賞金稼ぎと魔導大国の王子【15】
この辺は、今後のニイガとカントー帝国の信頼関係をそれぞれ構築して行けば、いずれは実現して行くんだとは思う。
でも、まぁ......これは、お父様の仕事かな。
この時の私はそうと他人事の様に考えてました。
まさか......未来に、自分がその問題にぶつかる事になるとはねぇ。
この辺は未来の話なので、取り敢えず置いて起きましょうか。
話はニイガ駅前に戻りまして。
「じゃあな、ルミ。あんまりリダ達に迷惑掛けるんじゃないぞ?」
カントー帝国行きの馬車が来た所で、イリが去り際に私へと答え、軽く頭を撫でて来た。
なんだろう? なんか凄い妹を相手にしている兄の様な構図になってる気がする。
私の立ち位置はイリの妹ではないぞ!
そうと、少しだけむくれた私がいた所で、イリの隣にいたキイロが満面の笑顔で私に口を開く。
「元気でね! 本当、色々とありがとうね!」
もう、完全に送り出す気持ちがアリアリと見えていた。
「さりげなく清々しい顔で送り出すんだね、キイロ?」
ギクッ! って顔になった。
「な、なんの事かなぁ?......キイロさん、分かんないなぁ」
思いきりとぼけて見せた。
ここまで分かりやすい惚け方が出来る子も珍しい。
キイロからすれば、私と言うライバルが居なくなって清々してるんでしょうね!
ったく、腹立たしい!
「良い? 春休みになったら速攻でこっちに戻って来るから! その時までイリに抜け駆けとかしたらダメだからね!」
厳めしい顔になって叫んだ私。
「抜け駆け? 大丈夫。ちゃんと自然に既成事実を作って子供作るから。春休み明けには私達の間に出来る子供の名前でも考えといて」
ヒラヒラと手を振りながら、メチャクチャな事を抜かすキイロ!
本当にコイツわっ!
もうムカッ腹しか立たなかった私だったんだけど、そこで気付いてしまった。
明るくお茶らけていたキイロの瞳は......少し充血していた事に。
......ったく。
本当に、キイロってば。
「演技がうまいね!」
思わず、私まで泣けて来た。
そして、キイロを抱き締めていた。
思えば、キイロとも色々あった。
イリとの事で何回か口喧嘩した事もあったけど、そう言うのとは別に......一緒に買い物とかも行ったりね? ご飯も一緒に作ったりそれを食べたりして、心から通じ会える親友になっていた。
時間にすればほんの二週間程度だったけど、まるで旧知の仲であったかの様に親しくなれたんだ。
「キイロ! また、一緒に色々遊ぼう!」
「......そんな事言わないでよ。こっちまで泣いちゃうでしょ」
私はキイロと暫く包容する形を取った。
そこから、イリにも抱きつく。
「うぁ! この! ドサクサに紛れて!」
間もなくキイロが怒ってみせたけど、引き剥がそうとはしなかった。
きっと、暫く合えない事を加味しての事だろう。
その位は許して上げる......とでも思っていそうだ。
イリに抱き付くのにキイロの許可が必要ってはおかしいって思ったけど、そこは突っかからないで置く事にした。
「ねぇ......イリも学園に来ない?」
「誠心誠意、お断りする」
即座に断られた。
いや、わかってはいたんだけどね!
まぁ、しかしながら。
実は早々遠くもない近未来に、イリは学園にやって来たりするのですが、それはもう少し先のお話で!
こうして、私はリダやフラウ、ユニクスさん達と一緒に馬車に乗り込むと、
「ばいばーいっ! また会おうねぇぇっ!」
馬車から身を乗り出して、みんなが見えなくなる時まで大きく手を振って見せるのだった。
■▲▽▲■
ニイガの街での騒動から更に一ヶ月の時間が過ぎた。
「さて~。うちらもおいとましましょうかねぇ」
そうと答えたのは、みかんだ。
隣にはういういもいる。
その日、ニイガの街を旅立とうとしたみかんとういういの二人は、最後にイリの自宅に軽く寄って、挨拶をしてから次の街へと向かおうとしていたのだった。
余談だが、シズは色々あって一足先にクシマに帰っていた。
なんだかんだで冒険者協会の会長だったシズだけに、いつまでもブラブラしてはいられなかったのだ。
正確には、ニイガの街から徒歩三十分程度と言う比較的お手軽な距離の場所に、古代遺跡のダンジョンに向かおうとした所で、ういういの姉でもあるアユがわざわざニイガまで赴いては、シズの首根っこ捕まえてクシマに連れて帰ってしまうのだが、そこらに関してはみかんVerで語っているので割愛させて頂こう。
閑話休題。
「ニイガ、良いとこでした。また、遊びに来ます」
みかんは穏やかにイリとキイロの二人に答えた。
「そうだな。その時はよろしくな」
ういういも軽くグッジョブして言う。




