ペガサスに乗って
地底に立ちこめる深い霧の向こう
そこにあったのは・・・
【霧の向こう ペガサスの牧場】
牧場の中の凍り付いたペガサスはどれも反応がない
ある一頭のペガサスの凍り付いたたてがみを必死になでている女の子を見つける
女の子の方もセレンを見つける
素朴さがにじみ出る、牧場の少女
女の子:「あなたは?」
セレン:「迷い人です。セレンと申します。ここは?」
女の子:「ペガサスの牧場です」
セレン:「ペガサスの牧場?」
女の子:「そうです、一日でも早くペガサスをあの人の元に飛ばしてあげないといけないんですが・・・」
セレン:「あの人・・・?」
女の子:「はい、私たちの希望、流星の騎士エルランド様」
セレン:「エルランド?」
しもやけで傷ついた手で凍り付いたペガサスをなでる女の子
女の子:「ですが、私にはペガサスを溶かす力がないんです」
セレン:「どうしてペガサスは、凍り付くことに?」
女の子:「試練なんです」
セレン:「試練?」
女の子:「私たち人は偉大なる星々の力を借りることができました。ペガサスもそのひとつです。ですが、ある日ペガサスは凍り付いてしまったのです」
セレン:「なぜ?」
????:「私が凍り付かせたのだよ」
女の子の背後から影が立ち上る
セレン:「お前は・・・」
すべての闇「簡単に力を渡すほど、私は甘くないのでね」
セレン:「私も、以前よりは強い精神力を身につけたのですよ。オーッホッホッホッ。返り討ちにしてくれる!」
◆「ルナティック(狂気)」を使い自分を強化するセレン
あらゆる魔法を駆使して「すべての闇」に立ち向かうセレン
最後に放った炎の魔法が決定打になる。
すべての闇:「なるほど、あの時よりも狂気にはかられないようだな」
セレン:「褒め言葉と受け取っておきましょう」
すべての闇「まあよい、私はお前達が狂気にかられないように、こうして出てくるのだ感謝してもらおう」
虚空に消えるすべての闇
セレン:「いったい、アイツは何者なのだ・・・」
退けたあとも、嫌な感触が残るセレン
女の子:「あなたは、あなたは火の力を使えるのですか?」
セレン:「使えると言っても、大したものではありません」
女の子:「お願いです。ペガサスを、今はたった一頭でもいいんです。ペガサスを溶かしてください。私にはそこまでの力がないんです」
セレン:「ということは、あなたは火を操る力を持っていたんですね」
女の子:「はい、ですが私はもう力を使い果たしてしまいました。エルランド様がお使いになる剣と盾を鍛えるのが精一杯で」
セレン:「なんと!五芒星の盾はあなたが鍛えたのですか?」
女の子:「エルランド様をご存知なのですか。健在でいらっしゃいますか」
セレン:(どうやら、私は魔法に干渉する霧の中を経て、人が司る前の世界に来てしまったようですね。ここではエルランド騎士はまだ生きている。そして私たちまで伝わらなかった知識やものがあるのですね)
セレン:「もちろん健在でいらっしゃいます」
女の子:「お願いです。あなたの火の魔法でペガサスを、凍り付いたペガサスを溶かしてください。
お願いです。私に代わってエルランド様にペガサスを届けてください」
一瞬躊躇するセレン。が、
セレン:「分かりました。やってみましょう」
◆火の魔法でペガサスを解凍するセレン
氷が蒸発し、体を震わせて水分を飛ばすペガサス
あちこち見てまわしてセレンを見つける
ペガサス:「私の主はそなたか?」
セレン:「喋った?」
ペガサス:「喋れなくては意思の疎通も図れまい。で、そなたが私の主か?」
セレン:「いや、そなたの主は私ではない。だが、あなたを主の所まで届けるのが私の役目だ」
ペガサス:「では、しばしの間、そなたが私の主だな。主よ、名前を頂こう」
セレン:「名前?」
ペガサス:「そうだ。主に名前をもらうことで主従関係が成立するのだ」
セレン:「名前か・・・」
セレン:「シックル(鎌)というのはどうだ」
ペガサス:「シックル。良い名だ。我が名はシックル。さあ新しい主よ。私の背中に乗るが良い」
主従関係のわりに上からものを言うペガサス
女の子に向き直るセレン
セレン:「あなたも参りませんか?」
言うより先に首を横に振る女の子
女の子:「わたしはまだペガサスを溶かさないとなりません。その力が、わたしに残っているかどうか分かりませんが。それでもやらねばなりません。人の世のために。エルランド様のために」
セレン:「そうですか。では私が責任を持って流星の騎士エルランド殿にペガサスを届けます。あなたの名前も伝えておきましょう」
女の子:「わたしは、わたしの名はカノン。カノンです。
わたしはこの牧場を離れることはできません。
ですが、わたしは、わたしはいつまでもエルランド様をお慕いしておりますとお伝えください」
セレン:「分かりましたカノン殿。あなたの言葉もしっかりと伝えます」
部下の手を借りてペガサスに乗るセレン
象のような巨体を誇るペガサスは大男3人を乗せてもびくともしない
牧場の女性カノンに会釈するセレン
ペガサス:「では参ろう」
音もなく翼を動かすこともなく地面を離れるペガサス
ぐんぐんと牧場が小さくなっていく
いつまでもペガサスを見上げているカノン
セレン:「この翼は使わないのか?シックルよ」
ペガサス:「かりにも空を飛ぶのだ。翼でもなくては格好がつくまいよ」
セレン:「なるほど」
妙に納得するセレン
ペガサス:「さて、どこへ行くのだ主よ」
セレン:「行きたい所は山ほどあるが、わたしは知らなくてはならない。私たちの前の時代を」
ペガサス:「ほほう」
セレン:「霧の向こうへ。大賢者スーリヤの元へ」
霧の中に吸い込まれていくセレンを乗せたペガサス
【月の使徒の冒険】 終わり
読了ありがとうございました。
【月の使徒の冒険】投稿してみるとあっさりと終わってしまいました。
次回からは【火と星の旅路】の投稿になります。
引き続きごひいきによろしくお願いします。