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こうして私は無双する・イリVer  作者: まるたん
第一編・最終章
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賞金稼ぎと魔導大国の王子【7】

 完全に大破して、起動停止状態の古代魔導人形を確認した所で、周囲に笑みが溢れる。


 だが、その笑みもすぐに消え去った。


 上空に存在していた、凄まじく大きな大きな蛇がいた事に、ここでようやく気付いたのだ。


「な......何あれ?」


「ま、まさが......ヨルムンガルド?」


 度肝を抜くフラウを前に、ルミがポツリと答えて見せた。

 

「ヨルムンガルド? もしかして、神話に出て来る......」


「そう、あの大蛇」


 再び尋ねるフラウに、ルミはコクりと頷く。


「な、なんでそんなのが? 伝説級のモンスターとか、もう非現実過ぎて頭が付いて行けない」


 フラウは絶望的な声音を吐き出しながらも蒼白になって呆然と上空の大蛇を見上げていた。

 桁違いの超ド級モンスターの出現によって、唖然と佇む事しか出来なくなっていたのだ。


 見る限り、リダとみかんの二人がヨルムンガルドと戦っている模様なのだが......。


「い、いくらリダでも、あんな伝説上のモンスターを相手にするなんて無謀過ぎる気がする」


 ......とは、ルミの言葉だった。

 ルミとしても、リダの反則級の強さを良く知っている。

 しかし、そこを加味しても相手が悪い。


 ......悪過ぎる。


 そう思っていたルミを前に、フラウは逆にやんわりと笑みすら浮かべてフラウに言った。


「安心して良いと思う。だってリダは......かいちょ」


 ここまで答えて、リダの正体をルミが知らないと言う事実に気付く。

 そこで、軽くアレンジを加える事にした。


「リダは、冒アカ最強のラスボスだからね!」




   ■▲○▲■



 

 他方。

 上空では、ヨルムンガルドVSリダ・みかんと、悪魔王子VSイリの戦いが展開されていた。


 ヨルムンガルド戦では、リダがほぼ一人で巨大な蛇を相手に奮戦している。

 その後方にいたみかんは、ひたすら魔導式を頭の中で紡いでいる様子が見て取れた。


 その様子を見て、リダは時間稼ぎが必要なのだと言う事を誰に言われる訳でもなく悟った。

 どんな魔法を発動させる気なのかは、リダも知らない。

 しかし、どんな超魔法もすぐに発動させてしまうみかんが、既に魔導式を組み立てはじめてから二分が経過していると言うに、未だに完成させていない。

 ここを考慮すると、かなりとてつもない魔法を発動させようとしていると言う事だけは理解する事が出来た。


 ならば、その魔法が発動するまでの時間を、リダが単体で稼ぐ必要があったのだ。


 リダは頭だけで三~四階建ての建物と同等の大きさがあるだろうヨルムンガルドの頭を殴って見せる。

 目標物が大きいので、当てるだけなら簡単だ。


 当てるだけなら、なのだが。


 さっきから幾度となく連撃を浴びせているのだが、全くと言ってダメージを与えていると言う手応えが感じられない。


 巨大過ぎる故に、動きはそこまで早くはない。

 故に、避けては攻撃、避けては攻撃すると言うヒット&ウェイの方法でヨルムンガルドへと攻撃を続けている。


 しかし、幾ら殴っても殴っても、全く動じる事もなければ、ケロッとした状態を依然として維持したままであった。


 どうしたものかと思案に暮れる。


 他方で、みかんが何か秘策を持っているのではないかと期待している所もあった。


 ともかく、今は大きなダメージを与えるまでには至らなくとも、みかんが放つのだろう極大魔法までの時間稼ぎに徹した方が得策だと考えていた。


 その時だった。


 大口を開けてリダを一呑ひとのみにしてやろうと素早く食い付いて来た......と、思われた時、


 ボフゥゥンッ!


 紫色の霧が口から吐き出された。


「......っ!」


 リダは、咄嗟に紫色の霧から逃れる様にヨルムンガルドから離れた。


 伝承では、成体であるミズガルズオルムが放つとされる、一息で世界中の全てに撒き散らせる凶悪な毒のブレスがある。


 成体であるミズガルズオルム程ではないにせよ、ヨルムンガルドにも同じ能力があるのかも知れない。


 吐き出された紫の霧は辺り一面に広がり、街を覆い尽くす。

 シズが展開している剣聖の護りがなかったのなら、ニイガの街に住んでいたろう人間の全てが猛毒を喰らって毒殺されていたかも知れない。


 ここを考慮すると、シズはニイガを救っていた。


 しかし、剣聖の護りの庇護下にいなかったリダ、みかん、イリの三人はヨルムンガルドの猛毒の霧をおもむろに受ける形になってしまった。


「......くっ!」


 リダは苦い顔になって、咄嗟に防御壁を張って見せた。


 他方のみかんは、まだ魔導式を頭の中で紡いでいる途中だった。


「くそっ!」


 みかんの状態を知り、リダは素早くみかんの元へと飛んで行き、素早くみかんへと猛毒を守る防御壁を展開しようとしていた。


 その時だった。


「......よし!」


 みかんの魔法が発動した。

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