレイ:「・・・」
ミラン:「どうしたのフレイ?」
フレイ:「いや、ああ・・・何でもないよ」
ミラン:「ヘンなの」
集団の中から族長が遅れてやってくる
ミラン:「族長、またここに戻ってこられて嬉しかったわ」
族長:「まあなんだ。家出娘みたいなもんだお前は。気が済んだら帰ってこい」
ミラン:「うん!」
族長:「ミラン、こいつの力を試してみないか?」
手を叩き合図をする族長
けたたましい獣の咆哮とともに、騎馬がビルの壁を駆け下り、ミランとフレイの目の前に飛び降りた
フレイ:「おお!」
全身銀色に輝く甲冑姿の騎士は、槍を大きく振りかぶった
◆攻撃を仕掛けるフレイ
しかし、一切の攻撃が跳ね返されていく
ミランの銃弾もことごとく跳ね返される
族長:「そこまで」
フレイ:「ものすごい守備力だ!」
ミラン:「族長、これはいったい誰なの?」
族長:「君たちに破壊されたメタリオンを改良したものだ。連れて行きなさい」
ミラン:「連れて行くって、これってもしかして?」
族長:「そうだ」
フレイ:「え?何の話ですか?」
族長:「そうか騎士殿には解らない話だったな。
私たち火の民は空飛ぶ船や精巧な鎧など、キケンな物ばかり作っているわけではない」
ミラン:「そう。人のお手伝いができるような物も作っているの。人より力が強くて頑丈な物とかね」
フレイ:「それが、これ?」
族長:「元々は人に変わる労働力を確保するために、作った物を番人として機能するように改良した物だ。
全てにおいて私たち人間の10人分の力を持っている。ただし笑ったり泣いたりはしない」
ミラン:「これを持っていけって?」
フレイ:「お前を守ってくれると思ってな。いや、騎士殿のことを信用していないわけではない。
ただ、ミランと騎士殿に死なれては困るのだよ。メタリオンはどれだけ壊れようがかまわないのだけれどね」
【港町ポート・オブ・エリア 港の入り口】
停泊中のマリア・アズーラ号
潮風に青い一つ星の旗がはためいている
ミラン:「ベルタの船だよフレイ」
答えないフレイ
ミラン:「ねえどうしたの?なんか不機嫌?」
フレイ:「アレだよアレ」
ミランを見向きもしないでメタリオンを指さすフレイ
ミラン:「メタリオン?」
目を丸くするミラン
ミラン:「メタリオンなにもしないしなにも喋ってないじゃない」
フレイ:「そうじゃなくて、オレ1人じゃ頼りにならないって思われているような気がしてね」
ミラン:「はは~ん、侮辱されたって思っているんでしょ?」
フレイ:「そうさ。僕に対する侮辱だよ」
ミラン:「フレイが頼りないなんて誰も思ってないし、そんなことでメタリオンをよこしたんじゃないと思うよ」
フレイ:「どうだかねえ」
ミラン:「族長は、メタリオンがいた方がもっと安全な旅ができるって思ったからだよ。誇りとか、誰かを立てるとか、私たちってそういう考えがないのよ」
フレイ:「????」
ミラン:「必要な物だったら、それが目下の人でも積極的にお願いするし、もっと能力が高い物があったら、古いのに変えてでも使う。
私たちは「何ができるのか」でしか物を考えてないの。そうじゃなきゃ、タダでさえ迫害されているんだもの。いろいろこだわっていたら火の民なんて生きていけないもの」
フレイ:「そんなものなのか?」
ミラン:「フレイがいてくれるから、旅ができるんだよ。私だけじゃ宿の探し方もわからないもの。買い物なんてしたことないし」
フレイ:「なんか便利屋みたいだなあ」
ミラン:「腐らない腐らない。さ、さ、船の交渉しようよ」
フレイの腕を取るミラン