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こうして私は無双する・イリVer  作者: まるたん
第一編・最終章
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賞金稼ぎと魔導大国の王子【11】

「そっちも終わったみたいですねぇ」


 完全に消滅したのを確認した所で、ゲヘナの炎を地獄に戻した所で、みかんの声がイリにやって来た。


 イリの眉間が皺寄る。


「お前な! 使って良い魔法ってのがあるだろ! マジで今回はお前の魔法に殺されるかと思ったぞ!」


 イリは速攻で叫んで見せた。

 みかんもこれには苦笑である。


「いやねぇ~......ほら、シズさんの奥義って、本当に全てのありとあらゆる物をシャットアウトする技術スキルだったからねぇ? まぁ、なんとなぁ~くどうにかなるかなって」


 完全なる誤魔化し笑いを作りながら、みかんはイリへと答えていた。

 みかんVerではコーリヤマの街で混沌龍カオスドラゴンと戦闘になっているのだが、この時にもシズの剣聖の護りは完全にシャットアウトしていたのだった。


 ここらの関係もあって、


「シズさんの展開する超防壁なら、隕石降らしても大丈夫だと思ったんですよねぇ」


「その理屈ってどうなんだよ......」


 答えたのはリダだった。

 そんなリダは、見事にすすまみれになっていた。

 あたかも、昭和時代のコントにも匹敵する。


「あはは~っ! 何その顔? リダ、酷い顔になってるよ」


「そうさせた本人に言われたくないわ!」


 ケタケタ笑うみかんを前に、リダは憤然とした声音を叩きつける様に言い放った。

 しかし、間もなく表情を柔らかい物に変えてみせる。


「まぁ、しかし。取り敢えず、終わったな」


「そうだな」


 リダの言葉に、イリが返答してみせる。

 

 思えば壮絶な戦いにまで発展してしまったと、イリは苦笑しながら胸中で呟く。


 悪魔王子の実力も去ることながら、まさかヨルムンガルドの様な伝説上のモンスターまで出現するとは思わなかった。

 そう考えると、リダやみかんの二人がいなかったら......どうなっていたか分からない。


 地上での戦いだってそうだ。


 なんだかんだで、最後はみかんやリダの仲間達の増援があったからこそ、上空での最終決戦に集中する事が可能だった。

 そう考えれば、ルミの手紙にも感謝しないと行けないかも知れない。


 あれがあったからこそ、皆がこのニイガに集結する結果を生んだのだから。


「一つ大きな借りになっちまったな」


 やんわりと笑いながら、イリは二人に言う。


「およ?」


「借り?」


 みかんとリダの二人はキョトンとした顔になった。

 まさか、イリの口からそんな謝辞が飛び出して来るとは思っていなかった模様である。


「おいおい、俺にだって義理ってもん位はある。この位は言って当然だろう?」


 イリは心外をあらわにして言う。


「ほむぅ」


「まぁ、あれだイリ」


 リダとみかんは互いににっこり笑ってイリに言う。

 二人同時に同じ台詞を吐き出した。


『困った時はお互い様だろ(でしょ)?』


 ちょっと分かりにくいが、カッコの部分はみかんの台詞だ。

 どの道、二人共に考えている事は同じの様だ。


「......そうだな」

 

 イリは短く肯定の言葉を口にした。

 困った時はお互い様。

 これは確かにその通りではある。


 しかし、悪党の首を狩る賞金稼ぎと言う職業を長くやり過ぎた故か、その言葉を素直に受け入れる事がどうしても出来なかった。

 そんな甘い考えをしている様では、早々遠くない内に騙し討ちを喰らい。己の命を散らす事だって十分想定内だったからだ。


 だが、それでも思う。


 世の中には、こんなお人好し達が大手を振って当たり前の様にクソ甘い台詞を臆面もなく言える所があっても良いのではのか? と。


「なら、お前らが困った時は、俺も少しは助けてやらないとな」


「ほむぅ......なんとなく、ニュアンスが貸し借りに近い気もしますが、まぁ良いでしょ~」

 

 イリの言葉にみかんは一応の納得を示し、


「そうだな。その時は頼むよ。あはは!」


 リダは快活に笑った。




   ■▲○▲■




 他方、地上では歓喜の声が周囲に響いていた。

 古代魔導人形エンシェントゴーレムが大破し、地上での脅威が無くなった事で、ゆっくりと上空での戦いを見守る事が出来たからだ。

 しばらくすると、街の厳戒令も解かれ、ちらほらとニイガの地元民も上空の戦いを観戦する者が出て来た。


 もっとも、みかんの隕石衝突魔法メテオストライクが発動した時は、驚いて蜘蛛の子を散らす様に各々が待避して行ったのだが。

 しかし、巨大隕石がヨルムンガルドに直撃しただけで、街には一切の被害が起きていない事を知ると、周囲には大歓声が巻き起こる。


 一般人からすれば......巨大隕石が落ちて来た時点で、この街は壊滅だと考えるだろう。

 所が、それをしっかり封じたばかりか、逆に街を覆う程の巨大蛇に隕石をぶつけて潰してしまったのだから、もう驚きの坩堝るつぼである。

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