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こうして私は無双する・イリVer  作者: まるたん
第一編・最終章
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賞金稼ぎと魔導大国の王子【1】

 



  ■▼○▼■



 全てが収束に向かっていると、誰もが思っていた時......その上空に風雲急を告げる最後の黒幕が出現した。

 文字通り、パッと脈絡もなく出現した人物に、イリは苦虫を噛んだかの様な顔で上空を見上げていた。


「兄様......?」

 

 ルミがポツリと言う。


「ああ、やっぱりか」


 一応の見当は付いていたが、この言葉を耳にしてイリは確信した。


「ほぅ......ルミの兄か。どおりでイケメンな訳だ」


 他方、リダは瞳をキュピーン☆ と光らせてから言う。

 現状と言うものを、もう少し弁える態度を見せて欲しかった。


「リダ、お前な......」


 イリは呆れた顔になって言う。


「いや、分かってるんだぞ? あれが黒幕だろ? でもさぁ? なんかさぁ? 格好良いとさぁ!」


「分かった、お前は暫く口を動かすな」


「とうとう喋れなくなった!」


 リダはガーン! って顔になった。


『やってくれたな、愚民共。この私をここまで怒らせるとは』


「やめて下さい、ルイ兄様!」


 上空から声を吐き出す王子......ルイに、ルミは悲痛の叫び声を上げた。


「私が悪いのなら、どんな罰も甘んじて受けましょう! ですから、この様な戯れ事はもうやめにして下さい!」


 懇願する形で哀願の意を唱えるルミがいた。

 前々からではあったが、ルミは考えていたのだ。

 そもそもの根元を辿れば、そこに自分がいると。


『良い心掛けだ......が、もう遅い』 


 呟きながら、ルイは右手を上げた。

 同時に、地上で止まったままになっていた古代魔導人形が再び息を吹き返す。


 大破同然の状況だった物も、一瞬にして全てが修復されていた。


「大した手品を持ってる見たいだな」


 イリは眉間に皺を寄せてぼやいた。

 次から次へと、どうしてこんなにも面倒な事ばかりポンポン来るんだと、叫んでやりたい気分で一杯だった。


 その時だ。


「呼ばれてないけど!」


「参上するのが、みかんチーム!」


「フラウさんとユニクスさんのゲスト付きで、とってもお得だ! う~っ!」


 空から変なのがやって来た。

 ちなみに、みかん・ういうい・シズの順で声高に叫んでいた。


「おいおい......もう良いっての」


 イリは重い吐息をセットにして口から吐き出していた。

 空からやって来たのは、イリにとってリダと同等の危険人物。


 何年か前に、リダと一緒にパーティーを結成した時に、そのオマケ的な感覚で一緒にクエストをした事がある、大魔人の様な存在。


「知り合い?」


 未だ、イリにべったりくっ付いて離れなかったキイロが、そこで軽く聞いて来た。


「そうだな......知り合いではある」


 イリはぶっきらぼうに言う。

 但し、あんまり一緒にいたくない知人だ。

 そうと、胸中で付け足していた。


「ったく......リダだけでも、ふざけた展開になり兼ねないってのに」


 この上、みかんまで来てしまった。

 確実にふざけた展開になる事は、誰彼に言われなくても想像が付く。


 ......とは言え。


「まぁ、味方なら、頼もしいヤツでもある」


 イリはキイロへと、最後にそうと綴った。


「そうなんだ......凄いね。もう、色々な人が大集結だね」


 キイロは嬉しそうに答えた。

 王子が禍々しいオーラを出して出現し、古代魔導人形が完全復活を遂げている状況下だと言うのに、それでもついついキイロは嬉しくて笑顔を作ってしまった。


 何と言うか、だ?


「苦しい時は、皆で助け合う。これが人間だよね」


 キイロの半分はドラゴンだけど、半分は人間。

 強く誇り高きドラゴンと、知恵と勇気を互いに出し会う人間。


 そのどちらの血を持っている事に、キイロは誇りにすら感じていた。


「うんうん。勝てる! 何が相手でも皆が力を合わせれば、絶対に勝てる!」


 この言葉が言える自分のなんて幸せな事だろう。

 キイロは、その幸を全身で噛み締めていた。


『ほう......うぬらも来たか。面白い』


 みかん達の存在を確認したルイは、うっすらと笑みを浮かべた。


『これで手間が省けた。うぬら纏めて全員、私に処刑されるがいい!』


 叫び、


 ゴゴゴゴゴゴゴッ!


 周囲の地が跳ねた。


 物凄い地鳴りと共に、ルイの姿が大きく変貌して行く。


 それはもう、変身と表現するべきだろうか?


 これまであった王子としての姿は、もう原型を留めていない。


 そこにいたのは、身体を倍以上にし、いかつい岩の様なゴツゴツした顔に変えたルイがいた。

 肌も、透き通った白い肌から、赤褐色の物へと変化を遂げて行く。

 背中からは、悪魔を連想させる様な巨大な翼が生えていた。


 いや、悪魔を連想させるもない。

 悪魔その物と言えた。

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