賞金稼ぎと魔導大国の王子【16】
「うん! みかんさんとういういさんもお元気で!」
キイロは少し瞳を潤ませて、みかんとういういを見た。
ここでのお話とは関係のない所で、実は仲良くなっていたみかん達とキイロは、互いに心の許せる間柄としての関係を構築していたのだった。
「おう、元気でな。でも面倒だから声は掛けなくても良いぞ」
他方のイリは相変わらずだったが。
「おうふ、相変わらずの薄情っぷりです。冷徹男です。冷えたおでん見たいに冷たいです」
どうして比喩の対象がおでんなのかは不明だったが、みかんはちょっとだけ口を尖らせて言っていた。
「ま、私はそう言うのがイリだと思ってるから、あんまり気にならないかな」
他方のういういはむしろ好印象と言う感じで答えていた。
すると、すかさずキイロがムキになってういういへと答えた。
「どうでも良いけど、イリは上げないからね?」
割りと本気で言ってるからタチが悪い。
「い、いや、私はイリにそう言う感情とか全くないから! ちっともないから!」
ういういは睨まれるキイロに根負けする感じで叫んでみせた。
実際、ういういにとってイリは気楽に話が出来る友達と言う感覚だ。
性別がどうあれ、なんだかんだでそれなりに気が合うのだから、こう答えるのが妥当だと思える。
「それなら良いんだけど」
「流石に、俺もういういを恋愛対象とか言われるとなぁ......なんてか、俺にだって相手を選ぶ権利ってのがある訳で」
イリは目をミミズにしてぼやく。
今度はういういが地味に眉を釣り上げた。
「ちょ! おま! それだと、私が女としての魅力がない見たいに感じちゃうじゃないか! 訂正しろ!」
「じゃあ聞くが? あるのか? お前に女としての色気が」
「......う」
ういういは口ごもった。
実際に乏しいと言えば間違えはなかった。
しかし、それをイリに言われると屈辱でしかない。
「お前だって、女の時の色気とかあるのか? ないだろ!」
「ふ、バカにしては行けねぇな......こちとら、仕事で女してるんだ! やる気になれば幾らでも出来る! つか、男の心理も分かるから、尚更、男の好みに化けれる!」
イリは凄まじい自信を込めてういういに言い放っていた。
どうでも良いが、化けるってあなた......。
「くそぅ......」
「まぁまぁ良いじゃないですか。ういういさんに色気がないのは、今に始まった事じゃないわけですし~」
「うるさいわっっっ!」
みかんとういういのコント染みた漫才が炸裂した所で、二人はイリの自宅を後にする。
「ほじゃ~! またです!」
みかんは元気一杯に手を振った。
「またな!」
ういういも同じ感じで手を振った。
これに、イリとキイロの二人も手を振り返す。
キイロは最後まで瞳を潤ませて、何度もブンブンと手を振っていた。
他方のイリは、半分義理で手を振った後、すぐに自宅へと引っ込んでしまった。
「バイバイ、みかんさんとういういさん! またねぇーっ!」
こうして、みかんとういういの二人も次の新天地に向けてニイガの街を後にして行くのだった。
■キイロ■
さて、今回の第一編はこれにて終了です。
皆様、如何でしたでしょうか!
感想その他はドシドシ待ってます! よろしくねぇー!
......と、こんな事ばかり言ってちゃダメだね!
最後は、私ことキイロが締め括って、今回のお話を終わりにしたいと思います。
よろしくお願いします!
さてさて。
最後の後日談として、イリと一緒に生活する事になってからの事を簡単に話して行こうかなって考えてたりするんだけど......うーん。
あ、別にイリと一緒の生活がつまらないとか、そう言う事はないんだよ?
毎日が充実してるし、イリと一緒にいられるのはとっても幸せだし、オリオンさんやアオ姉さんもいて、あっちもあっちで良好な関係を作ってるみたいだし、とにかくハッピーな日々がずっと続いている。
ただねぇ。
時々、思うんだ。
こんなに幸せで、本当に良いのかなぁ......って。
アカ姉さんは、未だにナガオでアルフレドを待つ生活をしてる。
そう思うと、私らだけ幸せで良いのかって負い目を感じてしまう時もあるんだ。
ただ、アカ姉は自分の意思で選んだ道でもあるし、それを私やアオ姉が口を挟むのはお門違いではある。
だから、たまに二人で遊びには行くんだけど、アルフレドの事はいい加減諦めたら? って感じの言葉を言う事は互いに無かった。
取り敢えず、アカ姉の幸せはアルフレドにあるって、自分に納得させている。
これで良いのかは、自分でも良く分からないんだけどね。




