賞金稼ぎと魔導大国の王子【4】
『ふふ......ふははははっ!』
笑い声が谺した。
「ああ、やっぱり終わらないか」
つまらない顔になってイリは言う。
「俺としては、もう家に帰って酒でも飲みたいんだが......?」
くしゃりと手を頭に当てて、軽く掻いて見せた。
そんな中、悪魔王子がゆっくりと立ち上がって、再び空中浮遊しながら三人の前にやって来た。
『凄いぞ貴様ら。予想以上だ!』
さも愉快だと言うばかりに気持ちの悪い笑顔を作りながら三人へと賛辞を送る。
『お前達の強さを称え、私も切り札を出してしんぜよう』
そんなの出さなくて良いから、さっさとくたばれ......とか、イリは思った。
当然、そうと言った所で本当にそうしてくれる筈もないから、黙っていた。
『出よ! ヨルムンガルド!』
「......は?」
悪魔王子の叫びに、三人が同時にポカンとなった。
何かしてくるとは思っていたし、それが召喚である可能性も視野には入れていた。
だが、そこを差し引いても......ヨルムンガルドの召喚は予測出来なかったのだ。
ズゴゴゴゴゴゴゴッッ!
物凄い地鳴りが辺りを包む!
同時に、ニイガの上空の遥か彼方......数千メートルは向こうの上空に超巨大魔法陣が出現する。
距離にして数キロは離れていると言うに、肉眼でハッキリ見える程の超巨大魔法陣から、やがて巨大な大蛇の頭がニュッ! と現れた。
「ま、まじかよ!」
「およ~」
「ふ、ふざけた物を呼びやがって!」
三人の精神に衝撃が走る。
あんな物が街に降臨した日には、一瞬でニイガの街がゴーストタウンになってしまう。
「まだ、ヨルムンガルドで良かったと言えばよかったのですが......どの道、ねぇ」
みかんは眉根を捩りながら、毒突きにも似た呟きを口にする。
「成体が出てたら、多分、この街はおろかこの大陸全てが滅亡すると思うぞ」
みかんの言葉にリダが、そうと補足する。
ヨルムンガルドと言うのは、全長数百メートルはある超巨大蛇なのだが、実はこの状態で幼体なのである。
つまり、子供の状態。
ヨルムンガルドが成長すると、ミズガルズオルムと呼ばれる史上最悪の超巨大蛇になり、その全長は名前の元にもなっている『ミズガルズ』と呼ばれる世界の全てを覆う。
神話の世界では、世界の終焉を迎える時に出現している。
だからと言うのも変な話だが、ヨルムンガルドを見た者はいても、その成体となるミズガルズオルムを見た者はいない。
ミズガルズオルムがこの世界に出現する時......それは、この世界の終焉を意味するからなのかも知れない。
何はともあれ。
「これは、二手に別れるしかないかもですねぇ」
「悪魔王子と戦うか、ヨルムンガルドと戦うかって事か」
みかんの提案に、イリは少し悩んだ。
そんな中、悪魔王子は余裕の笑みで腕組みしながら、こちらを見据えるだけにとどめた。
恐らく強者の余裕とでも言いたいのだろう。
間髪入れずに攻撃をしない所が、格調を重んじる王族らしい。
イリからすれば、単純にバカにされてる気持ちがして気分が悪いのだが。
「俺が、あの悪魔王子をぶっ潰す。一応、この案件は俺の仕事でもあるんだ。これは任せてくれないか?」
イリはいつになく真面目な顔をして、二人にお願いする態度を見せた。
実際、姫を守ると言う仕事を請け負っているのだから、言っている事に間違いはないし、筋も通っていた。
だが、実際はスカした態度が気に喰わないから自分でぶちのめしたいだけだった。
中々に良い根性をしている。
「OK。みかんはそれで良いです」
「仕方ないな......まぁ、確かにニイガでの一件は私らは部外者になる訳だし......オイシイ所はお前にくれてやるよ」
イリのお願いに、みかんとリダも同意する。
こうして、悪魔王子とヨルムンガルドVSイリ・みかん・リダと言う新しい構図の戦いが始まろうとしていたのだった。
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他方、こちらは地上戦。
悪魔王子によって復活した古代魔導人形を相手に、ユニクス・ういうい・キイロ・フラウ・ルミの五人がパーティーを組む形で応戦していた。
開幕、中衛にいたキイロがユニクスとういういに補助魔法を掛ける。
超攻撃力上昇魔法レベル67!
超防御力上昇魔法レベル88!
超身体能力上昇魔法レベル92!
熟練度はそれぞれ違うが、最高位である超上昇魔法であった補助魔法を受けたういういとユニクスの能力が上昇して行く。




