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賞金稼ぎとお姫様【4】

 これが逆であるのなら、まだ分かる。

 王位継承権争いで、上位の王族を下位の王族がなんらかの事故に見せ掛けて殺害し、時期王位継承者として繰り上げ当選する。


 これなら、とてもわかりやすい構図だった。


 だが、現状狙っているのは、継承権一位の王子。

 そして、狙われているのは二位の姫だ。


 このまま順当に行けば、王子は特に姫へと危害を加える必要もなく自然と時期王になるのは明白だ。


 むしろ下手に姫へとちょっかいを出した事が公の場に出れば、立場が悪くなるのは王子の方だ。

 (まか)り間違えば、王位継承者が消滅する危険性だってある。


 そこまでのデメリットを加味しても尚、姫を狙う意図は何処にあると言うのか?


「確かに謎だな……」


「だろう?……しかし、調べは付いてる。現状で姫を殺すないし、王家の人間ではなくそうと画策している黒幕は王子だ」


 だが、しかし。


「その王子には、姫を狙う動機がない」


 結果、暗礁に乗り上げているのだ。

 証拠不十分と言う事もあり、この一件は保留と言う形で話しが打ち切られている。


 結果、どうなったか?


「……姫が危ないんだよ」


 クロノスは神妙な顔付きで二人に言う。

 そこから再び口を開いた。


「お前らには言っていなかったが……若い頃、ニイガ国王にはデカイ借りを作っちまってな……今回はその穴埋めでもある」


 それならアンタがやれよと、イリは口から出そうになったが、やめにした。

 立場上、クロノスが長時間この組合を離れる訳には行かないからだ。

 

 そこで、クロノスが一番信頼している二人をここに召喚したと言う事になる。


「OK……内容は理解した。つまり、本当なら自分でやりたいトコだが、それは流石に無理だ……なら、その仕事をちゃんとこなせるヤツに頼むしかない」


「そう言う事だ。もっと言えば、今回の護衛は姫様だ。ただ腕が立つだけじゃ不味い」


「……と、言うと?」


「なぁに、簡単な事さ? 嫁入り前の娘の護衛に男を付けたがらない親バカな王様が、俺に土下座までして頼んだのさ『めっぽう強い女の護衛を雇って欲しい』と、な」


「……そう来たか」


 イリは苦い顔になった。

 オリオンも苦笑いだ。


 この時点でクロノスの意図する意味が大体分かった。

 イリとオリオンは今でこそ男の姿をしているが、人間と魔族の混合種でもある二人は、その気になればいつでも異性になれる。


 王様のニーズに合わせた性別での護衛など朝飯前だ。

 こんな事が可能なのは、ニイガ国内で考えるとイリとオリオンの二人だけとなる。

  

「お前らに白羽の矢が立った決定打はそこだな」


「やれやれ……面倒な理由だな」


 もし、それが決定打であるのなら、まかり間違って男の状態で姫様と仲良くしている所なんぞを王に見つかった日には、それだけで投獄されてしまいそうな勢いだ。


「取り合えず、王様が見える範囲の時は女になる事にしておくよ」


 やや呆れた口調で、イリはクロノスに答えて見せた。

 オリオンも似た様な顔をしていたが、一応の相づちを打って見せる。


「よし、それじゃあ早速、今から仕事になる」


「……は?」


「……い、今から?」


 しれっと当然の様に言うクロノスに、二人は唖然となる。

 流石に引き受けてすぐに仕事が始まるケースは稀有と言える。


 通常なら、仕事の内容を聞いた後、翌日辺りに簡単な打ち合わせをして、実際に仕事をするのは更にその後日と言う事が通例だった。


「本当は俺もそう言いたいんだがな? 証拠不十分で疑いの目から逃れる事が出来た王子が、早速好き勝手に動いてくれてるらしいんだ」


 言ったクロノスは、重い吐息を口から吐き出した。


「多分、しばらくは疑われてもシラを切れると踏んでるんだろうな……ったく、王族ってのは本当に良い御身分だと思うぜ」


「……で? その良い御身分の王子様は、何を仕出かしたんだ?」


「それが、今回の仕事の内容だ。本当なら今日の昼間にもニイガ王室に入る予定だった姫様の消息が、国境を越えた辺りでいきなり消えた……つくづく好きにやってるよな?」


「早くも拐われてるのかよ……」


 どんだけ危機管理の薄い姫君なんだろう?

 そして……王子は、どうして姫にそこまでの恨みを持ってるのだろうか?


 何にせよ、早くも姫様のピンチだった。

 ここで死なれた日には十億の仕事は早くも頓挫して、水泡のあわになる事は火を見るよりも明らかだ。


「そんな訳だ。いきなり仕事になる」


「……まぁ、いいけどさ」


「そうだな、暇だったし」


 暇なのはお前だけだオリオン……と言ってやりたかったが、この件についてはもう何回も同じ事を繰り返しているので、敢えて口にする事をやめにした。

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