賞金稼ぎと魔導大国の王子【13】
とにかく!
今の俺にはやらないと行けない事があるんだ!
思った俺は、
「えぇと、それではルミ様! ごきげんようで!」
我ながらおかしな言葉を出しているなと自分ツッコミをしつつ、ルミから逃げる様に小走りに古代魔導人形へと向かって見せた。
ちなみに、キイロはそのまま引っ付いて離れなかったから、面倒なのでお姫様抱っこの要領で抱え込んだ。
キイロはいきなり抱き寄せられて、最初は驚いて見せたのだが、
「えへへ......」
今は俺の胸元で静かにしていた。
幸せそうに微笑んでいる様に見えるが、気のせいと言う事にした。
後ろでネガティブな波動をニコニコしながら強烈に放っているお姫様がいた気もしたけど、これも気付かなかった事にして置いた。
ああああっ! もうっ!
何で俺の周りって、こんなのしかいないんだよっ!
割りと本気で面倒だと胸中でぼやきながらも、古代魔導人形の前にやって来た俺は、間もなく性別を女に変える。
どうも、この魔導人形......複雑な魔導式が絡んでいるんだよな。
まぁ、簡単に言うと、だ?
「ふむふむ......ここがこうなってるのか」
私は、キイロを一旦降ろしてから古代魔導人形を見据える。
大破した魔導人形は当然動く様子もない。
その中にいる人間......アルフレドだったか? とにかく、そのお坊ちゃんも気絶しているかの様にピクリともしない。
ふむ......よし。
ポゥゥゥ......
私の右手が淡く光る。
「......? 何してるの?」
キイロが不思議そうに私へと尋ねて来た。
「まぁ、見てろって」
そうと私が言った所で、
ウィィィン......
機械的な音が軽く響いた。
そこから少しして、魔導人形の上部が開いた。
「開いた?」
キイロはキョトンとなった。
ちょっと予想してなかったみたいだ。
「この魔導人形には、ロックが掛かってたんだよ。それを強引にこじ開けると、中にいる人間の精神を破壊する仕組みになっていた」
中々にエグい仕様だな。
だから、アンロックする為の解析をしないと行けなかった。
結構高等なサーチ魔法を掛ける事で、アンロックの方法を見つける事が可能になるんだが、高度な魔法だけに相応の魔力がないといけない。
そこで女になって、こいつのロックを解除してやってと言う事になる。
「本当、イリに不可能はないって感じがする」
にっこり笑ってキイロは答えてみせた。
そこから、ハッチが空いた事で、外に出す事が可能になったアルフレドをキイロが引き出して見せる。
荒っぽく引き抜くかと思いきや、存外丁寧にやっていた。
コイツには相応の恨みがあると思っていたんだがな。
「なんだ? やっぱりアルフレド様はお前の主だから、丁寧なのか?」
「冗談でもそんな事を言わないで」
笑顔だったけど、殺意にも近い波動を思いきり出して答えていた。
「正直、今でも憎いよ。可能ならこの場で八つ裂きにしたい位には憎いね」
コロコロと鈴の音を彷彿させる爽やかな笑みで、殺伐とした台詞を平然と吐き出すキイロがいた。
それはそれでどうなんだろう? と、思わず微妙な気分になったが、実際に言う事は無かった。
「だけど、アカ姉と約束してたから」
キイロは笑みを強めた。
今度は心からの笑みだった。
この言葉には沢山の優しさが込もっているんだと思う。
そして、今のキイロだから言える台詞なんだとも思う。
色々あって、自由を手にする事で、ようやく自分らしさを取り戻したキイロだったからこその台詞だった。
「そう言えば、アカ姉は何処に行っちゃったんだろうね?」
キイロはそこで、軽くキョロキョロと辺りを見回した。
しかし、そこにアカらしき人物を見掛ける事はなかった。
一体、何処に行ったと言うのか?
不思議に思う俺達がいた。
......余談だが。
キイロの姉であるアカは、魔導人形が大破したのを見て卒倒してしまい、近くにいた親切な人が今回の戦闘で被害を受けた人物と勘違いして、近所の病院に運んでいたとの事だ。
翌日、意識が回復したアルフレドと再開し、涙の包容をしていた。
けれど、その後はどうなるかねぇ......?
流石に今回の騒動を作った中軸でもあるアルフレドだけに、おとがめ無しと言う訳には行かないだろう。
ルミ姫様のご意向により、ナガオ家の取り潰しだけはなかったらしい。
ついでに、アルフレドも死刑は免れたらしいが、流石にナガオ家からは絶縁された。
今はニイガ国の外れにある拘置所で服役する形になったと、後々風の噂で聞いた。
取り敢えず、その程度で済んでよかったとは思うぞ。
普通なら御家取り潰しで、お前自身は極刑だ。




