賞金稼ぎと古代魔導人形【13】
程なくして、リダは旧友と表現して良いだろう人物の声を耳にした。
「相変わらず派手な事をするモンだな、お前は」
「まぁ、否定はしないけど......てか、なんでイリがルミと一緒にいるんだ?......ん? って言うと、さっき魔導人形に体当たりかまそうとしてたのはオリオンか? いやぁ......そかそか。懐かしいな!」
リダはうんうん頷く。
そこからササッ! と、イリに近づいてからイリに耳打ちした。
「そのさ?......ルミに私の事を話してたりする?」
「お前の事? いや? 別になんも言ってないけど?」
「そ、そうか。それなら良いんだ!」
リダは少しだけ安堵の息を、口から漏らした。
「? 変なヤツだな?」
元から変わったヤツだとは思っていたが、今日は輪を掛けて変なヤツだと思うイリがいた。
しかし、リダにはリダなりの事情があるのだろう。
なんと言っても、世界冒険者協会の最頂点でもある会長をしているのだから。
「まぁ、俺としては少し焦ってコッチに来てたんだ」
イリは苦笑混じりに言う。
「焦る? お前が? 一体、どんな事件だよそれは?」
イリの言葉にリダが驚く。
先程、ちょっとだけ述べたが、リダはイリと旧知の仲。
特にそこまで長い付き合いがある訳ではないのだが、それでもリダはイリに一目置いている。
簡素に言うのなら、それはイリの実力をリダは知っていると言う意味に繋がった。
「まぁな......」
「お前程のヤツが焦るとか、どんな相手だよ? メチャクチャなヤツじゃないか?」
軽く頷いたイリに、リダは愕然となって返事して見せた。
そして、納得した。
「そうか......それで私を呼んだのか」
真剣な顔になってリダは言う。
「呼ばれた?」
イリの眉間に皺が寄った。
内心では思う。
誰だ? こんな大魔人を召喚したバカは!
「まぁ、その話は後で聞く。ともかく、だ?」
もう、なんとなく喋るのも面倒臭くなって来たイリは、そこでスッ......と、リダを指差した。
「俺が焦った理由......それは、お前が魔導人形を消滅させちまうんじゃないかって事だ!」
「私にビビってたのか!」
リダはガーン! って顔になった。
「てか、私は善良な美少女だぞ? か弱い女の子だぞ? こんな私にビビるなんて......イリもどうかしてるな」
「リダ、それは無理がありすぎて、私がビビったよ......」
眉根をよじって言うリダがいた所で、ルミのぼやきがリダの耳に転がって来た。
「ルミにまで言われた!」
リダは再びガーン! ってなる。
もう、喜劇がしたくてこの物語に乱入して来たんじゃないかって勢いだ。
「私は、ルミから『助けてリダ! 今、色々大変で危険が一杯! 胸一杯なのっ!』とか、なんとか書いてある手紙を貰って、急いでクシマから飛んで来たってのにさ」
「そんな手紙で飛んで来れるお前に二度驚いたぞ......」
つまらない顔して言うリダに、イリは苦い顔になって言う。
そんなおかしな手紙を貰ったら、イリなら破いて終わりだと考えてしまう。
だが、
「だって、ルミ姫の手紙だし。馬鹿な文章しか書けないのは知ってたし」
「なるほど」
次に答えたリダの言葉にイリは納得した。
「ひどっ!」
即座にルミが叫んで見せた。
......かくして。
途中まではシリアスな展開をしていたのだが、リダの乱入によって単なる茶番劇の様な状況へと変貌する事で、古代魔導人形の一件は幕を閉じて行くのであった。
......補足。
「どうでも良いけど、そろそろ誰か助けてくれよ......みんないるならさぁ......」
密かに、リダが最初に放った超炎熱爆破魔法に吹き飛ばされた事で瓦礫に埋まり、動けなくなっていたオリオンがぼやいていたのだが......余談である。
■イリ■
全く、何がどうなってるんだか。
自宅で超炎熱爆破の爆音を聞いた俺は、即座にリダの元に向かう。
ここに来る前にキイロが連れて来たアカと言うドラゴン・ハーフによって呪いを解放して貰う予定だったが......今は、それ所ではない。
あのアホがどうしてココに来たのかは知らない!
まぁ、なんとなくルミの同級生っぽい話を、それとなく聞いてはいたからその繋がりなのかも知れないが......そこを差し引いても、まさか本人を本当に呼んでしまうとは思わなかった。
リダは......アイツはヤバい!
別に敵になるとか、そう言う事はないが......危険レベルで言えば最大級だ!
下手な災害より酷い!
街に出現した魔導人形の強さがどの程度なのかは知らないが、相手がリダってなれば三秒で木っ端微塵にされるだろう。
そう言うヤツなんだよ、アイツはっ!
今一つ、事情は分からなかったんだが、あの魔導人形を動かしているのがキイロの元主でもあるナガオ領主のお坊っちゃんらしい。
ハッキリ言って、そんなお坊っちゃんを救う義理もなければ、キイロを苦しめた張本人でもある事を考えれば、むしろ恨みしかない様なヤツだった為、このままリダに魔導人形ごと消滅させられても仕方ない野郎だと思っていたんだが......。
どうも、そう言う訳にも行かなくなっちまった。




