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賞金稼ぎとお姫様【5】

「それで? 俺達は何処に行けばいいんだ?」


「ああ、そこは任せておけ。もう既に所在地まで割れている。国境付近の森林地帯だ。正確な場所は地図に記してある。もってけ」


 言うなり、クロノスはポケットから一枚の紙切れをイリに渡した。

 手渡され、イリは地図を見る。


「相変わらず、仕事が早いな」


「まぁな。ここは言って見れば悪党達の情報が真っ先に入って来る組合ギルドでもある。特に今回は小悪党だ。王子様も流石に末端あたりの小悪党ぐらいしか、まともに動かせなかったんだろうよ」


 なんだかんだで、本当に捕まったら困るのは王子である事に変わりはないからだ。


「地図を見る限りだと、結構遠いな……」


「飛竜を飛ばしても一時間以上かかるトコだな」


 国土面積は他国から比べると狭いニイガだが、それは大国と比較しての事だ。

 首都から国境付近の辺境までとなれば、相応の道のりになる。


「情報によると、ここで姫様の消息が絶ったのは三十分前……本当にさっきだ。その筋の話しによると、拐ったのは近くのチンケな盗賊団で、主に国境を通る行商人を襲ったり、上玉の女が旅してると、そのまま奴隷商人に売ったりしてるとの事だ……つまり、姫様はこのまま行くと、数日後には奴隷商人行きだ」


「王族の姫を奴隷にするつもりなのか。そいつは中々の賞金首になりそうな気もするな」


「ああ、一応賞金首にはしてあるぞ? そもそも、この話しは新しい賞金首の情報から来てるからな? まだ正式な賞金首にはなってないが、俺の見立てでは……五千万は下らないな」


「じゃあ、ついでに首も取って来る。賞金首の手続きだけはしておいてくれよな?」


「ああ、すぐにでも手配を掛けて置く。お前もしくじるなよ」


 クロノスは冗談めかした声音で悪びれる。

 

 イリはカラカラと笑った。


「ハハハッ! かなり面白い冗談だな? こんな小悪党ごときに俺がやられるとか、蟻が象に勝つより有り得ない事だぜ?」


「そう言う傲慢な事を抜かすと、油断しまくってやられるから、気をつけろと、ボスは言ってるんだろ?」


 そこでオリオンが少しだけ真剣な顔になって言い、


「ま、俺なら油断してても100%やられないがな」


 ニカッ! と笑って傲慢な台詞を吐き出した。

 イリは露骨に苦々しい顔になった。


「そう言うお前の様な油断しまくる相棒がいるから、組合長ギルドマスターが釘刺してるんだろ? 俺なら1000% 大丈夫だがな!」


 イリは思いきり胸まで張って豪語していた。

 ここまで見栄っ張りだと、むしろ清々しい。


 クロノスは少し呆れた。


「どう油断してくれても結構だが、ちゃんと仕事はこなしてくれよ。そこだけは頼むからな」


「わかってるよ。任せとけって」


「しっかり仕事は完遂させますぜ、ボス!」


 クロノスの言葉に二人は即座に頷く感じの声音を吐き出した。


 かくして、クロノスの指示により、イリとオリオンの二人は、会うより先に拐われてしまう護衛相手の元に向かう事になるのだった。



      

 ■イリ■




 ……と、そんなこんなで。

 俺とオリオンの二人は、組合長ギルドマスターから貰った地図を元にして飛竜を飛ばし、盗賊団をチャチャっと蹴散らして、ルミ姫様のいるロッジにやって来ていた。


「こんにちわ。賞金稼ぎです」


 ドアを開けた少女を見て、俺はにこやかに言ってみた。

 第一印象は大事だからな。

 なんて言うか、こうぅ……面白い男と思って欲しくて、冗談半分に言って見た。

 

「え……えぇと、賞金稼ぎさんですか?」


 少女……ルミ姫は怪訝な顔して俺に言う。

 俺のファーストコンタクトは失敗に終わった。


 あ、あれぇ……おかしいな。

 結構、面白いと思ったんだけど。


「バカだなイリ。いきなり賞金稼ぎですとか言われて『え、何? この人おもしろーい』とかほざく女は、酒場の雇われホステスくらいだっての!」


 うるさいよ!

 俺も今、ちょっとだけそう思っていた所だ。


 チッ……これで、少しは緊張の糸がほぐれて、楽に会話が出来るかなって思っただけなんだけどな。


「あ、こんちゃーす。俺はオリオンって言うヤツで、そこのバカはイリって言うんだ。怪しい人間に見えるけど、怪しくはないぞ?」


 ……って、お前の台詞が一番怪しいよっっ!

 何かましてくれてんの、お前! これじゃ、絶対に姫様怪しむだろ!

 お前のせいで、無駄に姫様を警戒させるんじゃないよ!


「そうですか! 怪しい人ではないんですね!」


 ……って! 姫様アホなの?

 どう考えても怪しいオリオンの言い方にアッサリ納得してたルミ姫様。


 こんなんだから、アッサリ小悪党にも捕まるんだよ……。


 これから先が思いやられる。


 俺は思わず天を仰ぎそうになった。

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