賞金稼ぎと魔導大国の王子【3】
同時に頼もしくもある。
「勝ちに行くですよ~? 準備はOKです?」
「当然!」
みかんの言葉に、リダは即座に頷くと、
龍の呼吸法【極】!
リダは己の能力を爆発的に上昇する技術を展開して行く。
どうやら、最初から本気モードで行く様子だった。
「行くぞっっっ!」
イリが咆哮する形で、みかんとリダに号令を掛けた。
二人は頷き、悪魔の王子に向かって突進して行く。
『どこまでも、私に逆らうと言うのだな!』
悪魔王子は迎撃態勢に入った。
直後、イリとリダの拳が左右からやって来た。
まさに怒濤のラッシュと言える二人の攻撃は、全て悪魔王子にガードされてしまった。
「......ほぅ」
全てを防がれてしまったイリは、やや感心するかのような顔を見せる。
「やるねぇ......」
一方のリダも、不敵な笑みを色濃く見せた。
刹那。
『はぁぁぁっっ!』
ドォォォォンッ!
悪魔王子は両手を掲げると、同時に悪魔王子を中心にして超爆発が起こった。
イリとリダは素早く後方に避け、更に爆風をガードし、ダメージを最小限に押さえてみせる。
直後、リダは魔導式を頭の中に紡ぎ始めた。
ほぼ同時に、少し後方に下がっていたみかんも、魔導式を紡ぎ始める。
二人の魔法が発動したのは、全くの同時だった。
超炎熱爆破魔法!
王子を中心に、左右から強烈な爆破魔法が繰り出された。
ドォォォォォォォンッ!
単体でもかなりのダメージになる超炎熱爆破魔法がクロスする形で、超爆発が起こった。
しかし。
『......こんな真似も出来るとはな。雑魚と言った事は撤回してやろう』
爆発の瞬間、悪魔王子は瞬間移動で後方に移動する事で、完全に超炎熱爆破魔法の一撃を避けてみせた。
「お、およ~」
「どんな威力がある攻撃も、当たらなければ意味がないってか」
みかんとリダは、ちょっとだけ苦く笑った。
刹那、悪魔王子がリダの真後ろに瞬間移動して来た。
「......っ!」
文字通り、瞬間移動だった。
この為、ほんの少しだけリダの反応が遅れてしまう。
ドカァァァッ!
「ふぐぅぁっ!」
背中から、悪魔王子に蹴り飛ばされた。
この一撃でリダが思いきり弾け飛ぶ。
更に追い討ちを掛けるべく、悪魔王子が瞬間移動で吹き飛んだリダの正面へとやって来た時、
「見え見えなんだよっ!」
バキィィッッ!
横からやって来たイリのストレートを顔面に食らった。
『ぐはっ!』
ストレートを受けた悪魔王子は横に吹き飛ぶ。
直後。
氷魔の吹雪!
みかんの魔法が悪魔王子を襲った。
突発的に周囲が凍てつき、極点下の吹雪が悪魔王子の自由を奪う。
『はぁっ!』
しかし、凍り付いた肉体を、即座に解放して見せた。
一瞬だけ、自由を失った悪魔王子。
時間にして数秒程度の束縛を受けた。
それは実に些末な時間と述べて差し支えないレベルではある。
だが、現在の高次元な戦いにおいて、数秒の束縛は致命的でもあった。
「オラオラオラァッ!」
束縛を解いた瞬間、蹴り飛ばされたリダが直ぐ様、悪魔王子の元に戻って来て、尋常ではない勢いの正拳ラッシュを放って見せた。
数秒の束縛が幸を相し、瞬間移動で逃げる事もガードする事も出来ないまま、リダの拳の全てがクリーンヒットする。
「ぅオラァァァァッ!」
最後に渾身の一撃を込めて顔面を痛打した。
ドバキャァッッ!
『うぐぁっ!』
悪魔王子はそのまま落下し、シズの展開する透明な防御壁......剣聖の護りにぶつかり、そのまま倒れた。
「意外と呆気なかったな」
倒れた悪魔王子を見て、リダは少しばかり肩透かしを喰う顔になる。
他方のみかんは、未だに緊張感のある顔を維持していた。
そこで、イリが言う。
「いや、まだ終わっちゃいねぇなぁ......」
「ああ、やっぱりか」
イリの言葉を耳にしてリダがニヤリと笑った。
「こんなに楽しい戦闘は久しぶりだ......なんてか、最近は会長の仕事でデスクワークばっかだったし、そこから学園で学生してたし......はは。やっぱり、実践ってのはこうじゃないとなぁ」
リダは好戦的な笑みを見せたまま、わくわくするかの様な仕草を見せていた。
イリは、ちょっと笑った。
「変わんねぇなぁ、その性格。昔から喧嘩っ早いって言うか、喧嘩その物が大好きって言うか」
「失礼な事言うな! 私はこう見えて、凄い平和主義者なんだぞ? ただ、自分を強くしてくれる......わくわくさせてくれる相手が欲しいだけさ」
リダは爽やかに笑って答えた。




