賞金稼ぎと古代魔導人形【17】
「お前は何者だ?」
そうと言ってたのは、上流貴族か王族っぽい人。
どっちなのかは知らないや。
とりま、本人に聞いた方が早いかもですねぇ。
「みかんと言うです。最近は駆け出しの冒険者してます。それで......貴方はどちらさまで?」
「畏れ多いですよ、みかんさん。この方は、この魔導大国を統べる王となられる方なのですからねぇ......ククク」
みかんの問いかけに答えたのは、隣にいた伝承の道化師だった。
相変わらず冗談めいた口調で言ってるけど、嘘を吐いている風には見えなかった。
......ぐむぅ。
良く分からない、謎現象が起こってるです。
どうして、ニイガの時期国王になる様な高貴なお人が、あの道化師なんかと一緒にいると言うのでしょう?
「分からないですねぇ......時期国王様。なんで貴方様は、そんな全人類にとって害悪でしかない様な存在と一緒にいられるのですか?」
みかんは神妙な声音で時期国王に尋ねて見た。
すると、彼は下卑た笑みを色濃く作ってから、みかん達に答えたです。
「ほう、そなたらは、この道化を知っておるのか......なら、話は早いだろう? 力を貸して貰っているのだ」
......うぁ。
それ、完全にダメなパターンじゃないですか。
どうして、こんなヤツと協力する様な選択を選んだのかは分からないのですが......それは、絶対的な破滅のフラグを立ててるだけだと思うのですよ!
「時期王に、何を吹き込んだのです?」
「別に大した事はしてませんよ......ククク。強いて言えば、この方の未来を私が見せて上げた結果、彼が快く私に協力してくれると約束をしてくれた。それだけの話でしょうかねぇ?」
......ぐむぅ。
騙していないけど、利用してるパターンって所でしょうかねぇ?
根本的に何でも出来てしまうコイツの事だから、ある程度の可能性の高い未来予測をこの時期王様に見せて、絶望させた。
多分その未来は、決して嘘ではなく、可能性としてそれなりの確率で現実になる未来を時期王に見せたんだと思うのです。
この位の芸当なら、コイツにとって朝飯前ですからね。
問題は、次です。
その絶望的な未来を見せられた事で、恐らく希望のある未来に変更して上げよう......とか、そんな感じの言葉を言われたんじゃないかと思うのです。
でも、それ......嘘ですから!
「時期王様。そいつの見せる未来は、確かに可能性として現実になる未来ではあるのですが、だからと言ってソイツと組む選択肢はやっては行けない事です。それをやると言う事は、未来予知されて見た貴方様の未来どころか、それ以上に悲惨な未来が待っているのです!」
みかんは、時期王へと声高に叫んで見せた。
「......何を世迷い事を抜かす? その証拠はあるのか? 何の確証も無しに、言葉だけで信じろと言うのなら、それは些か無理があるのではないか?」
時期王様はハナで笑う。
ぐぅ......確かに正論です。
特に証拠と言うか、物的な証明する物とか全然持ち合わせていなかったみかんさん。
どうしたら信用してくれるんでしょうねぇ。
みかんは少し頭を捻らせて悩む仕草を取った。
「もう、面倒だから、あの道化師を倒しちまおうぜ?」
近くにいたういういさんが、そうと提案して来た。
「う! 今回はういういに賛成する。諸悪の根元を叩いてしまえば、そこのバカ王子も目を覚ます」
間もなく、シズさんもういういさんの言葉を肯定する。
見ると、フラウさんやユニクスさんもすっかりその気らしく、いつでも戦闘可能だぞと、アイコンタクトでみかんに答えていた。
ほむ~。
確かに一理あるかもです。
色々な問題の元となる、伝承の道化師をここで倒して置けば、今後も色々と安泰でしょうしねぇ。
ヤツが時代の表舞台にやって来ると、決まってロクでもない出来事が世界規模で起きる。
もう、ここは確定事項と言っても過言ではないのです。
それなら、今ここで倒してしまった方が、全人類の明るい明日に繋がる!
戦力だって十分!
みかんとシズさんを主軸に、前衛をういういさんとユニクスさん、後衛をフラウさんに任せる形で各々の陣形を作れば、決して勝算がない戦いでもないと、みかんは考えた。
「よし、やっつけちゃいますか!」
皆がやる気をみなぎらせ、同調する形でみかんがそうと答えた時、
「......ふむ。そろそろ、ここで余興を楽しむのも潮時でしょうかねぇ」
吐き気を催してしまう程の醜悪な笑みを作り、伝承の道化師は言った。




