賞金稼ぎと魔導大国の王子【6】
ギュォォォォッ!
出現した炎は、驚異的な勢いで捻れて行き、捻れの限界点まで瞬時に捻れて行く。
そして、捻れの限界に到達した炎がプツンと切れた糸の様に中央で途切れると、
シュォワァァァァッ!
溜まりに貯まった超エネルギーの全てが古代魔導人形に注がれる。
完全に直撃した上位陽炎魔法の一撃により、古代魔導人形が少しの間だけ動きを止めた。
この間に、ユニクスとういういは、キイロの回復魔法によって全身火傷の傷を治して行く。
最初に、ユニクスの傷が癒えて行き、一足先に飛び出して行った。
ユニクスの場合、独自の技術でもある龍の呼吸法が発動していた。
自分だけにしか発動する事が出来ないスキルなのだが、自身の能力を超上昇させるばかりか、自己治癒力まで飛躍的に上がる。
この関係もあって、既にある程度までは自己回復していたのである。
そこから、ういういの傷も癒えて行き、戦闘可能な状態まで回復するのだが......。
「な、なんだありゃぁ......」
そこでういういは気付いた。
上空に現れた超巨大な蛇の存在に。
完全なる化物の存在に。
世界は広いと、良くみかんやシズが言っていたが......。
「本当、私なんか、まだまだミジンコの域を得ないって事だよなぁ......」
絶望的な存在が、そこにいた。
ハッキリ言って、地上にいる古代魔導人形なぞ、ただの木偶の坊に過ぎない。
まさに天と地。
奇しくも、上空(天)と地上での戦いになっていた現状で、ういういは若干の劣等感を抱いてしまう。
上の方では、ハイレベル過ぎる滅茶苦茶なバトルが超次元に展開されている。
しかし、そこに自分はいない。
いつも一緒に冒険をしている相棒のみかんは当然の様に空で、より高次元の敵と対等に戦っていると言うのに、だ。
「曲がりにも、剣聖を継ぐ者として頑張ってる私が、こんな所で燻ってる訳にも行かないよなぁ......」
薄く微笑んだ。
一見すると弱々しく微笑んでいる様に見えるが、実は違う。
心の中にあった強い向上心......強くなりたいと思う純粋な気持ちが、ういういの中で強い闘志として激しく燃え上がっていた。
古代魔導人形が、ういういに標準を合わせて、極太レーザーを放とうと構えを取ったのは、ここから間もなくだった。
素早く攻撃を展開するユニクスの虚を突く形で、何故か棒立ちしていたういういに気付いた古代魔導人形が、チャンスとばかりに極太レーザーを発射しようとしていた。
「させないっ!」
炎神の槍!
そこでフラウが炎の槍を飛ばして来たが、予測していたのか? 寸前の所で素早くかわして見せる。
そして。
ドヒュゥゥゥゥゥゥンッ!
ういうい目掛けて、極太レーザーが放たれる。
「ういういさん! 避けて!」
ユニクスが切実かつ悲痛の叫び声を出す中、
「こんなトコで......やられてたまるかぁぁぁっ!」
瞬時に気迫の籠った叫びを上げたういういは、片手半剣を徐に振るう。
海龍王・風神剣! 風神剛力斬!
ブォンッッッッ!
剣を降りきった瞬間、横一文字の強大な剣圧が出現する。
剣圧は放たれた直後に海龍の姿に変化し、怒濤の勢いで極太レーザーに突進すると、互いに激しく衝突する。
レーザーと海龍が激突した瞬間、周囲に大きな衝撃波が巻き起こった。
「うぁっ!」
ユニクスはなんとか衝撃波を足で踏ん張って耐えて見せた。
「うきゃぁぁっ!」
「わ~ん!」
フラウとルミの二人は、衝撃波に耐えきれずに吹き飛んでしまった。
「す......すごい......」
キイロも、なんとか堪えて見せ......そして、愕然とした顔を見せてしまう。
これが......人間の力だと言うの?
ほんの少し前までは、人間と言う存在は力のない無力な存在でしかないと思っていた。
それが、イリとの出会いによって、その観点や価値観を色々と変えて来たキイロだったが......ここでも、また大きく変わった。
イリだけではない。
地上組の人間ですら、自分を大きく凌駕する力の持ち主が当たり前の様に存在していたのだ。
純然たる人間が、そうしているのだ。
イリは魔族とのハーフだと聞いている。
だからこその強さだと思っていた。
そうではない事を、まざまざと見せ付けられた瞬間だった。
「もしかしたら、人間と言う生き物は......努力次第で無限の可能性を秘めているのかも知れない」
だからこそ、この世界で一番繁栄している種族なのかも知れない。
そんな事を、誰に言う訳でもなく胸中でのみ呟いていた。
果たして。
極太レーザーは、海龍に呆気なく打ち負かされた。
衝突後、一秒も立たずして海龍のエネルギーに淘汰され、消滅してしまう。
その後、極太レーザーに打ち勝った海龍は、瞬時に古代魔導人形へと突き進んで行き、古代魔導人形を貫いて見せる。
古代魔導人形の腹部に大きな風穴が空いた。
......と、同時に、風神の一撃が追加で加わる。
鎌鼬を彷彿する風の刃を受けた古代魔導人形は、最終的にアチコチを切り刻まれる形になり、
ドォォォォォォンッ!
大爆発、炎上した。
それでも、ボロボロながら原型を止めていた古代魔導人形。
完全に機能停止状態に陥りはしたが、その装甲の堅牢っぷりには驚ろきだ。




