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太陽が昇らない国の物語(仮) 第三部  作者: 岸田龍庵
風と水の回顧録(かいころく)
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海のために、子ども達のために

ベルタとハイドを追って、ジェスは海へと船を出します

【丘陵地帯 風のキャンプ】


黙ってテントを出るジェス

ポンチョを着てキャンプを後にする

天地が割れて夜が明け始める





【港町ポート・オブ・エリア 浜辺】


白く輝く砂浜を歩く、サファイヤのアンクレットをつけた白い足

青いドレスの裾を引きずりながら歩くベルタ

浜辺と岩場の潮だまりに、ゴミが浮いている

どす黒い油やら、見たこともない物質(おもにプラスチックなどの化学物質)に混じって魚が白い腹を見せて死んでいる



死んだ魚をすくい上げるベルタ

魚からドロリとした重油のようなものが、はがれたウ(・)ロ(・)コ(・)と一緒にすべり落ちる

波打ち際まで歩き、死んだ魚を波に滑らせるベルタ

波間を漂う死んだ魚

砂浜をよたよた重そうに歩く重油まみれの水鳥

重たそうに歩く水鳥を優しく持ち上げて、静かになでるベルタ

水鳥から油がキレイにとれて羽ばたいていく



海に向き直るベルタ

大きく両腕を広げると、歌い始めた

空と海が大きくふるえ、波打ち際が沸き立つように海が盛り上がる

巨大な津波が、陸から海へと滑っていく

ほんの一瞬の出来事が、陸から津波が海へと滑っていった。

砂浜は穏やかさを取り戻した

浜にベルタの姿はなく、波打ち際に置き去られたサファイヤのアンクレットが波に洗われている




【港町ポート・オブ・エリア】


港を歩くジェス

青い一つ星の旗がなびくマリア・アズーラ号が停泊している艀(はしけ)で、ベルタの船の乗組員が集まって話をしている



ジェス:「よう、どうしたお前達」

船乗り:「ジェス様?」

ジェス:「ベルタはいるかい?」

顔を見合わせる船乗り達

ジェス:「なんでえ、なんかあったのかい?」

船乗り:「はい、実は・・・」


◆時間経過 波打ち際


ジェス:「海から帰ってこないって」

船乗り:「本当の所は分かりませんが・・・」

ジェス:「あいつは流水の聖女だろう?ベルタが海に呑み込まれるなんてあるはずがない」

船乗り:「あっしらも、そう思いたいんですが、お頭の姿がどこにもないんです」

ジェス:「なぜ、船を出さない!なぜおベルタを捜しに行かない!船があるだろうが!」

船乗り:「あっしらの船を動かせるのはお頭だけです。お頭の命令がない限り、マリア・アズーラ号は動きません」

ジェス:「バカかお前らは!ベルタを捜しにいかないかぎり、この船は動かないだろうが!」

船乗り:「バカかも知れませんが、船乗りとはそういうものです」



ベルタの声:「野郎ども、船を出せ!」

ジェス:「えっ?」

船乗り達:「お頭?」

振り返るジェスと船乗り達

桟橋に立つ黒いレザー姿の、ベルタの衣装を着ているグレイス



ジェス:「おっ!?」

船乗り:「グレイスさん・・・?」

ジェス:「お前、なにしてるんだ?」

グレイス:「あんたたち、ボサッとしてないで、ベルタを探しに行くよ」

砂浜に落ちていたサファイヤのアンクレットを見せるグレイス

船乗り:「それはお頭の・・・」

グレイス:「さっさと出航の準備をしな!

こんなところでぼんやり待っていたら、海そのものがおかしくなっちまうかも知れないんだよ!」

        


ベルタ張りのドスが利いた声で命令するグレイス

グレイス:「ベルタと、もう一度海を駆けたくないのかい?どこまでも青い海に」

船乗り:「野郎ども出航の準備だ!」

タラップを駆け上がり、慌ただしく動き回るマリア・アズーラ号の船員達

ベルタのように悠然(ゆうぜん)とタラップを登るグレイス



ジェス:「お、おいちょっと待てよ」

グレイス:「ジェスも早く準備して!」

ジェス:「グレイスなにしてんだ、こんな格好して。子ども達はどうした?」

グレイス:「またお義母(かあ)さんに面倒かけちゃうけど、子ども達を守りたい気持ちはあんたと一緒だよジェス」

ジェス:「だからってお前まで出てくることないだろ!」

グレイス:「子ども達のそばにいてやれるのも優しさだと思う。でも、私たちにしかできないこともあるんじゃない?」

ジェス:「グレイス・・・」

グレイス:「子ども達に安全な風と、青い海を残してあげようじゃないか」



船尾に仁王立ちになるグレイス

ジェス:「母は強し、ってか」

グレイス:「着替えてくる」

ジェス:「えっ?」

グレイス:「あの子のコスチュームきつくて。もっと痩(や)せないとダメね」

船長室に消えるグレイス





【ポート・オブ・エリア】


桟橋を出て滑るように海に戻るマリア・アズーラ号

舳先が青い波を切って進んでいく





【海上 マリア・アズーラ号甲板】


船乗り:「どっちに行けば良いんでしょうかね?」

ジェス:「毒の風が吹く方だ」

妹の船を操舵を切るグレイス





【海上 マリア・アズーラ号】


舳先の向かう先に、環礁(かんしょう)が見える(第一部15部、第三部11部参照)

渋面を崩さないジェス

グレイス:「まさかあそこから?」

ジェス:「わからねえが、行くしかねえな」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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